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桃の節句コーデで静嘉堂文庫美術館の役者絵を鑑賞 その2

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前回に続き、静嘉堂文庫美術館で現在開催されている歌舞伎浮世絵展を取り上げます。

この美術館ではすべての作品がスマホ撮影可能でしたので、印象に残った展示作品をご紹介したいと思います。

1.第一章「歌舞伎絵の流れ」から

①江戸時代前期の屏風

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△「歌舞伎図屏風(かぶきずびょうぶ)」(江戸時代前期 17世紀)

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△拡大

少女3人が踊る様子を観客が楽しげに見ています。まるでアイドルのステージのようです。

展示解説によると、河原に建てられた舞台で、出雲阿国が出現する前の「ややこ踊」とのことです。

②山東京伝の浮世絵

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△「三世瀬川菊之丞(せがわきくのじょう)」北尾政演(きたおまさのぶ) 安永(1772-81)後期

北尾政演(1761-1816)は蔦屋重三郎と交流し、山東京伝(さんとうきょうでん)の名で戯作者として活躍した人です。

瀬川菊之丞が太刀を持って見得を切る姿が可愛らしく、アニメの主人公のようです。

③語りが近くて理想的?

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△「戻駕色相肩(もどりかご いろにあいかた)」鳥居清長(とりいきよなが)天明8年(1788)

 

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常磐津(ときわず)の太夫が役者と同じようにくっきりと似顔で描かれていることに感動しました。

三味線や語りの声が今にも聞こえてきそうで臨場感が増しています。

鳥居清長(1752-1815)は美人画の名手で、このような「出語り図(でがたりず)」という浄瑠璃太夫も登場させる新しい描写方法を試みた絵師です。(参考:展示解説)

「実際に舞台の中央でこんな演奏が行われたら、役者と太夫を同時に視界におさめることができて楽しいだろうなあ……」と常磐津好きの私は思いました。

 

2.豊原国周(とよはらくにちか)による五世尾上菊五郎

①髪結新三(かみゆいしんざ)

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△「髪結新三(五世尾上菊五郎)」豊原国周 明治6年(1873)

「髪結新三」はこの年、明治6年に初演され、菊五郎の当り役になりました。(参考:展示解説)

きりりと美しい五代目菊五郎は当時29歳。威勢のよい、きびきびとした動きが伝わる作品です。

②鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)

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△「鏡山旧錦絵」豊原国周 明治4年(1871)

色の鮮やかさ、役者の表情と躍動感に見入ってしまいました。

③仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

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△「仮名手本忠臣蔵 裏門<おかる勘平>」豊原国周 文久3年(1863)

おかる役の五世尾上菊五郎は19歳、十三世市村羽左衛門だったときのもの。顔の輪郭も柔らかく、若さを感じます。

④菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

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△「菅原伝授手習鑑 天拝山(てんぱいざん)の場」豊原国周 明治24年(1891)

もの凄まじい気配と菊五郎の凛々しさが際立つ作品でした。

 

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衣裳部分はエンボス(空摺り)により本物の布地のように立体的でした。

 

3.菊五郎贔屓だった岩﨑彌之助と夫人の早苗

三菱二代社長・岩﨑彌之助と夫人の早苗が五世尾上菊五郎を贔屓(ひいき)にしていたため、展示の役者絵の多くに菊五郎が登場していました。

①五世尾上菊五郎

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△五世尾上菊五郎(1844~1903)(展示写真より)

父は十二代目市村羽左衛門。母は三代目尾上菊五郎の次女。世話物を得意とし、九代目市川團十郎、初代市川左團次とともに、いわゆる「團菊左時代」を築いた。

Wikipediaより)

実際の菊五郎の顔写真と役者絵がよく似ているので、作品がよりリアルに感じられて面白かったです。

②岩﨑彌之助

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△岩﨑彌之助(1851~1908)(展示写真より)

三菱財閥2代目総帥。創業者・岩﨑彌太郎の弟。

③岩崎早苗

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△岩崎早苗(1857~1929)(展示写真より)

後藤象二郎(1838~1897)の長女で早年期は洋学を修め、明治7年(1874)彌之助夫人になりました。和歌、長唄、観劇など趣味が広かったといいます。(参考:展示解説)

④別荘での菊五郎

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△大磯禱龍館之図(おおいそ とうりゅうかんのず)

大磯には日本初の海水浴場がありました。

菊五郎は岩﨑彌之助から与えられた大磯の地所に別荘を建てて静養していたそうです。(参考:展示解説)

菊五郎の水着姿はファンにとっては新鮮で、特別な役者絵だったと思います。

 

4.その他気付いたこと

①歌舞伎絵に見る帯締め

豊原国周の役者絵を見て気になったのは、女形衣裳の帯締めです。

どれも帯の前で短い紐を片結び(片蝶結び)?しているように見えます。

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これは現代の帯締めのルーツらしく、歌舞伎役者が流行らせたものだそうです。

帯締めは、江戸時代の文化年間にはじまる。当時人気であった歌舞伎役者が衣裳の着崩れを防止するために、帯の上に締めたヒモがルーツである。それを真似て装った女性らに流行し、その便利さから庶民にも定着した。地方では「帯とめ紐」と呼ばれたこともあった。

引用:Wikipedia

これが本当ならば、江戸時代の役者たちは帯の結び方、着物の取り合わせや色柄、帯締めに至るまで、現代につながる日本のきもの文化を作り上げてくれたということですね。

②歌舞伎の浮世絵 所蔵品の多さ

今日ご紹介した作品はほんの一部です。

会場では江戸や明治の作品とは思えない、刷り上がったばかりのような鮮やかな役者絵をたくさん見ることができました。

そして驚くべきは今回の展示品がすべて静嘉堂文庫の所蔵品だということです。

今週、2025年2月26日からは後期(3月23日まで)展示となり浮世絵版画は総入れ替えになるそうです。

私も再訪して違う作品を見てみたいと思っています。

公式サイト:https://www.seikado.or.jp/

 

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2回にわたり静嘉堂文庫美術館の「歌舞伎を描く」をご紹介しました。

歌舞伎好きばかりでなく、馴染みのない方でも楽しめると思いますので、皆さんも足を運んでみてはいかがでしょうか?

静嘉堂文庫美術館へのおすすめのアクセス方法はこちらで紹介しています。

 

 

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