前回の「日本和装編」に続き、着付け教室体験レポートです。
今日は「きものレディ着付け学院」です。参加してみての感想、良かった点/気になった点、強引な営業を受けなかったか、などをご紹介します。
また、最後に「少ない回数のレッスンで本当に皆が着られるようになるのか」など、連載冒頭に提示した疑問にも回答したいと思います。
※これまでの記事は以下をご覧下さい。
1.きものレディ着付け学院
①娘からの誘いで
昨年娘から「着付け教室に行ってみたいのだけれど一緒に参加しない?」と誘いがありました。
娘は浴衣を着て文庫の帯結びをするのはかろうじてできますが、きものを一人で着たことはありません。
いずれ私に習うつもりだったそうですがなかなか機会がなく、「思い切って教室に行けばなんとかなるかも」と思ったそうです。
私は日本和装の「無料着付け教室」以外の教室も見てみたいと思い、参加することにしました。
娘が申し込んだのは「きものレディ着付け学院」でした。
②きものレディ着付け学院の特徴
「きものレディ着付け学院」には、8回の無料お試しレッスンがあります。
ウェブサイトによると、
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- レッスン期間中、販売会などにお連れすることはありません。創業45年、教室業一筋。
きものレディ着付学院は呉服屋ではございません。 - 8回の充実レッスンで一人で着物が着られるようになります。帯の結び方もマスターできます。
- 着物を持っていなくても大丈夫!
レッスンで必要な[着物・袋帯・名古屋帯・半巾帯・帯揚げ・帯締め]の一式レンタル可能です。
勿論ご自分の好きなお着物やお母様のお着物をお持ちいただいても結構です。
- レッスン期間中、販売会などにお連れすることはありません。創業45年、教室業一筋。
とありました。
販売会がないことと着物一式無料レンタルが魅力的だと思いました。
料金はテキスト代(1,700円)と教室管理費(1,100円)の合計2,800円です。
△きものレディ着付け学院のテキスト
③8回の無料体験に必要なもの
第一回目レッスンに必要なもの
足袋・肌襦袢・裾よけ・紐2本・伊達締め・長襦袢・タオル(補整用)・筆記用具
ウェブサイトの案内ではこれだけが記されていましたが、2回目以降には必要なものが増えました。
2回目以降必要なもの
上記の持ち物に加えて
ウエストベルトと紐1本(なければ紐2本)・伊達締め・前板ゴム付き・タオル1本・仮紐(腰紐より短い160cm)・衿芯・クリップ5個
クリップは長さ5cmのミニサイズのもの。しかも必ず5個必要とのことで少し驚きましたが、教室で購入しました。
2.レッスンの内容
①レッスンは教室で
レッスンは学院の教室で行われました。日本和装のような貸し会議室ではなく、畳敷きの教室です。
講師2人に生徒は4人でした。
レンタル着物は着物バッグに一式が入っていて、人数分が用意されていました。ポリエステルの大きめの着物でしたが、セットごとに色柄が違うので毎回選んで楽しめました。
レッスンは毎週日曜の午前だったため、全8回すべて参加出来た人はいませんでしたが、欠席分のレッスンは補ってもらえました。
そのかわり、はじめに予定されていた「6回目・プロの着付け体験」は皆の希望で復習レッスンになりました。
②補正・長襦袢・着物の着方
着る前のきものや長襦袢、小物の置き方をきっちり教えていました。
補正
まず肌襦袢と裾よけの付け方を丁寧に教えてくれました。
その上からのウエスト補正はタオルと紐でやりました。
長襦袢
長襦袢を着るときの紐の当て方、手の動き、紐の始末などをメインの講師が教え、わかりにくい点はサブの講師が着物を脱いで生徒と一緒に着ながら教えてくれました。
着物
腰ベルト以外は腰紐と伊達締めを使用したオーソドックスな着方でした。
着物の着方で初心者には難しいと思ったのは、鏡を使わないことです。半衿の出し具合は手で触って確かめながら着ました。
おはしょりを一重にするやり方は、みな少し戸惑っている様子でしたが、回を重ねるごとに慣れてきたようです。
③半幅帯・名古屋帯・袋帯
3回目からは帯です。
半幅帯→名古屋帯→袋帯の順にレッスンしました。
半幅帯の文庫(蝶結び)
皆上手く結べていました。
今まで適当に結んでいた私ですが、手先の長さのとり方やクリップの使い方など参考になりました。
手結びで名古屋帯のお太鼓
昔ながらの手結びのレッスンでした。
「長い帯を後ろで引き抜いて結ぶのは大変でしょう?」と先生が強調されていたのが印象的でした。次回の着付け小道具、「教材枕」に誘導するためなのだと思いました。
△先生に手伝ってもらいながら、なんとか出来たようです。
(後ろが先生)
教材枕を使って名古屋帯のお太鼓
きものレディ着付け学院は、「教材枕(窓枠付き枕)」という着付け道具を使います。これによって後ろで結ぶわずらわしさがなくなるそうです。
この枕の購入は強制ではありませんが、これを使用したレッスンが後半には行われました。
他の生徒さんは購入し、教材枕を使った名古屋帯を習っていましたが、私と娘は買わずに手結びで復習をしました。
絶対使わない枕だと思い購入しませんでしたが、少し気まずい雰囲気を味わいました。
△教材枕(2,500円)(「きものレディ着付け学院テキスト」より)
この教材枕に帯・帯揚げをセットして、背中に背負ってから帯を胴に巻くという着用方法です。
教材枕を使って袋帯の二重太鼓
最終日には教材枕を使って二重太鼓のレッスンでした。
教材枕は教室のものを貸してもらいました。
この日の二重太鼓は胴部分は一巻きしかせず、余った帯はすべてお太鼓の中に入れてしまう、という方法でした。
短い袋帯でも教材枕を使えば上手く結べる、という説明でした。
また、「前日夜に帯を教材枕にセットしておけば袋帯での早朝外出も楽ですよ~」と先生は強調していました。
3.きものレディ着付け学院の感想
①良かった点
- 紐・伊達締め・タオルを使うシンプルな着付けで、丁寧な教え方だった。
- 半幅帯、名古屋帯、袋帯と順序を追って教えていた。
- 手結びの名古屋帯は昔ながらの着方なので、初心者がお太鼓の構造を理解するには良いと思った。
- 着物のたたみ方も教えていた。
- サブの先生が一緒に長襦袢から着るところを見せてくれたので、わかりやすかった。
- 8回を休まずに通えば、着物だけなら着られるようになると感じた。
②気になった点
- 体験教室なのに「教材枕」を買う流れになりそうなのが気になった。(初回オリエンテーションでは購入しなくて良いとの説明があったのに……。)
- 鏡を見ないで着ることが学院の指導方針らしいが、初心者には大変だと思った。
- 教材枕は、便利なのはわかるが、慣れるまでが大変そうに感じた。
- 8回のレッスンだけで教材枕を使いこなすのは無理なので、そこから全15回の専攻科(37,000円)に誘導していくのだと思った。
③娘の感想
- 無料のレッスンなのに、二人の先生が丁寧に教えてくれて良かったと思う。
- 年配の先生や若い先生の着物姿を近くで見ることができ、参考になった。
- 8回のレッスン(実際は5回しか行けなかった)で大体はわかったが、着られるようにはならなかった。
- この体験をしたことで着付けの動画を見ても理解できるようになり、家で練習する気になった。
- 一人で着られるようになるには、自分でかなり復習しなければならないことが分かった。
- お試しレッスンに参加したことが、やる気と自信につながった。
4.「無料着付け教室への疑問」――その答えは?
最後に「その1」で挙げた疑問点に対して、私なりの答えを記します。
①少ない回数のレッスンで本当に皆が着られるようになるのか
かなり復習すれば別だが、普通に通うだけでは難しいと思う。
②きものを売りつけられるのではないか
日本和装は無料で着付けを教えるかわりに着物を買ってもらうという販売の仲介業なので、購入をすすめられる。(買うかどうかは個人の判断で、断れば問題はない)
③着付けの道具を買わされるのではないか
着物の販売がないところも、着付け小物や道具を買わなければならない場合が多いように思う。
ほとんどは着付けの役に立ち、後々使えるものだが、中には使わなくなるものもありそう。
④無料レッスンの秘密はどこに?
「日本和装」は無料レッスンを行うことで着物を販売する機会を作る。
「きものレディ着付け学院」は学院の生徒を勧誘するためのPR活動。レッスンは無料だが、テキスト代や教室管理費はかかる。
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以上、3回にわたり2つの着付け教室の体験レポートをお送りしました。
着付け教室は大手、個人、呉服屋の主催等々日本全国にたくさんあり、それぞれ特徴があるようです。
はじめからきちんと受講料を払って始めるか、無料のレッスンを受けてから教室を選ぶか、または着付け動画や本だけで頑張るか、選択肢はいろいろあります。
何を選んでも、肝心なのは「きものを着たいという気持ち」と、「きものに慣れること」だと思います。
きものを好きになって着る回数を重ねれば、誰でも必ず着られるようになります。