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紙の博物館・企画展 ~白石の紙布と紙衣~(1)

投稿日:2019年6月2日 更新日:

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「紙の博物館」で企画された展示会「白石の和紙」に行ってきました。

展示されていた資料をご紹介しながら、紙布(しふ)や紙衣(かみこ)について考えます。

1.飛鳥山3つの博物館

東京都北区王子の飛鳥山公園には「渋沢史料館」・「北区飛鳥山博物館」・「紙の博物館」という3つの博物館があり、三館連携して情報発信を行い、三館共通券を発行しています。

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△本郷通り沿いの公園入口にある看板

http://www.asukayama.jp/

①渋沢史料館

渋沢栄一が新紙幣の顔に決まったことで、最近この史料館は話題になっています。

近代日本経済の基礎を作った渋沢栄一は、設立に尽力した王子製紙(設立当時は抄紙会社)の工場を見守ることができる飛鳥山に、邸を構えました。その跡地に1982年に開館したのが渋沢史料館です。

園内に残る渋沢栄一の旧邸は国の重要文化財に指定されています。

渋沢栄一は昭和6年に91歳で亡くなるまでここで家族と共に過ごしたそうです。

 

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△渋沢史料館

②北区飛鳥山博物館

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北区飛鳥山博物館 は北区の歴史・民俗・自然が学べる博物館です。

③紙の博物館

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和紙・洋紙を問わず、古今東西の紙に関する資料を幅広く収集・保存・展示する紙の総合博物館で、1950年(昭和25年)に開館しました。管理運営は、公益財団法人紙の博物館です。

王子は、明治初期に近代的な製紙工場のさきがけとなった抄紙会社(後の王子製紙王子工場)が設立された地で、”洋紙発祥の地”として知られています。

 

2.紙の博物館の企画展「白石の和紙~名産紙布・紙衣を中心に~」

会期:3月16日(土)~6月9日(日)
https://papermuseum.jp/ja/

企画展では、白石の和紙から作られた紙布と紙衣が展示されていました。

紙布と紙衣 どちらも材料は紙ですが、出来上がったものは全く違います。

展示解説を引用しながら整理してみます。

①紙布(しふ)とは

細く切った和紙によりをかけて作った紙糸を織って布にしたものです。

タテ、ヨコ糸共に紙糸を用いて織った『諸紙布(もろじふ)』のほか、タテ糸に絹糸や綿糸、ヨコ糸に紙糸を用いた『絹紙布』や『綿紙布』などがあります。

紙布は軽く丈夫で、汗をよく吸い肌触りがよいので、主に夏の衣料品になりました。紙布は洗濯ができ、洗うほどにやわらかく、肌触りが良くなります。

江戸時代に木綿が貴重だった山陰や東北地方などで、農家の自家用に主に反故紙を用いて作られていました。

(展示解説より抜粋)

特に宮城県白石の紙布は名産品として知られ、将軍家にも献上されていたそうです。

②紙衣(かみこ)とは

紙子とも書きます。タテとヨコに何度も簀(す)をゆすり、繊維を十分にからませる「十文字すき」という方法でつくられた厚手の和紙をコンニャク糊で貼り合わせ、柿渋などをぬってさらに丈夫にし、揉み上げて、着物や帯、布団などに仕立てたものです。

古くは僧侶がお経の反故紙を紙衣に仕立てたといわれ、戦国時代には武将が陣羽織等として愛用しました。

安価で、手触りが柔らかくて暖かいので、庶民の防寒具ともなりました。

(展示解説より抜粋)

③特徴の違い

このように紙布は和紙の糸を織って布にしたもの、紙衣は和紙そのものを衣類に仕立てたものということで、全く違うものなのです。

紙布は軽くて風通しがよいので夏向きです。一方、繊維が詰まった厚手の和紙でできた紙衣は風を通さないので防寒着に向いています。

また、紙布は洗濯ができますが、紙衣は洗えないようです。

私は紙衣のきものを着たことはないのですが、子供の頃母から紙衣の話をよく聞きました。母は幼い頃紙衣のベストを着用したことがあり、寒い冬の日でもとても暖かかったそうです。

「紙が暖かい」ということがとても不思議で印象に残っていました。

 

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これは紙衣の帯です。とても軽いのですが、通気性がないので涼しい感じはしません。

紙布のきものは母のお気に入りで、体調がすぐれなかった晩年、単衣の時期から真夏まで着用していました。

「紙布だけは着ていてとても楽なのよ」と、よく言っていました。

麻とも木綿とも違う独特の風合いの紙布は少しゴワッとしたガーゼのようです。

袖を通すと体がふんわり優しく包まれているような気分になることを私も最近経験し、母の言葉の意味がわかるようになりました。

 

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母から譲られた紙布のきものに紙衣の帯を合わせています。

 

3.展示品を見る

当日の展示品と解説を一部ご紹介します。

①紙布の展示品

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△紙布紙

楮原料の紙布紙50枚1束。約38×53㎝の紙布紙が、紙布一反のヨコ糸には100枚必要とされます。

 

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△紙糸(未成品)

紙裁ちをして湿らせたものを石の上でもみ、糸状にした「紙もみ」を終えた状態のもの

紙布の作り方に関しては、以下の記事で取り上げていますので、興味のある方はそちらを御覧ください。

 

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△絹紙布平織 肩衣(江戸時代)

男性の「裃」の上半身に着るもの。

 

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△絹紙布絽 幼児前掛(江戸時代)

紙糸、絹糸共に細い糸を使用。絽織りになっています。

 

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△絹紙布平織 夏袴(明治時代)

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△絹紙布縮緬 三つ揃い(明治時代)

仙台藩で最初の三つ揃いの背広。ボタンや金具はパリ製のものが使用されています。

 

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△綿紙布平織 帯(大正時代)

反故紙(一度使った紙)を紙布糸にし、ヨコ糸として織り込んだもの。紙に書かれていた墨の部分が黒い模様になっています。

 

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△絹紙布平織 産着(昭和16~19年頃)

お宮参り用として使われたもの。

②紙衣の展示品

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△東大寺修二会紙衣(昭和時代)

東大寺の修二会(お水取り)のときに僧侶が着用するもの。実際に使用されたため、煤で汚れています。

<参考>
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△修二会の準備をする紙衣を着た僧侶(『別冊太陽』和紙 構成・吉岡幸雄 (平凡社・1982年)より)

平安時代から、僧衣は蚕を殺して作る絹より、植物の繊維から作る紙の衣が重用されたそうです。

 

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△東大寺修二会紙衣原紙(昭和58年)

厚手の紙を木の棒に巻いて縮ませたものを広げるという作業を何度も繰り返して柔らかく揉み上げます。

<参考>
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△自分が着る紙衣を木の棒を使って揉み込む東大寺の僧侶(前掲書より)

女性の手によらず、僧衣を自分たちで作るということにも意味があったと思われます。

 

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△紙衣 茶羽織(昭和時代)

 


△歌舞伎の舞台衣装 (昭和62年)

第六回近松座定期公演「傾城仏の原」で中村扇雀が着用したもの。原紙は白石和紙
(紙の博物館の常設展示品)(2017.5.13撮影)

次回は企画展に合わせて行われた講演会を中心にご紹介します。

 

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