桃の節句を控え、お雛様の刺繍帯を着用しました。アンティークの引き抜き綴れ帯です。
桃の節句コーデで浮世絵(役者絵)を鑑賞し、華やかな気分になりました。
1.1本の帯で三節句をカバーする帯
①綴れ地に精緻な刺繍
以前にも取り上げたこの帯は、綴れ織りの帯地両面に華やかな節句の刺繍が施されているものです。
昭和初期の「引き抜き帯」で現代と結び方が違いますが、いろいろなデザインを楽しめるようになっています。
写真など繰り返しになりますが、もう一度紹介させてください。
(なお、「引き抜き帯」に関してはこちらで説明しています)
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メインとなる太鼓部分
菊と唐団扇(とううちわ)で重陽の節句(菊の節句)です。
唐団扇を軍配としてみれば端午の節句としても使えます。
雛人形で桃の節句です。
胴部分
花菖蒲+太刀で端午の節句を表しています。
硯箱を雛道具としてみれば桃の節句ですが、菊の節句にも合うように小菊があしらわれています。
また、硯と筆から短冊を連想すると、「七夕の節句」を表している気もしますが、七夕は袷の季節ではないのでこの帯を着用するのは難しいと思います。
つまり、この帯は少なくとも桃の節句、端午の節句、重陽の節句の三節句に着用できるようになっています。
②引き抜き帯ならではの特長
現代の帯ではお太鼓の両面にこのような刺繍が施されているものは少ないと思いますが、昔の引き抜き帯はどちらの面もメインのデザイン。さらにタレも両面使え、バリエーションが広がります。
このような引き抜き帯は贅沢ではありますが汎用性があるのでお得感があり、また3本の帯が1本になっているという点では、箪笥の収納にも便利といえます。
引き抜き帯の中には、華やかな柄と渋めの柄を表裏にして、年を重ねても締められるような工夫がされているものあります。
昔の人の知恵や創意工夫にはつくづく関心させられます。
③お雛様でもお太鼓は2通り
桃の節句の場合、前は硯文様ですが、お太鼓のタレは帯をねじることで2通りに装えます。
今回は若菜と小松のタレを出そうと思います。
この柄だけを見ると、正月七日の「人日(じんじつ)の節句」を表していると思われます。人日の節句は七草粥を食べることから現代では「七草の節句」のほうが馴染みがありますね。
2.地紙(じがみ)文の小紋に合わせる
今回は控えめな地紙文の小紋に合わせてみました。
①地紙文とは
扇の紙の部分を地紙といいます。(地紙は、扇の種類によって何枚かの和紙を貼り合わせて作られ、蛇腹に折りたたんで扇の形になっていきます)
地紙文はこの地紙を意匠化したものです。
そしてこの着物は地紙に江戸小紋の寄せ柄です。
みやびな雰囲気の地紙文はお雛様との相性も良さそうです。
②着用してみる
着物の柄がおとなしいので帯が映えているようです。
普通の立ち雛と違い、横に跳ねているような男雛が可愛らしいです。
③小物など
帯締めは刺繍の邪魔にならないように菊の花と同系にしました。
松皮菱(まつかわびし)の切り嵌め(きりばめ)文様のバッグを合わせました。
3.静嘉堂文庫美術館開催の歌舞伎浮世絵展を鑑賞
①「豊原国周生誕190年 歌舞伎を描く―秘蔵の浮世絵初公開!」
丸の内静嘉堂文庫(せいかどうぶんこ)美術館で歌舞伎の浮世絵を鑑賞しました。
明治の写楽と言われる浮世絵師、豊原国周(とよはらくにちか)(1835~1900)の作品を中心とした歌舞伎の浮世絵や役者絵の歴史をたどる展示で、子供の頃からの歌舞伎ファンとしてはワクワクと心躍るひとときでした。
△展示会のチラシ
②入場してすぐのお楽しみ
ロビーには大きな浮世絵のフォトスポットがありました。
豊原国周作「新富座本普請出来之図(しんとみざ ほんぶしん しゅったいのず)」です。
中村芝翫(四代目)、市川團十郎(九代目)、尾上菊五郎(五代目)、守田勘弥(十二代目)……などの役者が並んでいます。
等身大の顔出しパネルは大人も楽しめますね。
私は菊五郎丈の隣に立ってみました(^^)
印象に残った展示などは次回ご紹介します。