車や電車での移動時、観劇の際など、着物で長時間座席に寄りかかると、帯枕が背中に当たって痛くなることがあります。
前回は帯枕によるお太鼓の形の違いなどを考えましたが、今日は”寄りかかれる帯枕”の「観劇枕」を取り上げます。
実際に長時間使っての感想を、メリット/デメリット含めご紹介します。
1.きものを快適に着るために重要な帯枕
①帯枕を使い分ける
帯枕は帯結びの形だけでなく、着心地に大きな影響を与えます。そこで、着物や季節に合わせて帯枕を選ぶことも必要です。
フォーマルな席や華やかに装いたい時は背中に密着する長めの帯枕が向いています。
△長さと厚みのある帯枕
(たかはしきもの工房「空芯才ビッグ」)前回の記事で紹介しました。
けれども、暑い季節にはそのような帯枕は背中が蒸れて不快になることがあります。
私は夏になると通気性の良いヘチマ素材の帯枕を使っています。
こちらで紹介しました↓
②座席の背もたれに寄りかかる場合
もう一つ帯枕を選ぶときのポイントは、長時間椅子に座るときに楽なことです。
着物の場合、会食やパーティーなどでは背もたれがあっても寄りかかることは少ないですが、観劇やコンサートではマナーとして座席の背もたれに寄りかかる必要があります。
また、着物で車を運転する人も多いでしょう。
私には十代前半のつらい思い出があります。
新幹線で東京から京都まで行くときに、まだお太鼓結びをする年齢ではなかったので、母に文庫結びをしてもらっていました。
その際、差し込み型の文庫用帯枕を使っていたので、差し込む部分(木製)が背中に当たり、座席に寄り掛かると痛かったのです。
長い時間の乗車は大変で、早く大人になってお太鼓結びをしたいと思っていました。
お太鼓用の帯枕はどれも背中が痛くならないような形になっていますが、それでも長時間になると違和感を感じるものがあります。
今回私は、以前から気になっていた「観劇枕」を試してみました。
2.購入
①低反発素材の帯枕
届きました♪
薄いガーゼにくるまれていて、それが枕紐になっています。
取り出すことはできない仕様です。
試しに枕をリボンで……
キュッと縛りました。
しばらくおいてから、リボンを外しました。
すぐにもとに戻りました!
この帯枕は、体重を掛けてもうまく吸収してくれそうです。
②素材と大きさ
素材
- 本体表生地:ナイロン100%
- 本体芯素材:軟質ポリウレタンフォーム
- 紐部:綿100%ガーゼ(日本製)
大きさ
- 横巾:22cm
- 縦巾:7cm
- 厚み:6cm
- 紐の長さ:150cm
厚みが縦巾と同じくらいなので、ころっとした印象の帯枕です。
重さ
56gでとても軽いです。
3.使用してみる
①お太鼓の様子
見た目はほかの帯枕と同じですが、つけ心地は柔らかく、軽く感じました。
②長時間使用してみる
先日、電車の座席で試しました。
片道約2時間、往復4時間乗車し、座席に寄りかかりました。
お太鼓の形に変化はないようです。
③感想
良かった点
- フニャッと柔らかいのでお太鼓が上手くできるか心配だったが、問題はなかった。
- 厚い枕に見えたが、着用すると体にフィットして厚みを感じなかった。
- 枕紐がガーゼなのでゴロゴロせずに帯の中に収まった。
- 座席に寄りかかった瞬間、低反発の枕に頭を載せたような感じがして、快適だった。
- 長時間の電車でも疲れずに、一日楽に着物で過ごすことができた。
- 長い時間の歌舞伎鑑賞や、じっと動かずに集中する(せざるをえない)コンサートや能鑑賞にはぴったりな帯枕だと思った。
気になった点
- ウレタンとナイロン素材で背中に密着するので、夏は蒸れを感じる可能性があると思う。
- ウレタンは経年劣化しそうなので、長年使用すると形が崩れてくる心配があるのではないかと思った。
今日は低反発素材の「観劇枕」を取り上げました。
軽くて柔らかい観劇枕は座席にもたれることとは関係なく、いつでも使えそうです。