今日は若い頃のきものをずっと着ていくために「八掛交換」をしたレポートです。
1.八掛(はっかけ)とは
袷(あわせ)の着物の裾の裏につける布のことです。
前身頃、後身頃の裾裏に4枚、衽(おくみ)*の裏に2枚、襟先の裏に2枚、合計8枚掛けるので、八掛といいます。裾廻しともいいます。(私はこちらのほうが言い慣れています)
*衽…前身頃に縫い付けられた半幅(約15cm)の細長い部分。上は襟から、下は裾まで続いています。
八掛と同じ裏布を袖口にも付けます。八掛は表地が傷まないように保護する為と、裾さばきを良くする為に付けられますが、色のアクセントになるので、おしゃれの要素もあります。
表地の地色か、同系色を使ったり、柄の中の一色を選んだりします。昭和時代までは若い人の着物には赤系の派手な八掛がよく使われました。
2.八掛交換前の着物
いずれも20代初めのきものです
①大島紬・オレンジ色の八掛
黒地なので八掛のオレンジはあまり気にせずに着ていましたが、ここ数年はさすがに気分が落ち着かなくなってきました。
②紬の小紋・朱色の八掛
40代前半・まだ帯も朱系だった頃。
最近はこのように羽織を着てごまかしていましたが、歩く時に見える裾の朱色はやはり目立ちます。
③綸子(りんず;地紋のある柔らかな生地)の小紋・赤い八掛
表地が薄いグレーなので、若い頃は八掛の赤がアクセントになり若々しさを出していましたが、最後に着たのは12年前でした。
3.八掛交換のもう1つの理由
きものは何回か手入れ(丸洗い)をすると、あるいは長く保管しておくだけでも、表地と裏地のバランスが崩れてくることがあります。
特に紬に多いのですが、裏地が縮み、表地がたるんでしまうのです。(“かぶり”といいます)
八掛交換により、それも解消できます。今回①と②の着物に少しその傾向がみられました。
4.新しい八掛をインターネットで探す!
通常呉服屋さんに行っても八掛は色見本で選ぶだけで、実物を当てて選ぶことはできません。ならばインターネット上で探してみよう! と思いたちました。
ヤフーオークションでもショップから新品が多数出品されていて、きものと画面上の八掛の写真を合わせてみると、出来上がりがイメージできました。
選んだ3点はこれです。
①大島紬にグレーがかった緑の八掛(紬用)
②グリーン系紬に金茶色の八掛(紬用)
③グレーの小紋に青の八掛(ぼかし)
3点とも3,000円台で入手できました。仕立ては「きものサロンながしま」にお願いしました。八掛交換は1枚9,720円でした。
そして新しい八掛を付けた着物が出来上がりました。
5.気分を新たに着てみる
以前との比較も……
①大島紬にグレーがかった緑の八掛(紬用)
↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓
若向きの花柄でしたが、袖裏と帯締めを同色にすると落ち着いた雰囲気になりました。
②グリーン系紬に金茶色の八掛(紬用)
↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓
飛び柄がかわいい着物なので、できるだけ地味にしたくて金茶色を選びました。
③グレーの小紋に青の八掛(ぼかし)
↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓
大きな茶屋辻(ちゃやつじ)文様*ですが、八掛の青で大人しい雰囲気になったようです。
*茶屋辻文様…流水に楼閣、四季の草花など水辺の風景を意匠化した文様
6.感想
裏地が派手になり気に掛かっていた着物でしたが、このように仕立て直しをしなくても、今の自分に合ったものに変えることができました。ほんの少し見えるだけの八掛ですが、不思議なことに同じ着物とは思えない新鮮な感覚を味わうことができました。
これからも大切に着ていこうと思います。