最近は、妊娠中でもきものを着たいと思っている人がいるようで嬉しく思います。
「マタニティフォト」として記念の一枚を着物で撮るのも素敵ですね。
今日は妊娠中のきものについて考えます。
1.妊婦にきものは大丈夫?
①ゆったり着れば大丈夫
昔は着物しかなかったのですから当然大丈夫です。
現代の「きものはきちんと着なくてはおかしい」といった考えにとらわれなければ、妊婦でもきものを楽しむことはできます。
締め付け無しでゆったり着て、なおかつ動けるような着方を工夫すれば臨月でも着用できると思います。
妊婦と言っても時期によって状況がまったく違いますので、次に私の記憶からまとめてみます。
②妊娠初期(1~4ヶ月)
妊娠初期は不安定な時期なので、妊娠3ヶ月くらいまでは着物を着てもあまり楽しくはありませんでした。
幸い吐き気はなく、軽い貧血や動悸程度だったので、少し心配しながらも時々着ていました。
私は普段下駄を履くことが多かったのですが、この頃は下駄で歩くと動悸がするので草履でソロソロと歩いていました。胸元の締め付け感も辛いので、胸紐は省くなど、なるべくゆったり着るようにしました。
髪をアップにまとめたりするのもおっくうなので、ロングの髪を後ろで束ねて垂らし、リボンや髪留めを付けるだけでした。
妊娠初期のきものは十分に注意して、母親やご主人に付き添ってもらえるときに着用するのが望ましいです。
つわりがひどくなければ、きものは冷えも防げるしお腹がサポートされるので、かえって母体に良い気がします。
4ヶ月を過ぎると安定し始める場合が多いので、着物でお出かけしたいという気持ちになってきます。
③妊娠中期(5~7ヶ月)
私の場合、安定期になる5ヶ月からは着物を着ることへの不安がなくなりました。
また、洋服だとお腹が目立ち始めますが、きものではあまり気づかれません。
貧血もなくなったので、一人で電車に乗ってお茶の稽古にも妊娠7ヶ月まで通いました。
娘の場合も妊娠5ヶ月になると安定したので、きものを着たいと言い始めました。
美容室の方が気を使ってくださり、ゆったり着せてもらえたので気分が良かったと言っていました。
2.妊娠後期(8ヶ月~10ヶ月)のきもの
①妊娠8ヶ月頃
この時期になると、きものを着て外出することはほとんどありませんでした。
家で着たときは、きものの身幅が足りないために座ると前がはだけたり、正座をすると足がすぐしびれて驚いた記憶があります。
ただ、8ヶ月頃はお腹は目立っても動きはそれほど制限されないので、親族の結婚式に出席するくらいは可能な時期だと思います。
②妊娠9~10ヶ月
あくまでも体調次第ですが、マタニティフォトとしての記念撮影だけなら、妊娠9~10ヶ月でもきものは着用できると思います。
9月に妊娠10ヶ月(36週)になった娘が、体調も安定しているのできものを着てみたい、と言いました。
結婚前に着付け教室を体験し、きものに親しんでいたので着付けを忘れないためにも袖を通したかったようです。
妊娠後期でお腹もかなり…でしたが、どこかに出かけるというのではなく着るだけなら良いと思い、手伝うことにしました。
3.軽くて着やすいきものを
①夏の紬と作り帯で
9月はまだ暑いので、涼しくて軽い着物が良いと思いました。
また体のラインにそうような柔らかいものはやめて、ハリのある単衣の絽紬(ろつむぎ)を選びました。
当ブログでは何度も登場しているきもので、絽目の入った紬です。私が若い頃のものを数年前に目引き染めで渋くした単衣です。
透けますがしっかりした生地なので、盛夏には不向きです。
帯は作り帯のほうが楽だと思います。
二部式の博多織名古屋帯です。
母が若い頃使用していた博多の名古屋帯を二部式にしたものです。
こちらで紹介しています。
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②下着や小物の工夫
下着も妊娠中は工夫が必要です。
私が用意したのは次のものです。
●汗取り肌着
いつも着用しているあしべ織りの肌着です。
ブラジャーはしないので、その代わりです。補正にもなります。
汗取り肌着でなくても良いですが、胸から分泌物が出ることもあるので、襟ぐりの深いシャツなどを一枚重ねると安心です。
●ワンピースタイプの肌着
裾よけと一体型のほうが、紐のストレスがありません。
●長めの腰紐
●柔らかい伊達締め
使い込んで柔らかくなった博多織の伊達締を用意しました。
●補正用タオル
●いつもより大きめの足袋
足がむくみがちなので、0.5cm大きい足袋を用意しました。
●柔らかい前板
軽くて柔らかいへちまの前板です。
本体がヘチマで表地はナイロンメッシュになっています。
へちまの前板↓
③長襦袢
市販の長襦袢スリップを使うことにしました。
身頃は高島ちぢみ(木綿)で吸湿性があり、裾と袖はポリエステルなので柔らかく着心地が良いものです。
こちらで紹介しています。
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娘は妊娠36週(臨月)に入った頃、体調が良い午前中にきものを着ることになりました。
続く――