今日は紫色の小紋を取り上げます。
レトロな雰囲気の紫色のきものは、難しさもありますが一度は着てみたい色です。
1.紫の縮緬小紋
①紫は難しい?
譲り受けた着物の中に、なかなか袖を通すことができなかったものがあります。
それがこの紫色の小紋です。
少し赤味がかった紫なので、「京紫」といえるでしょうか、明るい紫です。
紫は元々高貴な色とされ、特権階級しか身につけることができなかったそうです。
赤味がかった紫、青味がかった紫、その濃淡によって様々な紫がありますが、色の印象はかなり強いものがあります。
私が抱く紫色のイメージは歌舞伎などの衣装に使われる明るい色、そして少し渋い紫は<昔のおばあさん>の着物の色です。
ですから、地味な反面結構目立つ紫色を着こなすのは難しそうだと思っていました。
②光琳菊文様
模様は小さい光琳菊です。
光琳菊は江戸時代の画家・尾形光琳が作った菊の意匠で、和菓子にもよく用いられます。簡略化され可愛らしいデザインなので、着物全体もやわらかい雰囲気になっています。
帯合わせは色々可能なのですが、1つに決めかねたので、いくつかの組み合わせで楽しむことにしました。
2.白地の帯で無難に
①白地すくい織の帯
真っ先に浮かんだのはこの白地のすくい織*の帯です。
*すくい織……地の部分はが平織で、文様部分が綴れ織になっているものです。
白地の帯は全体をすっきりまとめてくれます。
織りの帯なので、白でも寒々しい感じにはならないようです。
②帯揚げと帯締め
ピンクがかった臙脂(えんじ)色の帯締めを合わせました。写真ではわかりませんが、菊の地紋の綸子帯揚げをしています。
帯揚げの地紋や絞りの柄は一見わからないようでも、私は相手と会話しているときに気がついて「いいな……」と感心することがよくあります。
③帯の効果
この帯の効果は……
- 古典的な紫色を白で緩和して現代調になった
- 白の帯に目が行くので紫の印象が薄らいだ
3.黒繻子の帯で芝居風に
①黒繻子の刺繍帯
黒繻子に刺繍が施された帯を合わせました。
後ろは黒い帯の主張が強いです。
刺繍は四君子(しくんし)です。
蘭、竹、菊、梅の4種を、草木の中の君子としてたたえたもので、着物の柄にもよく使われます。
②同じ帯揚げと帯締めで
白地の帯の時と全く同じものを使っています。
赤い帯締めがポイントになっています。
③帯の効果
この帯の効果は……
- 体の中心に黒があると落ち着いて引き締まった感じになる
- 紫のきもの+黒の帯はレトロな雰囲気が強まるので、お芝居の衣装風になった
4.失敗例:紫の紙子帯は統一感ありすぎでNG
最後はあまりうまく行かなかった例です。
「紫系でまとめてみよう!」と思い、あまり出番のない紙子の帯を選びました。
①和紙の帯
縮緬のきものに和紙(紙子)の帯です。
「紙子(紙衣・かみこ)」は厚い和紙を糊でつぎ、柿渋を塗って揉み和らげたものです。
それに対して「紙布(しふ)」は和紙を細く裂いて糸にしたものを織った布です。同じ字が使われ紛らわしいですが、全く違うものです。
紙子についてはこちらで取り上げています。
紙子の帯は軽くてよく締まります。帯部分だけ和紙人形になった気分です(^^)
②同系色の帯締め
薄紫の帯揚げと、白と紫の帯締めを合わせましたが、着た写真を見ると、小物は色を外すべきだったと思いました。
帯締めが帯に吸収されてしまいました。
③帯の効果
この帯の効果はマイナス面が目立ちました。
- 縮緬のきものと紙子の帯は、異素材の組み合わせで面白い
- 紫のきもの×紫の帯で、紫色の印象が強まってしまった
(統一感というより、全身紫で気味が悪い感じ?)
きものは足元まですべてを覆うので、ロングドレスと同じです。
色を存分に楽しめると同時に、帯を同系色でまとめると印象が強すぎてしまう難しさもあると思いました。