今日は縞柄の中でも不思議な魅力のある「よろけ縞」を取り上げます。
1.よろけ縞
①よろけ縞とは
曲線によって作られた縞柄で、よろよろと波打つような文様です。
染めのものと織りのものがあります。
△染めのよろけ縞(型染め絽地きもの)(『きもの文様図鑑』長崎巌監修、弓岡勝美編 平凡社2005年よりより)
△織りのよろけ縞(紬地のきもの)、(前掲書より)
②やわらかな幾何学文様
直線による縞文様はすっきりとした硬さがありますが、曲線のよろけ縞はやわらかい雰囲気を持っています。
そして動きを感じることができる幾何学文様です。
直線の縞文様のきもの
直線の縞文様は体にまとうことで胸や肩などにやわらかな線が生まれます。
以前の記事で直線の縞文様を取り上げています。
2.よろけ縞の御召のきもの
①茶の御召
茶色の御召ちりめんに細いよろけ縞が染められています。
遠くからでは無地に近い印象です。
②白地縮緬帯で
白地の縮緬名古屋帯を合わせました。
刺し子刺繍が施されています。
絞りの帯揚げで明るさを出しました。
白地の帯はよそゆきの雰囲気になります。
③イカット風紬帯で
個性的な柄の紬帯を合わせました。
白地の帯よりカジュアルな装いになります。
茶系のきものは地味なだけに、帯の柄を自由に決められるところが魅力です。
帯締めは、好きなのにあまり出番のないものを合わせました。(この帯にはどんな色の帯締めでも合いそうです)
茶色のきものについては、こちらでも取り上げています。
3.江戸小紋のよろけ縞
①斜めの柄
これは細かいよろけ縞なのですが、斜めの柄にしか見えないところが不思議な江戸小紋です。
②花柄の帯
幾何学模様のきものには花柄の帯がよく合います。
宝相華(ほうそうげ)文様の染め帯にグリーンの帯締めを合わせました。
江戸小紋は帯によって雰囲気が変わり、着用範囲が広がります。染め帯ならカジュアルに、織りの帯を締めると少し改まった席にも合います。
4.よろけ縞いろいろな印象
①粋と艶
肩から裾まで流れるように続くよろけ縞は粋で艶っぽい印象を与え、昔の女性の黒い長羽織にも良く合う文様だったと思われます。
②モダン
一方、不揃いのよろけ縞は抽象画のようでモダンな印象を与えます。
③立涌(たてわく)
立涌文様はよろけ縞に似ていますが、波の打ち方が向かい合って膨らんだり狭くなったりする文様です。
水蒸気や雲が涌き立ち、上昇していく様子を表すもので、勢いがあるおめでたい文様とされています。
また、公家の装束や調度品に用いられた有職(ゆうそく)文様でもあります。
△十二単の五衣(いつつぎぬ)部分 昭和3年賀陽宮敏子妃着用(文化学園服飾博物館蔵、同館絵葉書より)
△能装束 紺地菊立涌文様法被(はっぴ)国立能楽堂蔵(野村四郎・北村哲郎(1997)『能を彩る文様の世界』檜書店より )
同じような曲線でできた文様なのに、<よろけ縞>と<立涌>はずいぶん印象が違うようです。