きものを着ると背筋が伸びて、椅子に座っても姿勢が良くなりますね。
でも、長時間の乗り物、観劇などで座席に腰掛けるときはどうすればよいでしょうか?
今日は、読者の方からの質問をもとに、背もたれを使うとき/使わないとき、お太鼓をシワにしない座り方など、きもので椅子に座るときの方法を考えます。
1.背もたれに寄りかからない場合
①食事や短時間椅子に座るとき
洋装でも同じことが言えますが、椅子にきれいに座るなら、背もたれは使わないほうが良いですね。
きものを着たら自然に姿勢は良くなり、食事をするときも背筋が伸びるはずです。
特別に長い食事になるときは別にして、着物ではなるべく椅子にもたれないほうがよいと思います。
展示会場でちょっと腰掛けたときの写真。後ろに人が通らないのでかなり前に座っています。
②変わり結びのとき
振袖用の帯結びは寄りかかると羽が潰れそうで気になります。
昭和時代の着物雑誌にも、寄りかからない座り方が載っていました。(出典:主婦の友デラックスシリーズ『美しい着つけと帯結び』主婦の友社・昭和54年発行 より)
お太鼓結びに近いふくら雀なら、背もたれに寄りかかることができます。
③文庫結びでの体験
文庫結びは寄りかかると結び目が背中に当たり、帯によっては痛い場合があります。
私は中学生頃まで、きもので外出するときの帯は文庫結びが多かったのですが、長時間新幹線に乗るときは辛いので作り帯を着用し、座る前に文庫部分だけ外してもらっていました。
差し込むだけなので、着脱が簡単でした。
浴衣用の軽い帯ならば、結び目をくるっと前にずらす方法もあります。
2. 背もたれに寄りかかる場合
①観劇、音楽会など
後ろの席の人に迷惑なので、必ず寄りかかるようにしています。
劇場や音楽会に行くときは、ヘアスタイルも高く盛りすぎないほうが良いと思います。
②長時間の乗り物
きものでも洋装と同じようにリラックスして乗りたいものです。
お太鼓結びなら、座席シートに寄りかかっても大丈夫です。
ただし、帯はクリーニングがしにくいので、汚さないように注意すること。コートを着るか、ストールや風呂敷などで帯を守る工夫が必要です。
私はそんな時、洋装用のストールを利用しています。洗えるタイプがおすすめです。
③車(タクシー)
以前私はタクシーに乗るとき、後部座席の持ち手をつかんで座り、後ろには寄りかからないようにしていましたが、最近は後部座席でもシートベルトが必須なので、深く座らなくてはなりません。
以前よりタクシーの座席がきれいにはなっていますが、気になる場合は、②と同じくストールなどで帯を覆うと安心です。
3.お太鼓をシワにしない座り方
背もたれに寄りかかるときの注意点をあげてみます。
①もたれる前
今回は背もたれが傾斜しているソファーに座ってみます。
「お太鼓が真っ直ぐになっているか」「タレが返っていないか」を確認してから背もたれに寄りかかります。
寄りかかった状態
②姿勢を変えたり体を動かすとき
姿勢を変えるときは一度背もたれから体を浮かせて
また寄りかかります。
NG!
寄りかかった状態で体を動かすとお太鼓にシワができるので注意しましょう。
③立つ前
椅子から立ち上がる前には、お太鼓が乱れていないか、タレが返っていないかを手でそっと確認します。
この動作はいつでも自然にできるように習慣づけるとよいですね。
④柔らかい帯のとき
生地が柔らかい帯は長時間着用しても楽で良いのですが、シワになりやすい欠点があります。
たとえばこの塩瀬羽二重の帯。
若い頃から使用していて柔らかくなっているので、お太鼓はあまりふっくらさせずにタイトに仕上げるようにしています。(小さく作る必要はありません)
NG!
このようにお太鼓に膨らみがあると……
背もたれで崩れる可能性があります。
けれども、崩れても慌てずに! 立ち上がる前にお太鼓の中に手を入れて直せば大丈夫です。
お太鼓をふっくらと仕上げるのは個人的には好きですが、長時間座るような場合は気をつけています。
きものを着たらお芝居や音楽会に行きたくなりますね。
何を着て行くかは個人の自由で、あまり気にすることはないと私は思っています。
ただ、はじめのうち、座る時には少しだけ気を遣ってください。慣れてくれば洋装と同じ感覚で気楽に過ごせるようになると思います。