11月上旬、東京家政大学博物館で開催中の特別企画展「絹と木綿」を見てきました。
当日は木綿のきものに絹の羽織で出掛けました。
1.特別企画展「絹と木綿」
①東京家政大学博物館とは
東京都板橋区にある私立大学、東京家政大学内にある博物館です。
東京家政大学の前身は1881年、渡辺辰五郎によって開設された「 和洋裁縫伝習所」で、のちに日本で最初の服装を教授する専門学校になりました。
△創立者・渡辺辰五郎(Wikipwdi.org より引用)
②展示内容
日本人になじみ深い絹と木綿を<育てる>ところからの丁寧な展示でした。
展示は分かりやすくまとめられ、それぞれにサブタイトルが付けられていました。
一部をご紹介します。
△特別企画展のチラシ
描かれたカラフルな衣服のイラスト。これらはすべて、会場内で本物が見られます。
絹の衣服
- 江戸時代の打掛
- 大正時代の十二単のうちの五衣(いつつぎぬ)
- 明治~昭和時代の絹の着物
などが目を引きました。
また、絹糸の精錬や撚りによって様々な風合いの布ができることを詳しく解説しており、実際に和服地を触れるコーナーもありました。
△江戸時代の打掛(東京家政大学 ポストカードより)
△五衣(特別企画展 チラシより)
木綿の衣服
・江戸時代の道中合羽
・裃
・明治時代の五つ紋入りの木綿製礼装用きもの
・昭和時代の浴衣
・仕事着
などが展示されていました。
△有松絞(ありまつしぼり)の浴衣(江戸時代後期の物の複製品、東京家政大学 ポストカードより)
様々な植物繊維
・梶(かじ・ 桑科の落葉高木)の皮が太布(たふ)糸になるまでの現物の展示
・オヒョウ( ニレ科の落葉性の高木)と木綿で作られたアイヌ民族衣装
・麻のきもの
・藤と木綿の仕事着
などの展示がありました。
△アイヌ民族衣装 アットゥシ(昭和時代、特別企画展 チラシより)
繊維から布へ
- きもの一反作るのに必要な量の繭と木綿の展示
- 繭とワタがそれぞれ糸から織物になってゆく過程の実物の展示
などがありました。
近代日本を支えた繊維産業
イギリス製の絹のストッキングとブラウスなどが展示されていました。
△絹織物とレースのブラウス(1900年頃・イギリス、東京家政大学 ポストカードより)
「生地の産地は不明だが、日本の羽二重に似ている。」と説明されていました。
1900年代、日本の絹織物はヨーロッパやアメリカに盛んに輸出されました。
輸出向けには布幅が広く薄手の「軽目羽二重」が生産されていました。(展示説明より)
2.印象深い展示
①繭とワタ
「きもの一反分の繭は約2200粒」
「きもの一反分のワタは約5キロ(重さの7割は種)」
これらの繭とワタがそれぞれクリアケースに収められ、展示されていました。
何気なく着ているきものの元を知ることができ、興味深かったです。
②生地を手でさわれる
いろいろな絹や木綿の布を、説明だけでなく手で触ることができるように展示されていたのが良かったと思います。
たとえば絹では、綸子(りんず)・繻子(しゅす)・絽(ろ)・縮緬(ちりめん)・平絹(ひらぎぬ)などです。
また、絹のタンパク質セリシンを取り除く「精錬(せいれん)」の説明でも、精錬前と後の羽二重が展示され、その手触りを確かめることができました。
③常設展示の裁縫雛形
特別企画展だけでなく、常設展示でも印象に残ったものがあります。
それは国の重要有形民俗文化財に指定されている「渡辺学園裁縫雛型コレクション」です。
裁縫雛型(さいほうひながた)は、学園創立者の渡辺辰五郎が考案した裁縫教授法のひとつで、着物や洋服を三分の一に縮小した雛形(模型)を作ることで短期間で仕立てを習得できるようになる画期的な方法だったそうです。
明治から昭和にかけて製作された多種多様な裁縫雛形は鑑賞に値する見事なものでした。
特に先日の即位礼で注目された「十二単」の展示では、十二単を構成する五衣(いつつぎぬ)・唐衣(からぎぬ)・裳(も)の他、白小袖や長袴などそれぞれの雛形が分けて並べてあったので大変わかりやすかったです。
3.木綿のきものに絹の羽織で
①弓浜絣(ゆみはまがすり)
当日(11月2日)は、鳥取県の伝統的織物の弓浜絣を着ました。
厚手の木綿単衣のきものです。
帯は絹(紬)の型染めです。
きものが大胆なねずみ柄なので、細かい文様の帯を合わせました。
弓浜絣については、こちらで取り上げています。
②絹更紗の羽織
この日の最高気温は19.9℃。
午前中は風が冷たく感じられたので、羽織を着用しました。
単衣のきものに羽織は珍しいかもしれませんが、この日の気候にはぴったりでした。
紬地に花更紗が染められた羽織です。
きもの、帯、羽織のそれぞれの柄が一緒になるこのあたりが、羽織を着るときの面白さです。
色や柄を無理に合わせる必要はなく、なんとなく許せる範囲?で組み合わせればよいのです。
③袷の季節に木綿の単衣
木綿のきものは厚手の生地が多いので、単衣仕立てで着ます。
単衣の季節には綿や麻の長襦袢を着たり、袖がレースで半襟付きの半襦袢で済ませたり…気楽に着ることができます。
袷の季節でも着ていて寒くなければ、いつでも着用可能です。
絹の袷の襦袢を着れば暖かですし、木綿の着物がつっぱらずにしっとりと着ることができます。
羽織を合わせればお出かけ着として範囲が広がります。コートを合わせることもできます。
木綿のきものは自由な着こなしができる着物と言えるでしょう。
今日は東京家政大学博物館の特別企画展を取り上げました。
「絹と木綿」は2019年11月22日まで開催されています。