前々回ご紹介した「引き抜き帯」は、現代のお太鼓結びに慣れた我々には締めにくいものです。締めにくい帯は結局出番が少なくなり、もったいないと思いました。
解決策はただ一つ。簡単に締められる「作り帯」にすることです。今日は「引き抜きの袋帯」を「二部式作り帯」に作り替えたレポートです。
1.図による説明
リメイクに入る前に、図を使って作業内容を整理しましょう。絵①~③を順にご覧ください。
(ハサミの印は切断箇所です)
普通の作り帯は、「太鼓」「胴」「手」の3つに切断しますが、引き抜き帯の場合は「たれ」の柄が逆になっているため、たれ部分も切断して付け直す必要があります。よって3箇所にハサミを入れ、四分割となります。
太鼓の下にたれを接ぎ合わせます。手と胴はそれぞれ2つに折ります。
太鼓の裏側に手を、胴に紐をつけます。
2.傷みの目立つ面は使わず、お太鼓は固定式にする
この袋帯は春と秋の腹合わせ帯(リバーシブル)です。
残念ながら秋の刺繍にはだいぶほつれが見えます。そこで春の柄だけを使用することにし、そのつど二重太鼓を作らなくて済むようにお太鼓は固定式にします。
3.作り帯の製作
①たれ部分を太鼓から切り離す
たれの倍の長さ、下から20cmのところで切りました。
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②切断した太鼓の上部分をかがる
見えない部分ですが作業中ほつれないようにすぐにかがっておきます。
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③胴になる部分を切断する
前の柄の中心から50cmの所を切りました(白いテープの所)。切る位置が不安だったので、手持ちの作り帯(既製品)の胴部分をあてて寸法を確認しました。
④手になる部分を切断する
端から45cmのところで切りました。
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⑤太鼓とたれを接ぎ合わせる
③で胴を切り離した残りの太鼓部分に①で切断したたれを縫合します。帯芯はかたくて縫いにくいので片方の帯芯は少しカットしてから縫い合わせます。
たれの生地で包み込むようにして一針ずつ返し縫いで留めました。
端は粗いまつり縫いで始末しました。(見えなくなる部分なので、縫い目は気にせずしっかり付けることを心がけました)
⑥手の始末をする
手になる部分の帯芯を半分にカットし、2つ折りにして縫います。
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⑦太鼓の裏側に手先を付ける
④でカットした手をたれ先から9cm上に縫い付けました。
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この帯は幅が29cmなので、手先を太鼓の中に入れた時に左右3cmずつ出るように置いてみて、そこに待ち針をうちました。
太鼓の表側から見るとこのようになります。
⑧お太鼓部分の始末をする
右が太鼓の山部分。左はたれの裏側が見えています。
太鼓がちょうど良い大きさになるように太鼓の山の位置を決めたら裏側に縫い付けます。
表に返すとこのようになります。
⑨太鼓の形を固定する
こうすれば帯枕を通して背負うだけなので、帯も傷みにくいはずです。
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端だけでなく、太鼓を折った部分も2箇所留めました。
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⑩胴部分の端の始末と紐付け
前幅を決めて(帯巾が狭いため、幅出しをして15cmにしました)両側に紐をつけます。
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紐は80cmのものが2本です。(たまたま手元にあった綿の紐を半分に切りましたが70cmあれば十分です。)
⑪できあがり
4.感想
作り帯の製作は初めてだったので、切断する時はとても緊張しました……。ただ、縫う部分は全て見えないところなので、いくらか気が楽でした。コツとしては、かたい帯芯をカットしながら縫うと良いと思います(そうは言っても生地が重なる部分は針が少し通りにくく、慣れが必要だと思います)
大島紬に合わせてみました。この帯が引き抜き帯だと分かった時は着用を諦めかけましたが、思いきって直したことで普通の名古屋帯より締めやすくなりました。
ともかく、作り帯初挑戦でしたが成功して嬉しいです!