イベント訪問

大倉集古館で「オークラウロ」の音色を聞く

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オークラウロという楽器をご存知ですか?

先日、初めてその音色を聴いてきました。

場所は私が好きな大倉集古館です。

1.オークラウロ

①オークラウロとは

1935年に男爵・大倉喜七郎が、考案・製作した金属製の多孔尺八のことです。

彼は愛好した尺八の音色で西洋音楽を演奏したいと考え、オークラウロを作りました。名前は「大倉」と古代ギリシャの縦笛「アウロス」から付けられました。

喜七郎は尺八を改良することで音階や音色を均一にし、無理なく演奏できるようにしました。そして和洋の楽器とのアンサンブルを可能にしたのです。

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△ソプラノ・オークラウロ (長さ約620mm、直径19mm)1940年頃 大倉集古館蔵(『大倉喜七郎とオークラウロ』大倉集古館編 田中知佐子著より)

オークラウロは尺八の歌口(口をあてて吹く穴)とフルートのキー装置を合わせ持っています。

②大倉喜七郎とは

実業家大倉喜八郎の長男で、明治15年に東京で生まれました。

海外生活でヨーロッパの社会・文化・スポーツへの理解を育て、戦前は帝国ホテルの社長を務め、戦後は「和洋の調和」をめざしたホテルオークラを設立しました。

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△大倉喜七郎

大倉喜七郎と大倉集古館についてはこちらでも取り上げています。

③邦楽「大和楽」も

大倉喜七郎は、洋楽を愛しただけでなく、邦楽にも造詣が深い人でした。

彼は1933年(昭和8年)、「大和楽」という新しい邦楽の流派を創設しました。従来の三味線音楽に西洋音楽の発声法やハーモニー、輪唱などの演奏法を取り入れた全く新しい印象の邦楽です。

喜七郎自身も大倉聴松と名乗り、大和楽の作詞、作曲、演奏を行ったそうです。

(参考:『大倉喜七郎とオークラウロ』大倉集古館編 田中知佐子著)

私は10代の頃初めて大和楽を聴き、とても驚きました。従来の長唄や清元とは全く違う、女性演奏家による歌声とハーモニーが新鮮で美しかったからです。

分かりやすい唄と優美なメロディの大和楽は舞踊用の曲として人気が高いようです。

 

2.蘇った幻の楽器

①大倉集古館

オークラウロのコンサートは大倉集古館で行われました。

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△大倉集古館入り口

大倉集古館は明治から大正時代にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎が設立した私立美術館で、東京都港区虎ノ門にあります。

 

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△大倉喜八郎の像の前で

大倉集古館は、5年半にわたる増改築工事を終え、2019年9月12日にリニューアルしました。

当日は昼間に展示を鑑賞し、閉館後、夕方から1階展示室でコンサートが行われました。通常は100人以上収容できるところ、今回は50人限定の演奏会でした。

②幻の楽器が蘇る

コンサートのはじめには、大倉集古館学芸員の田中知佐子さんから、次のような内容のお話がありました。

大倉喜七郎は、当時の尺八が5孔しかないことに不満を感じて尺八の研究と改良を始めたそうです。

その当時は国産のフルートがない時代であり、大倉の開発した金属製のオークラウロの製作技術は、その後の国産フルートの歴史にも影響を与えたのだそうです。

大倉喜七郎は1935年にオークラウロとその教本を作り、奏者を養成して定期演奏会を開くなど、オークラウロの普及を進めました。

 

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△オークラウロの楽団(中央が大倉喜七郎)昭和14年頃(前掲書より)

しかしその後、戦争と戦後の財閥解体で大倉家のバックアップが難しくなり、オークラウロの演奏会は激減し、オークラウロは「幻の楽器」状態になってしまいました。

オークラウロが再生したのはそれから70年以上経った2011年でした。

喜七郎没後50年の節目を前に再生プロジェクトが発足。楽器が再製作され、コンサートも開催されました。

プロジェクトの中心、オークラウロの演奏者は 、尺八奏者の小湊昭尚(こみなとあきひさ)さんです。

フルートの経験がなかった小湊さんは、はじめは戸惑ったようですが、仲間の協力を得、また歌口などの改良をしながらその後もさまざまな演奏会を開き、現在に至っています。

 

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△小湊昭尚さん(展示会のチラシより)

 

3.演奏会

①メンバーと曲目

コンサートはソプラノオークラウロ2人とギター、バイオリンの4人で行われました。

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△4人の演奏者(展示会のチラシより)

オークラウロ奏者は二人とも尺八奏者でもあります。

メンバーのオリジナル曲をはじめ、「庭の千草」、「ビートルズ・メドレー」、「五木の子守唄」、「黒田節」など様々なジャンルの曲が演奏されました。

アンコールは井上陽水の「夏の終りのハーモニー」でした。

②感想

  • オークラウロはフルートよりも太くてやわらかい音に聞こえました。
  • 尺八の首振りによる音の強弱やゆらぎがオークラウロにも生かされていて、それが洋楽のメロディにうまく溶け込んでいるところが印象的でした。
  • 音域の広さと音階の正確さを持ったオークラウロならではの、2管による二重奏が素敵でした。
    大倉喜七郎が求めていたものはこのようなハーモニーだったのでしょう。
  • 日本の名画を背景にしたコンサートには趣があり、楽器の音色がより美しく感じられました。

 

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△背景となっていた絵画の一つ「木菟図」(小林古径 昭和4年)(絵葉書より)

昼間鑑賞した「木菟(みみずく)図」と同じはずなのに、コンサートの照明のせいか、夕方のミミズクは、より聞き耳を立てているように見えました。

③新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの影響でしばらく音楽活動が制限されていた小湊さんたちにとって、当日は久しぶりの観客を前にしてのコンサートだったそうです。

「お客様からの拍手を聞いて、改めて音楽に対しての強い思いを感じました」と話す小湊さん。

演奏できないという今回の経験によって、<オークラウロの空白の70年>を、より切実にとらえることができたそうです。

演奏会の一部分はこちらにアップされています。

https://www.youtube.com/watch?v=PDRMfjLuPmc

 

長くなりましたので、展示会と当日の着物については次回に……。

 

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