先日、ムガシルクのきものを着てみましたので、ご紹介します。
1.ムガシルクとは
①インド産
インドのアッサム地方に生息する野蚕(やさん)*の一種である<ムガ蚕(かいこ)>からとれる、黄金色に輝く最高級絹糸、またはその織物をさします。
「ゴールデンシルク」、「シルクの宝石」とも言われます。
*野蚕…家蚕(かさん)に対する言葉で、山野などに自然に生息している蚕をいい、野生の植物を食べます。
②特徴
- 糸は軽くて強い
- 輝きは褪せることがない
- 多孔質(表面に小さい穴がたくさんあいている)であり、自然の温度調節機能を持ち、紫外線を遮断するUVカット効果も高い
③希少性と色
ムガ蚕は限られた谷や丘にしか生息せず、アッサム地方特産のsomやsoaluという木の葉を食べて育ちます。
それが独特の黄金色の糸となりますが、生産量はきわめて少ないそうです。1kgの糸を得るためには約5000個の繭が必要とされます。
サリーや婚礼衣裳の素材として数百年にわたって使われて来ましたが、もともと絹の中でも最も強く、金色が褪せないので、何代にもわたって大事に受け継ぎ着続けたと言われています。
△ムガシルク
画像出典およひ本文の参考資料:成田典子(2012)『テキスタイル用語辞典』テキスタイル・ツリー)
2.織の帯を合わせる
「ゴールデンシルク」といっても、紬の無地と変わりはないので、洒落帯風の織の帯を合わせてみました。
帯の主張は強いようです。
黄金色に合わせて…
帯にも金糸が織り込まれています。
全体に統一感を持たせるために、帯揚と帯締は同系色にしました。
3.染め帯を合わせる
ベージュの紬には少しポップな柄の染帯を合わせたくなります。
明るく軽快な感じです。お太鼓も小さめにしてカジュアル感を出しました。
白山紬(はくさんつむぎ)の白生地を使用した名古屋帯です。
遠くからは水玉に見えますが、麻の葉文様です。
きものの裾に模様が無いときは草履の前ツボの赤が効きます。
4.ムガシルクを着てみて
①室内で輝くムガシルク
今までご紹介した写真は太陽光の下で撮ったものですが、ムガシルクの輝きは室内のほうがよく分かります。
室内で撮影(フラッシュ使用)
母が晩年ムガシルクを着た写真がありました。
唐織の帯を締めています。
多色使いの洒落袋帯を合わせています。
(この帯は2018.4.8の記事で紹介しています)
いずれも室内で撮られた写真で、フラッシュを使用していることもあり、かなり光って見えます。
そばにいる時はこれほど強くは感じませんが、当時の私は照明の具合で着物が時折放つ輝きに、「母好みの地味な色なのに、ずいぶん華やかな紬だな」と不思議に思っていました。
②手触り
ムガシルクは、「輝き」という表現が使われますが、「光沢」を使うとしたら、それは少しザラっとした紬の光沢で、手触りはシャリシャリしています。
ただ、しなやかさもあるので突っ張る感じはありません。着用中は絹特有のなめらかさを感じることが出来ました。
③軽さ
袖を通してみて驚いたのは、ふわっと軽いことでした。
見た目ではどちらかと言うとどっしりしたイメージでしたが、着てみると単衣の着物のように軽いのです。
多孔質であるという特性が着心地に反映されているようです。
着ていて軽く感じる大島紬より軽いです。実際に計ったところ、大島紬は800g、ムガシルクは700gでした。
ムガシルクのきものはカジュアルにも、少しあらたまった装いとしても重宝で、4~5月、10月の汗ばむ季節でも心地よく着られるきものだと実感しました。