今日は40年間着ている絞りのきものを紹介します。
1.青海波文様の絞り
①青海波文様とは
同心の半円を連ねた波形の模様です。誰もが一度は見かけたことがあるポピュラーな模様ですね。
△ 鮫小紋(さめこもん)*の風呂敷
*鮫小紋…江戸小紋のひとつで、鮫の肌のように見える細かい型染めのこと
②青海波文様の意味
「青海波文様」は、雅楽「青海波」の装束の文様から名前をつけたといわれています。古代ペルシャが起源で、シルクロードを通り、中国から日本に渡ってきたそうです。
日本では「大海原に絶えず繰り返される穏やかな波」を表し、平穏な暮らしがいつまでも続くことを願う吉祥文様です。季節は問いません。
③好きな若草色
10代の頃の私は太っていることを気にして、きものは膨らんでみえる赤やピンクなどを避けて選んでいました。
選ぶのはブルー系やグリーン系。この着物を作ってもらう時も、絞りが施されて小さく縮まった白生地がどのようにして着物になるのか不思議でしたが、とにかく好きな若草色を選びました。
ピンク系にしなかったことで、のちのちまで着られたわけですが、その頃は自分が年を取ることなんてもちろん想像していませんでした。
2.過去の写真
私にとって”青海波の絞り”は特別に大切なきものだったので、懐かしい思い出と共に写真も残っていました。そのうちの数枚をご紹介します。
①10代
まだ肩揚げをしていました。袖丈も1尺8寸(68.4cm)と長めです。
②20代
③30代
④40代
3.50代で着る
昨年、久しぶりに着てみました。
帯は花菱(はなびし)に4枚の葵(あおい)、葡萄唐草が織り出された唐織りです。単色とはいえ若草色は明るいので、それを落ち着かせるような色の帯を選びました。
帯揚げは帯の中のピンク系に、帯締めは着物のグリーン系に合わせ、統一感が出るようにしました。
ハンドバッグは母のお下がり。着物の色に合わせた昭和の雰囲気のものです。
浅草公会堂での歌舞伎見物です。友人の帯も20歳の頃の物だそうです。二人とも気分は一気に若返りました。
4.絞りの着物の弱点
絞りのきものは手入れがしにくいといわれます。
着物をほどいて反物の状態にして洗い、もとの風合いや光沢に戻す手入れ方法を「洗い張り」といいますが、絞りは水に浸すと戻ってしまうので、それができません。丸洗い(ドライクリーニング) しかできないのです。
染み抜きも他のきものより高度な技術を要すると聞いたことがあります。
とは言うものの、私はこの着物で京都旅行を2回していますし、気楽なお出かけ、食事会などにも着用していて、今まで特に問題はありませんでした。
思い出がいっぱいの”青海波の絞り”…今後も大切に着たいと思っています。