履き物

鎌倉彫り・桐下駄

_MG_1430

今日は鎌倉彫りの下駄をご紹介します。

1.薔薇の柄の下駄

_MG_1059

桐の色も濃く、ずいぶん古びた下駄です。義母が遺したものですが、未使用でした。昭和30~40年代の物だと思われます。

 

_MG_1062

洋風な薔薇の彫りに合わせてピンク色の鼻緒がついています。

 

_MG_1063

裏には鎌倉彫と書かれています。

私が知っている鎌倉彫の下駄とは趣(おもむき)が違います。

 

_MG_1061

何年も履かれることなく古びてしまった下駄、台をきれいにすることはできませんが、鼻緒を新しくして履くことにしました。

 

2.鼻緒を替える

いつもお世話になっている丸屋さんに持って行きました。
(「丸屋履物店」については2015年10月24日の記事参照)

「ああ、これ東京彫りね。今はないけど。昔、鎌倉彫りに対してこういう彫り方を『東京彫り』といっていたよ。」 と五代目のご主人が説明して下さいました。

六代目になる息子さんは、「ぜんぶ塗ってしまえば台にどんな木を使っているか見ただけではわからないけれど、桐の柾目(まさめ)*が見えるこの彫りの場合はそれだけ良い台を使わなくてはいけないのです。」

とも説明して下さいました。

*柾目…木材をその中心に向かう方向(半径方向)で縦断したときの面のこと。多くは年輪が平行な木目として現れます。それに対して年輪の模様が山形や渦巻き模様になるのが「板目(いため)」で、柾目よりたくさん取れるので安価ですが、狂いが生じやすい欠点があります。

 

_DSC2189

鼻緒をすげる丸屋のご主人

 

_DSC2325

夏には普段着として藍色のきものが多いので、この鼻緒にしました。松葉柄の赤と前つぼの赤が気に入っています。

 

3.履いてみる

夏のきものを意識して鼻緒を選んだのですが、落葉の頃から新年にかけて早速履いてみました。

①紫根絞り(木綿)のきものに

_MG_1414

_MG_1434

木綿のきものには、草履よりも下駄のほうが馴染むようです。下駄を履くことで全体が軽快な装いになると共に、気分も軽くなるような気がしました。

 

_MG_1408

古い紬のコートを合わせてみました。下駄は古い物との相性が良いので助かります。

②やわらかものにも

_MG_1571

紬ではない絹の着物を「やわらか物」ということがありますが、2016年の元日は昭和40年代のちりめんの着物と羽織を着てみました。

 

_MG_1577

_MG_1579

紬やウールなどのカジュアルな着物でなくても、下駄は合うと思います。草履が一般的になる前には皆下駄を履いていたのですから当たり前のことです。このようにちょっとレトロな装いにする時は、やわらか物でも下駄の方が合うと思いました。

 

4.復活した昔の鎌倉彫り

調べてみたら、鎌倉彫の老舗「陽雅堂」では、ご紹介したような鎌倉彫りの下駄を扱っていることがわかりました。

陽雅堂の方に伺った内容をご紹介します。

①これらの下駄は一般的には「柾目(まさめ)生かし」または「抜き鎌倉」といわれ、以前は数多く作られていましたが、職人の減少から製作出来なくなり、一度は廃れてしまいました

②しかし最近お客様からの要望が多くなり、当時の製作工程を再現し30年ぶりに復活させたのだそうです

③1本の桐からの採り分が少なく高価な柾目ですが、元々は節(ふし)の部分も無駄にしないで下駄にするため、ふしを隠す目的で鎌倉彫を施したのだそうです

(参考資料)_DSC2524
▲ 柾目の桐下駄

左の男物は父が遺した下駄。右は私が昭和40年代に履いていた下駄。

 

@

_DSC2559

昔の桐下駄にはお店の刻印が付いていました。(アマノ)(こまつ)

④現在はふしを隠すためでなく、初めから「柾目生かし」下駄を作る目的で、良い桐が採れる所(会津や四国だそうです)を探して材料を入手しているということでした。もちろん男性用もあります。

 

5.人気の右近(うこん)下駄

最近は若い人が浴衣に合わせて右近下駄を履いている姿をよく目にします。

右近下駄は草履の形の下駄です。今回も「陽雅堂」さんだけでなく、鎌倉彫の下駄を最初に販売した店「和歌美屋」さんのご主人も、”最近は右近の下駄が良く売れます”と話していました。

_MG_0012

_MG_0257

_MG_0774

いずれも鎌倉彫の右近下駄

以前は、若い人が履くのは二枚歯の下駄(駒下駄・女物は芳町ともいいます)で、右近は中年以降の女性の履物だと私は思っていました。

でも今は違うようです。高さがなく、裏に滑り止めスポンジが貼られているので安定感があり歩きやすい右近下駄、これからは若者用の履物になっていくのかもしれません。

鎌倉彫の右近下駄はインターネットで探すこともできます。(リンク:履き物専門店「やまと」Amazon.co.jp

鎌倉彫が施された下駄は、彫りの部分が適度に足にあたり気持ちが良いものです。そして滑りにくいので歩きやすいです。鎌倉に行く機会があったら、ぜひお店をのぞいてみて下さい。

-履き物
-, , , , , , , ,

4
0
Would love your thoughts, please comment.x
()
x