今日は羽織について、袖丈に注目しながら考えます。
1.羽織の役割
以前、数回にわたって羽織を取り上げたたことがあります。(2015年1月18日~2月14日の記事)
その時にも少しふれましたが、現在の羽織は、道行きコートのような「防寒着」として、又はお洒落を演出する「羽織りもの」としての役割が主で、正式な場では着ないカジュアルなものとされています。
羽織が時々直面する問題
気楽なアイテムとしての羽織ですが、時々困ることがあります。
きものの袖丈と羽織の袖丈が合わないことがあるのです。
2.羽織ときもの、理想的な袖丈寸法
羽織を仕立てる時は、きものの袖丈より1~2cm控えるのが良いとされています。
ぴったり合うときちんとした印象になります。
以下に例をあげてみます。
①黒羽織
昔は紋付き黒羽織を着ると略礼装になったので、誰でもきものに合わせた羽織を持っていました。
法事に着た母の紋付きの着物と黒羽織。
②縫い紋付き羽織
義母が遺した一つ紋の羽織
小紋のきものと羽織は義母の自作。袖丈もぴったり合っています。
このように自分の物として同時期に作った物はきれいに合いますが、若い頃の物や譲り受けた物ではなかなかそうはいきません。
3.きものの袖丈が長いとき
これは私によく起こることです。自分の若い頃の着物に母の羽織を着ると、10cmほど着物の袖が余ってしまいます。
でも気にせず袖を折って着ています。
袖の中は膨らんでいます。
後ろから見ると「ふり*」は分厚くなっています。
*ふり…袖付け側、袖下の開いた部分のこと。
袖が重い感じにはなりますが、袖が飛び出ることはありません。
4.羽織の袖丈が長いとき
これがやっかいな問題です。
①袖丈がほぼ同じ場合
きものの袖丈47.5cm
羽織の袖丈47.7cm
ほぼ同じ丈なのですが、ふりが出ていることがわかります。きものと羽織は対照的な色を合わせることが多いので、わずかに出ただけでも目立ってしまいます。
②差が大きい場合
きものの袖丈…47.5cm
羽織の袖丈…55cm
母のきものに私の古い羽織を着ると、こうなってしまいます。
5.解決策
私が実践している方法は2つあります。
A.羽織のふりを縫い留める
B.羽織の袖丈を短くする
この2通りです。以下に例をあげてみます。
A.羽織のふりを縫い留める
↓ ↓ ↓
きものの袖が飛び出ない位置まで(7cm)縫います。
格好は良くありませんが、きものの袖が飛び出すことを防げます。
比較するため右袖だけ縫い留めてみました。着物が出ている左袖に目がいきます。軽く縫うだけなので、袖丈が合うきものを着る場合はすぐほどくことができます。
きものの袖丈49cm
羽織の袖丈50cm
絞りの袖は実際の長さよりも垂れる感じになるので以前からこのように8cmほど縫って着ています。
柔らかい生地の羽織ですと着てしまえばふりは内側に隠れて目立ちません。
B.羽織の袖丈を短くする
この羽織の袖をほどかずに直す方法です。(54cmの袖丈を46cmに直します)
『昔きもののレッスン十二ヶ月』別冊太陽(2003年)を参考にしています。
①羽織の袖を裏返して平らにし、出来上がり寸法より2mm外側にしるしを付け待ち針をうちます
この羽織は生地が厚いちりめんなので平縫いはできません。「半返し縫い*」をしたらうまくいきました。
*半返し縫い…ひと針進んで半針返しながら縫う縫い方
半返し縫いの裏はこうなります。
このように「くけ」ました。表地まで縫わないように注意します。
少し面倒ですが、Aの方法よりすっきり仕上がります。
以上のように、カジュアルな羽織だからこそ、合わない袖丈でも少しだけ手を加えて気楽に着れば良いのだと思います。
きもの姿に明るさや深みを与える羽織は、着る人だけでなく見るほうも楽しいものです。皆さんももっと羽織を楽しんで下さいね!