前回に続いて「みかわち焼き」のお話です。
親子三代の展示会で分かりやすく解説してくれた若手職人(作家)は、「みかわち焼き」を全国に紹介しようと活動中です。
1.若手作家 中里彰志(なかざとあきし)さん
①経歴
平成9年 中里月度務(つとむ)の長男として生まれる
平成28年 有田工業高校デザイン科卒業後、有田窯業技術センターにて技術研修
平成30年 メイド・イン・ジャパン・プロジェクト株式会社 入社
令和2年 祖父 勝歳、父 月度務に師事
(展示パネルより抜粋)
月度務さんの息子の彰志(あきし)さんは25歳。
子供の頃から父の手伝いをしていたそうですが、令和2年から正式に祖父と父に師事し、修業を積んでいます。
昨年は全国伝統工芸品公募展で特選に選ばれるなど、次世代をになう期待の若手です。
また、ユーチューブを活用してみかわち焼を紹介し、さまざまな挑戦の様子を楽しく解説しています。
私がおすすめする動画はこちら。みかわち焼きのことがよくわかります。
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こちらは楽しい動画
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②作品
染付模様が斜めに入っていることで料理が映えそうです。
次第に麻の葉模様が細かくなっている「丸深取鉢」、柄違いで揃えると食卓が華やかになりそうです。
明るい青海波の盛り皿です。
今回の記念に可愛らしい豆鉢を購入しました。
柔らかなフォルムの器にキリッとした「平戸松山」の窯印です。
③展示会の感想
- みかわち焼の磁器の白さと染付の藍のコントラストがとても美しいと思いました。
- みかわち焼きは父から息子へと世襲によって受け継がれている技術だということが分かり、伝統の重みを感じました。
- 平戸藩の御用窯として約400年の歴史を誇る平戸松山窯ですが、中里さん親子の「工芸品だけでなく現代的で日常に使えそうな器を作ろう」という意気込みを感じました。
- 唐子の表情は描く人によって少し変わるようです。唐子の勉強中だという彰志さんの作品が楽しみです。
2.昔の唐子のうつわ
次に、友人が所有する古いみかわち焼きの唐子の器を紹介します。お祖父様からお父様へ受け継がれたものを現在は彼女が引き継いで大切にしています。
お祖父様は明治17年生まれの方です。形見の器の写真を送っていただきました。
①砂糖入れ(五人唐子)
「和敬」の文字とお祖父様のサインが……。
偉業を成し、茶人でもあったお祖父様の信念が器に遺されています。
②湯呑(五人唐子)
平戸産 三川内 という窯印があります。
③徳利(七人唐子)
このように松の木の下に牡丹が咲き乱れ、唐子が蝶と戯れる、という構図が唐子絵の定番です。
幸福を感じさせる吉祥文様ですね。
横顔の唐子がちょっと大人びていて面白いです。
④花瓶(唐子11人)
この面には唐子が三人
こちらも三人
この面では七人の唐子が見えます。
花瓶は置いた状態で見るので唐子の数も色々ですが、実際には11人描かれているそうです。
唐子の表情に癒やされます。
⑤茶碗(七人唐子)
これは卵殻手(らんかくで)というものです。
江戸時代からの高度な技術によるもので、光を通すほどの極薄手の磁器です。
昔の日本人は、作り手も使う側も繊細だったのだなあ、と感心します。
以上が友人秘蔵のお宝でした。私のブログを読んで写真を送ってくれた友人に感謝です!!
*補足*
卵殻手の技術はその後途絶えてしまったのですが、最近再現がなされたようです。
△卵殻手コーヒー碗皿(写真:「みかわち焼き窯場・窯元歩き 公式ガイド 皿山三昧」より)
平戸藤祥五光窯(ひらど とうしょうごこうがま)の現代の卵殻手作品です。
きものとは離れた話題になってしまいましたが、2回にわたり平戸のみかわち焼きを取り上げました。手間と時間をかけて丁寧に作られる器は着物と同じですね。
みかわち焼きの技術の継承と今後のさらなる発展を期待したいです。