コーディネートに悩んでいた民芸調の渋い着物に、思い切ってドレッシーな絹レースの帯を合わせてみました。
素材のギャップの面白さがねらいです。
1.難しい郡上紬(ぐじょうつむぎ)のコーデ
①横段模様の紬
郡上紬は岐阜県郡上八幡で織られる紬です。
郡上紬は、たて糸は玉繭から引いた節のある玉糸を、よこ糸には良質な春蚕(はるご・しゅんさん)が作った春繭の本真綿を手でつむいだ糸を使って作られます。
柔らかく、温かみがあるのが特徴です。
こちらでも取り上げています。
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草木染の多色の糸で織られた横段模様のきものは素朴な味わいが魅力ですが、コーディネイトが難しいと感じることもあります。
昭和時代、普段着としての紬には赤や臙脂(えんじ)色の帯を合わせるのが定番でしたが、現代は紬がおしゃれ着になり外出用に格上げされたため、合わせる帯の範囲も広がって、迷うことが多くなりました。
②織りの着物には染め帯?
一般的に、「紬などの織りの着物には染め帯を、染めの着物には織りの帯を合わせるのが良い」といわれます。
それは、きものとは反対に、帯は織りのものの方が格が上になるからです。
ですから、フォーマルな染めの着物である振袖、留袖、訪問着などには唐織やつづれ織りなどの華やかで格調高い織りの袋帯を合わせます。
けれども織り帯の中には名古屋帯もあり、博多織やカジュアルな紬の帯もあるので、織りの着物には必ず染帯でなければ、ということはありません。
今までの郡上紬と帯の取り合わせを振り返ってみたら、素朴な紬を少しでもお洒落な雰囲気で着ようと、織りの帯を合わせていることに気が付きました。
③袷の郡上紬のコーディネイト
染め帯
織り帯
*すくい織……綴れ織りに似た技法で、多くは紬糸を使って織ります。木製の杼(ひ)という織機用具によこ糸を通して、たて糸をすくいながら織っていきます。
多色の糸で織り上げられた郡上紬には、染め帯より格上の織り帯のほうがしっくり合うような気がしています。
④単衣のコーディネイト
単衣の郡上紬はグレー系の横段模様です。
今まではこのように半幅帯でごまかしていましたが、今回はお太鼓できちんと着用したいと思い、レースの帯を試してみました。
2.レースの帯
①寿光織について
今回使用する帯は、以前ご紹介した「寿光織(じゅこうおり)」という白生地ブランドのものです。(現在は作られていないようです)
寿光織のレースは長襦袢や道行コートとして着心地の良い生地でした。
長襦袢
軽さとエレガントな見た目によって、レースの襦袢やコートを着用すると気分が上がる気がします。
②ポップな色の袋帯
レースの袋帯です。
表地は透けたレースですが、
中に薄い帯芯が入っているので透け感はありません。
裏地は木綿で柔らかい洒落袋(しゃれふくろ)帯です。
レースと言っても裏地と帯芯付きなので、夏帯としては重いです。帯芯入りの麻の染帯と同じくらいなので、6月の単衣のきものに合います。
若い頃は赤系の単衣きものにワンポイントとしてこの帯を着用していました。(この時代、未婚女性のカジュアルきものは赤や朱、ピンクが主流でした)
こんなポップな色の帯ですが、レースは母のきものとお揃いでした。
3.紬とレースのギャップを楽しむ
①お太鼓結びで
今までは半幅帯を合わせていた単衣ですが、お太鼓結びできちんとした雰囲気にしてみました。
もう締めることはないと思っていた帯の明るさを、グレー系の段模様が吸収してくれた気がします。
着物の模様に緑色が入っていることも助けになったようです。
②帯揚げと帯留めなど
帯揚げは着物と帯をつなぐ役目として水色を選びました。
ピッタリ色を合わせると着物ではかえって野暮ったくなることがあるので、少しずらす工夫も必要です。
帯留めは翡翠のペンダントです。ペンダントの止め金具はそのままで糸で止めてあります。
古い更紗の布で作ったハンドバッグと、奈良麻の唐草模様のサブバッグです。
着物や持ち物は民芸調ですが、帯周りによって全体が少しおしゃれな雰囲気になりました。
地味な色と明るい色、素朴な紬とドレッシーなレースの帯……たまにはこんな組み合わせも面白いと思いました。
この装いで6月に「竹屋町縫い」という珍しい刺繍の展示会に行きました。
続きは次回に……。