浴衣用の半幅帯を結ぶときは前で結んで後ろに回すことが多いですね。
今回は前で結ぶ「銀座結び」を、前結び用の帯板を使ってやってみました。
1.くるっと帯芯
①購入理由
- 前結びで色々な結び方を試してみたかった
- 古い「引き抜き帯」*も、この帯板なら生地を傷めずに後ろに回せると思った
- 腕が痛くて後ろで結べない時が来たら便利に使えそう
*引き抜き帯…アンティークの帯で、たれの端まで抜いてひと結びするのではなく、たれ部分が残るように引き抜いて結ぶ帯のこと。その結び方をしないと、お太鼓の柄が逆さまになってしまうものです。
②届く
長い帯板が届きました。「くるっと帯芯」という商品名です。
帯芯というと九寸帯を仕立てるときに中に入れる「芯」をイメージしますが、帯板、前板、のことです。
確かに私も若い頃から帯板のことを「前芯」と言っています。「芯」になる意味としては合っていますね。
③素材、サイズ、使い方など
素材
穴のあいたポリエチレン製です
日本製の帯板です
サイズ
△ 幅12.7cm 長さ99cm、対応サイズ:62~97cm、重さ86g
丸めると存在感がありますが、普通の長さの前板は81gでしたので、長さの割には軽くできています。
折り畳めないので収納が大変?…ということで、私はトルソー(ボディ)に巻いています。
使い方
斜めにカットされた帯芯の端が上で揃うように巻いて、マジックテープを止めます。そうするとウエストがすぼまるように装着でき、美しいシルエットになります。(商品の説明書より抜粋)
帯を前で結び、帯板ごと後ろに廻すと出来上がります。後ろ手で結ぶより簡単に帯結びができ、着物、浴衣どちらでも使用出来ます。
2.実際に使って浴衣を着用
①雀柄の長板中形(ながいたちゅうがた)の浴衣に
長板中形の浴衣に銀座結びで夏の名古屋帯を締めてみました。
柄が若向きなので一度は娘に譲りましたが、また着てみました。
長板中形は、少し特徴がある浴衣です……
②長板中形について
江戸時代から続く、型紙を使って藍で染める染色技法で、「江戸中形」、「長板本染中形」ともいいます。
長い板に木綿の白生地を張り付けて染め上げます。
他の型染めと異なるのは、型付けを片面だけでなく、生地を裏返してもう一度板に張り、表の文様に合わせて型付けをする点です。
そうすることで白場を真っ白に染め残して文様をくっきりさせることができます。
また表裏の両面を使えるということは、縫い直しが出来て長く着られるということなので、昔の日本人にとっては大変都合の良いことだった思います。
『日本の手わざ5 長板中形』に、制作の様子などの写真がありましたのでご紹介します。
△長板(約5m)(『日本の手わざ5 長板中形』源流社より)
△型紙(前掲書より)
二枚の型紙を使って精巧な文様を染める場合もあります。
△糊置き(前掲書より)
白生地に型紙を置いてヘラで糊をつけていきます。型紙を送りながら板に張った生地すべてに糊置きします。
この作業を裏にも同じように行います。
表と裏の柄合わせがきちんとできていることを「裏が返る」といい、長板中形の真骨頂といわれているそうです。
△染色(前掲書より)
△二枚の型紙を使って染め上げたもの(前掲書より)
こちらでも少し取り上げています。
↓
娘が長板中形の浴衣に半幅帯を合わせて
古い浴衣ですが、一般の浴衣より色褪せが少ないので長く着ることが出来ています。
③紗織りの帯で
帯は絹地の紗織り名古屋帯です。
紗織りはからみ織りの一種で、隙間が空いているので涼しくて軽いです。
織りは粗いですが、ごわつき感がなく柔らかい帯です。
くるっと帯芯で胴を一周巻いていても、帯が軽いのであまり気になりませんでした。
<綿ちぢみの浴衣>+<紗織りの帯>では滑りが悪くて帯を回しにくいので、くるっと帯芯が効果を発揮しました。
夏らしいレースの帯締めを合わせています。
3.「くるっと帯芯」使用後の感想
①良かった点
- 今までは帯を回すときに気合を入れていたが、今回は簡単に回すことが出来た
- 摩擦が大きい着物と帯の場合は特に楽だと思った
- ぐるっと一周帯芯があるので安定感がある
- 背中側の帯芯は体に当たることはなかった
- 今後、腕が痛くて後ろに回せないときなどに役立つと思った
- いろいろな変わり結びが試しやすいので、練習用に便利だと思う
②気になる点
- カッチリと帯が締められるが、リラックスはしにくいと思う
- 背中まで帯芯があるので普通の前板より暑い
- 長くてかさばるので収納に不便
③今後は浴衣以外にも
使い方は簡単だったので、これからは普通の着物に変わり結びをするときに使用してみようと思いました。
次回は「くるっと帯芯」を使った銀座結びのやり方を、詳しくご紹介します。