今日は独特の手触りと締め心地の帯を紹介します。
組帯(くみおび)に近いものと思われます。
1.組帯とは
①千年の歴史がある組物(組紐)
組帯は本来、古代、男子が礼服(らいふく)に用いた帯のことをさします。
細い絹のより糸を平らに組み、先には総(ふさ)が付いていました。
現代では「組紐(くみひも)」として帯締めや飾り紐で目にするものです。
それらの伝統技術を用いて着物用の帯にしたものを「組帯」とか、「組織り帯」というようです。
また、組紐は「織物」や「編物」と同列に、「組物(くみもの)」という言い方をします。
△奈良時代の礼服(らいふく)(『新訂国語総覧』京都書房・2010年より)
即位・朝賀などの大儀に着用した五位以上の大礼服。
組帯は斜め格子に打った平組の帯で、「条帯」または「綬(じゅ)」と言います。
△正倉院の宝物 「条帯」(平組帯)(長さ132.2cm 幅4.7cm)(『太陽臨時増刊 正倉院の宝物』平凡社 1981年発行 より)
正倉院の宝物の中にはこのような組帯や組紐、雑帯が数多く収蔵されているようです。
②不思議な帯
母が着用していた頃、私はこれがどういう帯なのか、よくわかりませんでした。
金糸銀糸の入った華やかな袋帯とは違いシンプルなのですが、絹の光沢と立体感があります。
カジュアルに見えるのに格を感じる不思議な帯でした。
後に譲り受けたこの帯を手にとって見て、なんだか帯締めみたいな帯だなあ…と思いました。
③帯をよく見る
織物は経糸と緯糸が90度の角度で交差しますが、組物は2本の糸が縦方向に対して、45度の角度で交差します。
帯締めはこのように、かっちりと斜めに交差して組まれています。
こちらの帯も斜めに交差しているようにみえます。
けれども、よく見ると、よこ方向の糸があり、そこに斜めに2本の糸が交差しているのです。
これは正確には組み織りとは言わないのかもしれません。(詳しい方に教えていただけたら嬉しいです。)
2.着用例
二枚の趣の違うきものに合わせてみました。
この帯は、帯芯のない八寸帯なので、単衣のきものによく合いそうです。
①山繭のきものに
ほぼ無地にみえる山繭紬*の単衣に合わせました。
*山繭紬……天蚕(ヤママユガ)の繭から採った糸を用いて織った紬。光沢があり、普通の絹糸と交織して染めると独特の模様が出ます。
山繭部分は染料が吸着しにくいため、その差によって濃淡の柄ができています。
6月中旬(東京の気温30℃)に着用しました。
夏の薄物でもいいくらいの気温なので、暑苦しく見えないように薄色の取り合わせです。
帯締めも細い夏用にしています。
②紙布のきものに
こちらは気温25℃の6月初旬に着用。裾模様のある紙布のきものに合わせました。
こっくりした色合いのきものなので帯が引き立ちます。
帯周りは小物で明るくしました。
素朴な味わいの紙布の着物なので、帯の光沢が、より感じられるようです。
この着物については、こちらで取り上げています。
草履の鼻緒も組紐です。
この草履については、こちらで取り上げています。
③着用の感想
- 少し重みがありますが、体に巻くと柔らかく、楽に感じました。
- バイヤス組織なのでほどよく伸びてキュッと締まる感じがありました。
- シワや折り目が付かず、扱いやすい帯だと思いました。
- 合わせるきものによって、カジュアルにも少しよそ行きにもなると思いました。
3.道明の組紐ネクタイ
組紐は帯締めや鼻緒だけではなく、ネクタイもあります。
ちょっと古い組紐のネクタイです。
よく締まりそうです。
1652年創業の<有職組紐・道明>のものです。
これは昭和~平成はじめ頃のものですが、道明は現在もネクタイ、ボウタイを飛鳥・奈良時代から伝わる安田組(あんだぐみ)という組み方で手組みにより制作しています。
△道明 最近のネクタイとボウタイ(『早稲田学報』2019年8月号より)
ネクタイは職人一人が丸2日かけて組むそうです。
道明の10代目・道明葵一郎さんは、世界中の人に使ってもらえる組紐製品を作りたいと、新ブランド「DOMYO」を2015年に立ち上げ、毎年アクセサリーなどを含めた新作コレクションを発表しています。
https://domyo.co.jp/
DOMYOウェブサイト
今日は組紐、組帯を取り上げました。
千年の歴史がある組紐は、現代の着物にとっても欠かせない存在です。
組帯調の帯は、いろいろな素材や柄の着物に合わせられそうなので、これからも活用していこうと思います。