先日、紗の道行コートを作りました。若い頃の着物からリメイクしたものですが、お気に入りの一点になりました。
ご紹介します。
1.派手な紗のきもの
①昭和の夏きもの
私が若かった昭和50年代、結婚前の若い女性が着るきものの色は、「思いっきり派手!」でした。人目を引くような赤や朱を基調としていたように思います。
ですから、着る機会の多い袷のきものはまだ良いのですが、夏の薄物はあまり着ないまま年月が過ぎるので、あっという間に派手で着られなくなってしまうのです。
そのうちの一枚がこれです。
秋草の文様ですが、赤が主張していて浴衣のように派手な柄です。
帯もバッグも草履もみな赤系です。洋服は地味な色が好みだった私ですが、当時は「若者のきものはこういう物」だと信じて、呉服屋さんや母のすすめたものを着ていました。
この紗のきものは、生地がしっかりしていて、気持ちのいいシャリ感が魅力でした。
しかし娘にも派手になってしまい、がっかりしながら眺めていたとき、ふと「そうだ、道行コート!」と思ったのです。
②紗のコート
私にとって紗のコートといえば、毎年活躍している雨コートです。
軽くて風通しも良いので気に入っています。持ち歩くのも苦になりません。生地に撥水加工を施してあるので、大雨以外にはこれを着ています。
透け感があり、暗いイメージではないのですが、もとは夏の弔事用だと思います。丈が長いせいか、ちりよけコートとしては着たことがありません。
今回の紗のきものは、目引き染めで赤を抑えればコートとして復活できるかもしれません。
少し明るい塵除けにできたら良いと思いました。
2.目引き染めでリメイク
①試し染め
青系の色になるよう希望したので、まず、薄いブルーを掛けてみたそうです。
色が薄いため、赤い部分がまだ目立っています。
そこで、この方向で濃くしていき、赤の柄がうるさくならない程度に染めてもらうようにお願いしました。
目引き染めでは、柄が消えかかるまで濃くすると、ムラのようになり「汚い感じ」になってしまうからです。
色見本の<1336>でお願いしました。
②出来上がり
このように出来上がりました。
きもののときと同じ場所に柄が出ています。
布が重ならない部分は透けています。
文様はしっかり残っていますが、一見すると青い道行コートなので、落ち着いた雰囲気のものに生まれ変わりました。
3.着てみる
9月16日、柔らかものの単衣の上に着ました。(最高気温27℃)
日光のもとでは、青色が明るく感じます。
後ろは帯が透けて見えます。
着物からコートに変身しても、サラッとした着心地は以前のままでした。
4.紗のコートはいつ着るか
①紗とは
生糸を用いた搦(から)み織りの一つで、二本のたて糸でよこ糸一本ずつをからめて織り上げていきます。
織り目が粗くて薄いので、盛夏のきものになります。
絽以上に透け感があり、絽より涼しいですが、カジュアルな場への着用に向いています。
紗はこのように透け感が強く、肌触りもサラサラしています。夏の長襦袢にしても着心地が良いです。
②コートの場合
コートや羽織になると、紗の立場は少し変わります。着用期間がかなり広がり、5月から9月頃まで着られるからです。
紗のコートは、夏にあらたまった場所へきものを着て行くときの塵除けとしてはもちろんですが、5月から6月、そして9月の単衣の時期に役立ちます。
さらに、4月や10月の気温が高い日にも着用可能だと思います。
その時期は薄手の大判のショールを塵除けにしてもよいですが、コートを着るほうが動きやすく着物のためにも安心です。
手放すところだった盛夏のきものは、こうして私のもとに留まることになりました。