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バイセルのきもの買取CM「5年着てないならもう着ない」を考える

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5年着てないならもう着ない――

着物買取業者のCMで流れるこの言葉、皆さんも1度は耳にしたことがあるはずです。
しかし、本当に5年着てないきものはもう着ないのでしょうか?
本当に処分してよいのでしょうか……?

今日はきものを着ていない人にも分かりやすく、実例や整理のポイントを交えながら「5年着てないならもう着ない」について考えます。

1.いろいろな受け取り方

この言葉はきものを着る人、着ない人、それぞれ状況は違っても、バイセルのこのCMは、多くの女性たちに強い印象を与えていると思います。

①きものを着る人の受け取り方

「え~そんなことありえない! きものには洋服のような流行はないから、5年経っても着られます!」
「こんなCM作った人は誰? 間違っているわ」

と完全否定。それゆえにCMが心に残ります。

②今はきものを着ていない人の受け取り方

「親が着ていたものや自分が若い頃着ていたものが残っているけれど、場所をとって困る」
「確かに自分は5年以上着ていないのだから、CMの言う通り処分すべきなのかもしれない……」

と共感します。そして買取業者に依頼してみよう、という気持ちになります。

どちらもCM製作者の狙い通りではないでしょうか?
とにかくインパクトのある宣伝文句だと思いました。

今日は、この先きものを着るつもりがない人、このCMがきっかけできものを手放そうと思った人に少しお伝えしたいことがあります。

 

2.今はきものを着ていない人へ

①昔の絹は良質

正絹のきものの場合、昔のもののほうが質が良いとよく言われます。

それは蚕、繭の質がそもそも昔と違っているからで、現在流通している絹のうち、国産の繭から作られているのは1%に満たないそうです。

デザインは別として、あなたが今持っている絹の着物と同じ質のものを新しく購入しようとしたら、大変高額なものになる可能性が高いのです。

作り手の思いが込められたきもの一枚一枚を、もう一度手にとってじっくり見てほしいと思います。

②誰かに着てもらう方法はありませんか?

家族や親戚に

今は家族や親戚に着る人がいなくても、将来子供や孫や誰かが着る日があるかもしれません。

きものに興味がなかった娘さんが急に着たいと言うようになった、という話もよく耳にします。

自分が好きなものだけでもいいので、手元に残しておくのはいかがでしょうか?

きものは保存状態によっては50年経ったものでも古さを感じさせません。人間の加齢とは比べものにならないほど着物は美しさを保てるものなのです。

友人に

もしも、あなたに着物好きの友人がいるなら、手放す前に声を掛けてみてください。

きものは直接肌に触れずに着るものなので、洋服の古着とは違います。

友人が喜んで着てくれるのなら、知らない人の手に渡るより満足感を得られることもあります。

③もう一度自分で着る方法もあります

何と言っても私のおすすめは自分が着ることです。

派手になって着られないと思うものでも、染め直しなどで着用可能になることがあります。

お気に入りのきものや思い出があるものだったら、少し費用がかかっても挑戦する価値はあります。

次の項目でご紹介しましょう。

 

3.リメイクすれば着られるか考える

①染め直しの例

無地のきものは色を抜いてから染めるので、全く違う雰囲気になります。

無地の縮緬

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△10代の頃着用

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△1回めの染め直し(20~30代に着用)

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△2回めの染め直し(50代)

好みの柄を描いてもらいました。

無地のお召

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△20~30代に着用

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△染め直して飛び柄の小紋に(50代)

②目引き染めの例

色を抜かず、上から色を掛けて地味にする方法です。

色大島

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△10~30代に着用

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△50代

夏のきもの

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△絽の小紋

 

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△紗の着物からコートへ

これらはいずれも20年以上着ていなかったものですが、再び着られるようになりました。

これらのリメイクに関してはこちらで紹介しています。

③友人の例

友人(50代前半)がお母様の若い頃の着物を蘇らせました(地色を刷毛で染めて地味にしました)。

 

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友人が七五三のお祝いのとき、お母様が着用なさっていたという思い出のきものです。

解いて洗い張りして保存されていたのを遺品整理で発見したそうです。(これは反物を仕立てたように置いて撮影しています)

 

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薄いピンク色の地にはシミがありますが、子供心にとても憧れていた着物なので、今からでもぜひ着たいと思ったそうです。

 

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色見本を参考に呉服屋さんのアドバイスを受けながら、ベージュ系の色で染めることにしました。

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落ち着いた色に仕上がり、友人はお母様の形見が着られるようになりました。

彼女はこれを将来娘さんにも着せたいと言っています。

 

4.きものを整理するときのポイント

きものを整理するにあたって、何が良くて何が着られないのか……などわからないことがたくさん出てきます。

①わからないときは詳しい人に見てもらう

よそゆきと普段着、袷、単衣、夏物などの区別は慣れない人には難しいものです。

できることなら着物に詳しい人に仕分けをしてもらうと整理しやすいです。

そして「これは残しておいたほうが良い……」などのアドバイスをしてもらえると、さらに楽になります。

②サイズが小さいものは直しにくい

(自分のサイズが分かる人の場合)

丈が短く、身幅が狭い着物は譲り受けても着にくいです。

お直しもなかなか難しく、できない場合もあります。どうしても着たいものでなければ、手放してもよいと思います。

③買取への過度な期待はしない

買取業者はすぐにまとめて整理したい場合は便利だと思います。

引き取ってもらえるだけでありがたいと思い、次に着てくれる人に着物を託しましょう。

  • 丈が長いもの
  • 新しいもの
  • 有名作家の作品
  • 有名産地で証紙があるもの

これらの場合は業者が高額で買取をしてくれると言われていますが、それ以外は過度な期待はしないほうが良さそうです。

 

5.未来の自分は誰にもわからない

①好みは変わる

人は年月とともに考え方や好みが変わることがありますが、きものに関しても同じです。

若い頃は素敵だと思っていたデザインや色が、着物を知るにつれてそうでもなくなり、全く違うものに魅力を感じるようになった、という話をよく聞きます。

それは、洋服の感覚で着物を見ていたからかもしれません。

きものの色や意匠は独特なので、洋服ではありえない色の組み合わせもあります。また、きものは基本の形が同じなので、デザイン重視の洋服と違い生地の素材に重きが置かれます。

わたしも、若い頃は気づかなかった渋い着物の魅力や、素材を着る楽しさを知ることができました。

先々「残しておいて良かった!」と思える着物が、今あなたの手元にあるかもしれません。

②ある日突然……

「きものなんて着ない!」と言っていた人が、何かのきっかけで突然着たいと思うようになる……。

この現象は私の周りでもたくさん起こっています。

きっかけはそれぞれ違っても、この現象はもしかするとあなた自身に起こるかもしれないのです。

未来の自分は誰にもわからないものなのです。

 

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