今年の紅葉、皆さんは楽しみましたか?
今日はきものの世界の紅葉(モミジ)を取り上げます。
赤や黄色の紅葉の柄は秋を色濃く表して大変美しいものですね。
その柄を見るだけで実際の景色をイメージさせる力があります。
同じ秋のものでも菊は少し違うようです。
菊はおめでたい「吉祥柄」として、
とくに大輪の花は季節を問わず使える柄といわれています。
又、モミジと同じ形でも緑や青は楓(かえで)になり、初夏らしい柄となりますね。
① モミジの夏帯
紗の夏帯です。
鮮やかな赤のモミジと白(銀)色のモミジです。
何も気にせず7、8月に使っていました。
夏の初めは楓のつもりで、夏の終わりにはモミジのつもりで締めてきましたが、
よく考えると‘流水にモミジ’は典型的な秋の柄*です。
*「流水にモミジ」…竜田川文様という。
和歌「ちはやぶる 神代もきかず竜田川 からくれないに 水くくるとは」(在原業平)から
秋の季節を先取りして締める‘秋柄の夏帯’だったのだと今更ながら気付きました。
レースのきもの(寿光織という物)に合わせて7月に着た時のもの。
②絽紬(ろつむぎ)の小紋柄モミジ
色々な柄の中にポツンとモミジが…。
季節を問わない春秋(しゅんじゅう)柄。
夏ものの絽目が入っていますが、地厚なので若い頃、6月や9月に着ていました。
③印象が薄い色留袖のモミジ
相良縫い*で、モミジを描いています。
松だけが強調されているようで、あまりモミジには目が行きません。
*「相良縫い」…糸で結び玉を作り模様を描いていく刺繍(フランス刺繍のフレンチナッツ)
④中振袖のモミジ
振袖らしく、季節を問わない柄です。
⑤「絽刺し」*のモミジ
色は青楓のようですが、背景が秋色なので春、秋どちらともとれる柄です。
下前部分なので、着てしまうとほとんど見えないのが残念。
*絽刺し(ろざし)…専用の三本絽の絹織地を絹糸で刺し埋めてゆく日本刺繍。
完成品をアップリケのように着物に縫い付けます。
冒頭のミニバッグと、このきものの絽刺しは、専門家ではなく、趣味で絽刺しをなさっていた方(故人)に作って頂いたものです。
⑥吹き寄せ柄*のモミジ
*「吹き寄せ柄」とは…モミジ、銀杏、松葉、椎などが風に吹き寄せられた様子を描いた柄
縮緬生地の帯です。
秋の終わりのモミジですね。
⑦この秋着たモミジのきもの
(11月初旬着用)
母が20~30代に着ていたお召し*のきもの。
*「お召し」…(御召縮緬)先染めの糸を用いた平織りの織物。
徳川家斉が好んだことから「御召し」といわれるようになりました。
この古いきものに関しては次回また取り上げたいと思います。