今日は夏の帯の素材を取り上げます。
夏の帯は着物と同じ紗や絽のほか、羅(ら)や自然布といわれる科布(しなふ)などもあります。
1.紗
紗の帯は、着物と同じように「搦み(からみ)織り」という手法で織られています。
「搦み織り」は「綟り(もじり)織り」ともいい、ねじった2本のタテ糸をヨコ糸にからませて織ります。
①紗の名古屋帯
カジュアルな木綿の着物に合わせています。
隙間が多いためか、紗の帯は柔らかい仕上がりのものが多いです。太めの糸で織られた粗紗(あらしゃ)といわれるカジュアルな帯です。
②紗の袋帯
絽の着物に合わせた袋帯です。
紗織りの地に銀糸や色糸で織りが重ねられた帯なのであらたまった雰囲気です。
2.絽
①絽綴れ
絽綴(ろつづ)れも「搦み(からみ)織り」の手法で織られます。
硬くハリのあるつづれ地に絽目がはいった帯で、芯の入らない八寸名古屋帯です。
八寸帯といってもカジュアルではなく、金銀糸を用いたものはフォーマルな着物に合わせることができます。
薔薇を織り出した絽綴れの帯です。
この帯は金銀糸入りですが、小紋に合わせています。
こちらの無地の絽綴れは、若い頃の帯です。絽の小紋などに合わせていました。(昔はこの朱赤の帯があれば何にでも合わせられて便利でした。)
②絽塩瀬
絽の帯には絽目のある塩瀬羽二重、「絽塩瀬(ろしおぜ)」とよばれる染め帯があります。
着物の絽と同じ織り方で、中に芯を入れて仕立てるので、夏帯ですがやや厚手です。
絽塩瀬は芯が入っているので、単衣の時期にちょうど良い帯です。
絽目より平織りの部分が多いので、このように染めを施すことができます。
3.羅(ら)
①羅とは
羅は紗や絽と同じ「搦み(からみ)織り」ですが、2本のタテ糸ではなく3本、5本、7本など、奇数のタテ糸同士が互いにからみ合い、織り目が網のように見えるのが特徴です。
そのためふつうの織り機では作れないそうです。
②合わせる着物
羅の帯を上布の着物に合わせています。
羅の帯を絽の着物に合わせています。
羅は透け感が強いですが、この帯はお太鼓部分が二重になっているのでカジュアル過ぎず、柔らかものにも合います。
③拡大
拡大すると紗とは違う複雑さがわかります。
4.しな布(ふ)
①しな布とは
しな布は、まだぬのとも呼ばれる古布で、科木(シナノキ)の樹皮から繊維をとって織ったものです。縄文時代から衣装や装飾品などに利用されてきました。
「しな布」・「科布」・「榀布」といろいろに表記されるようです。
麻絽の着物に合わせています。
縄文人の衣服を思わせる手触りですが、涼感はあります。
越後上布に合わせています。
②しな布の魅力と拡大写真
しな布を拡大すると、樹皮からの繊維であることがよくわかります。
このように野趣に富んだ素朴な帯ですが、着用するとキリッとしてどんな色柄の着物でも落ち着いた装いになります。
初めて触った時はそのザラザラ感にビックリしましたが、軽く霧吹きで湿らせると良いようです。
着用すればするほど締めやすくなり、耐久性抜群の帯だと思いました。
しな布の帯にしな布のクラッチバッグと手提げバッグを持っています。
しな布についてはこちらでも取り上げています。
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※夏の帯はほかにも麻・麻絽・博多織(通年使用可)や夏用紗の博多織・自然布の藤布(ふじふ)や葛布(くずふ)などいろいろな種類があります。
3回にわたって夏のきものや帯の素材を取り上げました。
夏のきものと帯は色や柄だけでなく、素材を楽しめることが魅力だと思います。