今日は40年前の羽織を取り上げます。
1.鶴の羽織
以前にもご紹介した羽織です(2016年1月23日の記事)。鬼しぼちりめん*に紅型(びんがた)染をしたものです。
*鬼しぼちりめん…縮緬(ちりめん)の一種で、しぼ立ちが大きくて粗いもののこと。古代縮緬ともいいます。
生地のアップです。この生地を母は大変気に入って、私に羽織として誂えてくれました。ピンク系の着物にぴったりだったので、お正月によく着ていました。
私が着ていると「いいわねぇ、若かったら着てみたかったわ」と話していました。大きい鶴に大胆な色使い、どこがそんなに好きだったのかはわかりません。でもそう言っていた当時の母は今の私より若く、まだ40代でした。
この後何回か着ましたが、柄が大きいことや長羽織の流行で古臭いイメージになり、しばらくしまいこんでいました。
久しぶりに取り出した「鶴の羽織」、もう一度着てみたくなりました。
2.茶色の着物に合わせる
この大柄の羽織に合わせるきものは何がいいか…と考えた時、思い出したのは母の箪笥の中で見つけた茶色のきものでした。当分着ないだろうと思っていた地味なものですが、合わせてみました。
この着物は山繭紬(やままゆつむぎ)*です。
山繭紬…天蚕(ヤママユガ)の繭から採った糸を用いて織った紬。光沢があり、普通の絹糸と交織して染めると独特の模様が出ます。
綺麗なクリーム色の単衣で母が着ていましたが、その後何回か染め直し、最後にこの色になったものです。
近くで見ると縦に柄があります。
3.羽織とお揃いの帯
帯は羽織とお揃いの帯にしました。母が使用していた帯です。
同じ生地の羽織と帯を一緒に身に付けたのはこれが初めてです。40年経ってもまだゴワゴワする鬼しぼ縮緬が突っ張り、右袖口が持ち上がってしまいました(-.-;)
昭和時代の短い羽織はまるで茶羽織(ちゃばおり)*のようです。
*茶羽織…普通の羽織とは仕立てが異なり、脇に襠(まち)がありません。羽織紐は衿に付けられた共布の紐で、丈は腰くらいまでです。袖丈も短く、家の中でのみ羽織るものです。(2015年2月14日の記事「羽織各部の名称」参照)
でもこの派手な柄で丈が長かったら着るのに抵抗を感じるかもしれません。茶羽織の感覚で気楽に使えばこれからも着られると思いました。
4.白地の紅型羽織
同じく鬼しぼちりめんの紅型染の羽織です。
17年前はまだ赤い帯で着ていました。
今は羽織紐や組み合わせを渋めにして何とか着ていますが、この先も長く着続けられるように、そろそろリメイク(上から色を掛けて地味にする等)してもらおうかと考えています。
5.羽織とお揃いのバッグや草履
この羽織にはお揃いの小さいバッグと草履(3足)があります。
中央の草履は母の物でした。
左は鼻緒と巻き(横の部分)が紫です。右は私が使用していますが、鼻緒と巻きが緑のエナメルです。
草履はビニールコーティングをしなかった為、だいぶ生地が汚れてしまいました。
一番気に入ってよく履いていたオレンジ色の巻きの物は生地に穴があいてしまい、履けなくなりました。巻きと底はまだしっかりしているのに残念です。
布地で草履を作る場合は、ぜひコーティング(ラミネート加工)をしてもらうことをおすすめします。
バッグは40年たっても健在で、まだ使っています。
これらのバッグや複数の草履は、丈の長い反物だったことと、当時短い羽織が流行していたからできたことですが、着物や羽織の余り布を利用して小物を作ることは現代でも可能です。そして小物のほうが頻繁に使えて長く役立つ場合もあるようです。