きものを着る時、まず身に付けるものは足袋ですね。今日は初めて「のびる足袋」を購入したレポートです。
1.愛用してきた足袋
私は子供の頃からずっと同じ足袋屋の足袋を履いていて他には目がいかなかったので、足袋のことは全く気にせずに着物を着てきました。
その足袋屋は母が利用していた「銀座めうがや(ミョウガヤ)」という店でした。めうがやは万治2年(1659年)創業の老舗足袋屋でしたが、平成元年に閉店してしまいました。
慶応3年(1867年)に日本橋総本店から のれん分けした「向島めうがや」は現在も営業中です。
めうがやの足袋で日本舞踊の初舞台
〈3歳…格好悪いですがこれでも立っています〉
〈4歳…お祭りで浴衣を着ていますが、なぜか足袋を履いています。5月5日でまだ肌寒かったのでしょう〉
銀座めうがやが閉店する時にまとめて買った足袋の残り
めうがやの足袋は目のつまった「雲水」という木綿を使い、職人が手作りをしていました。細身、甲(こう)高が特徴で、足を適度に引き締める感じが人気だったそうです。
先が細いめうがやの足袋。昭和時代の細い草履には合っていたのかもしれません。
今はあまり見かけなくなった昭和の細くて小さい草履
めうがやの足袋を履いています。めうがやの綿足袋は足がサポートされるような履き心地で気持ちはよいのですが、たまに足が浮腫んだ時など指に圧迫感を覚えることもありました。
2.のびる足袋とは
ストレッチ素材の足袋にはナイロン100%のものもありますが、一見して化繊だとわかってしまいます。今回は木綿素材にポリウレタンを使用することで伸縮性を持たせている足袋を選んでみました。合わせて冬用ネル裏の足袋も購入しました。
3.のびる足袋3種
①福助・のびる綿キャラコ足袋
表は綿70%、裏は綿98%、底は綿100%です。
裏地には2%のポリウレタンが入っているとのことですが、触った感じは木綿です。
袋から出してそのまま履いてみました。すこしゆるく、シワが気になります。
一度洗ってから履きました。いくらか縮み足にフィットしました。
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②福助・のびる綿キャラコ・ネル裏足袋
表の素材は綿70%で①と同じですが、裏はナイロンとキュプラが50%ずつです。
ネルの裏地です。
袋から出してそのまま履いてみました。少し大きいです。
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③白鳳(玉井商店)・暖か裏起毛・綿のびる足袋
表は綿70%・裏地はナイロン60%・キュプラ40%です。福助のネル裏よりナイロンの割合が多いです。
裏地が福助の足袋より起毛していて暖かそうです。
袋から出してそのまま履いてみました。かなり横幅があり、ぶかぶかしています。特に親指が大きいようです。
一度洗ってから履きました。少し縮みましたが、私には大きかったようです。
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①②③とも、めうがやの足袋に比べると親指が大きく感じましたが、それは足袋の型の個性だと思います。
4.下駄を履いてみる
①②③それぞれの足袋を履き、下駄に合わせてみました。
①福助・のびる綿キャラコ足袋
履き心地は良いですが生地が少し薄い気がしました。
②福助・のびる綿キャラコ・ネル裏足袋
袷の季節はこちらの方がしっかりしていて良さそうです。
③白鳳(玉井商店)・暖か裏起毛・綿のびる足袋
足袋の指先が浮いていて大きすぎることがわかります。綿100%の底なのに、1度の洗濯では滑る感じが残っていました。
①②を長時間履いてみたところ、締め付け感がなく、とても楽でした。今後も出かける場所や状況に合わせて、のびる綿足袋を使用していこうと思いました。(③は結局サイズが合わなかったので、着用を取りやめました。)
5.昔の人は足袋を繕って……
これは母が家で履いていた古い足袋で、細かく繕ってあります。靴下を履かなかった昔の人は、皆このようにしていたのでしょうか。
「繕った足袋の方が暖かく柔らかいので、掃除をするときは楽なのよ」と雑巾がけをしながらそう話していたものです。
繕う時は新しい糸を使うと強すぎて生地を傷めるので、「抜き糸」(きものなどをほどいた時に抜き取った縫い糸)を使うと良いとも言い、裁縫箱の中の小袋には抜き糸が沢山入っていました。
このように足袋を大事にしていた母ですが、亡くなった後箱に残った新しい足袋を見ると、もっと気楽に新しいものを下ろせばよかったのに……と思いました。物を大切に使うということはいろいろな意味で難しいです。