譲り受けた着物の中に細かい模様の上品な反物がありました。
着物に仕立てても着用場面が限られる気がしたので、コートにしようと思いました。
1.細かい模様の綸子(りんず)
①よく見たら亀甲文様
遠目では地味な濃いグレーの反物です。
近くで見ると、紺色の地に六角形の模様がつながっている亀甲(きっこう)文様です。
一辺が3mmほどの小さい六角形で、中に花模様(花菱)があります。
②よく見たら生地は檜垣文(ひがきもん)
さらに布の端を見ると、
檜垣(ひがき)の地紋*がある綸子(りんず)*だということがわかりました。
*檜垣文……ひのきの皮を薄く削って縦横、または斜めに交差させて組んだ垣根を文様化したもの
*綸子……たて糸、よこ糸ともに撚(よ)らない糸を使用して織られた生地で、 光沢があり、地紋が浮き出ているのが特徴
2.亀甲文様について
亀甲文様は日本人に馴染みの深い文様です。
①亀甲文様とは
亀甲文様は亀の甲羅に似ている正六角形の幾何学模様です。
中国では「亀甲占い」が行われており、亀は神の意を伝える能力を持つとされていました。
甲羅の正六角形は途切れのない連続模様で、永遠の繁栄や長寿のシンボルとされ、おめでたい模様の代表格となっています。
参考:成田典子(2014)『テキスタイル用語辞典』テキスタイル・ツリー
△亀甲文様
成田典子(2014)『テキスタイル用語辞典』テキスタイル・ツリーより
繁栄や長寿を表す連続模様は他にも「青海波(せいがいは)」が思い浮かびますが、穏やかな波が無限に広がる青海波文のほうがやさしい雰囲気です。
②いろいろな亀甲文様
亀甲文様は中にスペースがあるので、亀甲の中に花や文字を入れたものがあります。
花菱亀甲(はなびしきっこう)
△花菱亀甲
まわりは亀甲に亀甲を入れ子にした「子持ち亀甲」です。
「花菱(はなびし)」は四弁の花をひし形に意匠化したものです。
十字亀甲
△十字亀甲(じゅうじきっこう)
子持ち亀甲の中に市松状の十字のデザイン。シャープな印象です。
キッコーマン
毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)
△毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)
3つの亀甲を人字形に組み合わせた文様で、毘沙門天(びしゃもんてん)*の着る甲冑(かっちゅう)にこの文様がつけられてきたことからこの名があります。
*毘沙門天…仏教を守護する四天王の一神で、財宝や福徳をもたらしてくれる七福神でもあります。
参考:長崎巌監修、弓岡勝美編(2005)『きもの文様図鑑』平凡社・野村四郎、 北村哲郎(1997)『能を彩る文様の世界』観世流大成版、檜書店
写真:長崎巌監修、弓岡勝美編(2005)『きもの文様図鑑』平凡社より
③亀甲文様の能装束
亀甲文様は能装束にも取り入れられています。
甲冑のようにも見える意匠なので、武将など男性的な役柄に使われるようです。
花菱亀甲
△能「屋島」の装束(後シテは源義経)
旅僧の前に現れた義経の霊が屋島での合戦の様子を語るシーン。
野村四郎、 北村哲郎(1997)『能を彩る文様の世界』観世流大成版、檜書店より
毘沙門亀甲
毘沙門亀甲文は神格的な世界を表現する能に用いられます。
△能「国栖(くず)」の装束(後シテは蔵王権現)
壬申(じんしん)の乱の話。大海人皇子(おおあまのおうじ)を助けた老人は、実は蔵王権現(ざおうごんげん)で、皇子を慰めその御代を祝福します。
野村四郎、 北村哲郎(1997)『能を彩る文様の世界』観世流大成版、檜書店より
3.初めてインターネットで仕立てを頼む
①着物と帯 みやがわ
今までは決まった呉服屋に着物やコートの仕立てを頼んでいましたが、インターネットで検索すると結構たくさんのお店があることがわかりました。
今回は「着物 仕立て&お直し 総合専門店 みやがわ」を選びました。
楽天市場の中で「着物の仕立て」で検索したところ、一番見やすく表示されていたからです。
<手縫いの袷のコート フルオーダーメイド仕立て> というものです。私がお願いしたときは36,300円でした。
この店では「国内手縫い仕立て」もあり、また、単衣のコートの仕立てもあります。
②注文するときに必要なこと
注文する際には、衿の形や寸法、コート丈、裏地に関してなどいくつか答える欄があるので、よく考えながら注文書を完成させて行きます。
呉服屋におまかせして寸法を見てもらうよりは面倒ですが、分からない部分は相談することもできるので大丈夫です。
初めてで少しドキドキしましたが、なんとか注文することができました。
詳細は次回お伝えしたいと思います。