前回に続き亀甲文様の反物をインターネットから注文してコートにしたお話です。
注文するときに知っておきたい衿の形についても取り上げます。
1.コートを注文するときのポイント
①袷か単衣か
袷のコートか、単衣のコートか……。
昔と違って今は、着物のような衣替えの決まりがコートに関してはないようです。
袷の着物の上に単衣のコートでも良いので、生地の厚さやどんな場面で着るかなどを考えてお好みで作ればよいと思います。
②コートの衿の種類
コートは衿の形によって種類が決まります。
道行衿(みちゆきえり)
今はどんな形のコートでも素材がふさわしければフォーマルに着られるようですが、昭和時代はこの道行コートが正式なコートとされていました。
これは道行衿の種類ですが角が丸く仕立てられている「都衿(みやこえり)」です。
仕立てるのが少し難しいものです。
着物衿
衿と衽(おくみ)が付いていて、胸元は着物とよく似た形のコートの衿です。
実はわたしは「着物衿」という分類を知りませんでした。
若い頃はこれらのコートを道中着と言っていたからです。
つまり、四角い衿の「道行コート」か、着物のようなうちあわせの「道中着」というのがコートの大まかな分け方だったと思います。
道中着衿
衽(おくみ)がなく衿が裾まで続いているコート*の衿の形を「道中着衿」というようです。
*本来、道中着のことをコートとは言わないと思うのですが、ここでは便宜上コートということにします。
私は持っていないので、昭和時代の雑誌からご紹介します。
△道中着衿(『美しい着つけと帯結び』主婦の友社 (昭和54年)より)
衿が裾に向かって広くなっています。丈が短いと「うわっぱり」に近い印象です。
千代田衿
衿のライン が斜めになっているのが特徴です。
③丈
丈の長さでコートの雰囲気が変わりますが、最近は長めが主流のようです。長いほうがエレガントで着物をガードする部分も多くなります。
けれども、コート丈は短い方が動きやすく、脱いだときの扱いも楽です。
2.注文して反物を送るまで
①袷のコートを注文
綸子の生地は薄いので袷を選びました。
木綿や紬などは袷にするとかなり暖かく重いコートになるので、単衣のほうが良い場合もあります。
②肩裏(コート裏)
裏生地は正絹です。
お任せのぼかしにするか、柄とぼかしの中から自分で選ぶか、を選択できました。私はお任せのぼかしにしました。
③衿を指定
きものとして着ても良かった反物なので、きものをイメージ出来る「着物衿」を選びました。
④コート丈
丈は次の3つから選べます。
- 七分丈(膝丈)
- 八分丈(膝下)
- ロング(くるぶし丈)
光沢のある生地なので、エレガントに見える八分丈を選びました。
裾までのロング丈(くるぶし丈)は汚れやスレが心配なのでこの生地では適さないと思います。
⑤寸法
寸法は次の3つから選べます。
- 着物サイズに合わせてお仕立て
- お客様ご指定サイズでお仕立て
- 体型から割り出してお仕立て
私は自分のコートの寸法をメモに書いて、反物と一緒に送りました。
自分のコート寸法がわからなくても体型から割り出してくれます。(お店の担当者に電話で相談することもできます)
⑥仕上がり品のたたみ方
たたみ方で料金が変わります。
- 三つ折り 0円
- 二つ折り +660円
二つ折りを希望しました。
⑦反物を送る
送るときの送料はこちらの負担です。
中身が濡れないようにビニール袋に入れ、段ボール箱で送りました。(紙袋でも大丈夫だそうです)
送った翌日、品物が到着したとのメールが来ました。
3.出来上がりまで
①検品、採寸終了のメール
反物を送って10日ほど経ってから検品終了のメールが届きました。寸法の確認のほか、反物と裏地を合わせた写真が添付されていました。
また、「少し保管臭がするので陰干ししてからお仕立てします」とありました。
私も臭いと汚れが気になっていたので、「反物洗い」のオプションを追加してもらいました。
+6,600円ですが、キレイな状態の生地で仕立ててほしいと思ったからです。
②出来上がり
反物を送ってから約2ヶ月後に出来上がり、届きました。
プチプチの緩衝材にくるまれています。
サービスの半衿が添えられていました。
裏地の余り布や反物の端布も一緒です。
反物洗いをしてから仕立てたので、光沢が増したように思います。
③着てみる
音楽会に行くのに着用しました。
コート生地が薄手なので、脱いだときにかさばらないところが良かったです。
八分丈は長いので、着物をカバーしてくれます。
着物の衿にそってコートの衿が重なっているので、角張った道行コートより柔らかな雰囲気になっています。
④感想
汎用性が高い着物衿コート
今回のコートは、まず柔らかものの小紋の着物に合わせましたが、形は道中着ですので、街歩き用のカジュアルな着物に合わせても良いと思います。
そういう点では着物衿のコートは汎用性が高く、面白いものだと感じました。
直接質問するのが大切
はじめはインターネット注文での仕立てに不安がありましたが、今回はうまく出来上がりました。
仕立てに入る前に、寸法や洗いのことで担当の方と直接電話で話すことができたのも良かったと思います。
少しでも疑問や不安を感じたら、メールや電話で質問や相談をすることが大切です。