タンスに仕舞われていた着物、いざ着ようとするとツーンとする刺激臭に鼻をつまんだことはありませんか?
今日は古いきものの脱臭について、タンスや防虫剤による臭いを中心に、室内での陰干しと脱臭炭を使用する方法をご紹介します。
1.臭いの種類は?
譲り受けたきものや、長く箪笥にしまわれていたきものには臭いがついていることがあります。
①カビの臭い
カビの臭いは独特なのですぐわかりますね。たとえ目ではわからなくても、カビ臭ければ着物や帯のどこかにカビが発生しています。
この場合は丸洗いクリーニングを専門店にお願いしたほうがよいです。
確実に取れるかはわかりませんが、かなり良くなります。
また、帯の場合、帯芯がカビてしまうと専門店でも難しい場合があるようです。(帯芯を入れ替えて仕立て直す必要があります。)
②箪笥や防虫剤の臭い
「カビの臭いではないけれど、部屋にかけているとなんだか臭う……」
これは長く収納されていた着物に多いトラブルですね。
今回はこの臭いの対策法を、実例を挙げて考えます。
2.臭いが取れるのを待つ方法
私がまず行う方法は、「気長に陰干しする」ということです。
これはすぐに着たいときは無理です。少なくとも1ヶ月は余裕を持ってほしいです。
①縞の結城紬
義母が遺した箪笥から出てきた縞の結城紬です。
結城紬は昔、ほとんどが縞模様だったそうです。ですから結城紬を扱う産地問屋を縞屋と呼んでいました。
この着物は戦前のものかもしれません。
汚れはなく、カビの臭いもありません。
仕立直したのか、しつけが付いています。
袖口や胴裏は昭和初期によく使われていた紅絹(もみ)が使われ、裾回しは地紋のある紬生地が使われています。
義母は自分で仕立てが出来たので、解いたきものを再利用したのかもしれません。
このように次の誰かが着られるように直され、しまわれていましたが、虫干しとは無縁だったために古い箪笥臭が付いてしまったのでした。
②きものハンガーに吊るす
まず、きものハンガーに掛けて室内に吊るしました。
吊るすことで、どの程度の臭いか実感できます。ひどい場合は、近寄らなくてもその部屋に入っただけで臭います。
日陰の風通しの良いところ、例えば廊下や窓際などに数時間干しておくのも良いかもしれません。
この着物は軽く、型崩れの心配がなさそうなので、2~3日放置しました。
☆注意
きものを干す場合は室内でも紫外線で色焼けするので、蛍光灯や白熱灯の光はNGです。(一般的なLEDなら大丈夫です。)
☆お召の羽織での経験
以前ご紹介したお召の羽織の場合、私はハンガーに掛け、上から大きめの布でホコリよけをして、1ヶ月ほどそのままにしました。
それで臭いはなくなりました。
③たたむ
帯なら吊るしっぱなしでも大丈夫ですが、きものや柔らかい羽織などは型崩れが心配です。(表地と裏地で狂いが生じることがあります。)
そこで、一旦たたみます。
今度は畳んだまま、平置きに近い状態でかけておきます。(ホコリが気になるなら木綿の布をかけてください)
私の場合、使用していない部屋に置きました。電気を消して、通気性を良くしておきました。
この状態でときどき様子を見て、置き方の向きを変えたり、空気にふれるようにしてたたみ直したり、再びハンガーに2~3日吊るしたりします。
このようにして、着物と遊ぶような気持ちで、のんびりと干します。
帯などの取り合わせを考えながらきものを眺めたり、手に取ったりするうちに、文字通り「古臭い」きものでも次第に愛着が出てくるものです。
④1ヶ月半後
臭いはなくなったようです。
袖を通してみても臭いは気になりませんでした。家族にも嗅いでもらい、確認しました。
⑤新しいたとう紙へ
新しいたとう紙に入れて収納します。
けれどもきものの臭いが消えたと感じたら、そのまま箪笥に入れずに、すぐに何回か着て外に出かけ、自然に自分なりの匂いをつけることをおすすめします。(それを着られる季節であれば、の話ですが。)
3.脱臭炭を使う方法
さて、もう一つの方法として、脱臭炭を使ってみようと思います。
着物には最近使い始めたのですが、単純に放置する場合に比べて、短期間での脱臭効果が実感できます。
また、ウールの洋服(ジャケット)の臭い取りに成功したこともあります。
①出雲屋炭八
私が使用している調湿木炭「炭八」押入れタイプです。
文字通り「調湿」木炭のため、脱臭に加えて調湿(湿度を調整する)効果があり、カビ対策としても使えます。
今回は直接着物に巻き付ける方法を採りますが、メーカーによるとタンスの引き出しや通気口のある奥側下部に敷き詰めておくのも良いそうです。
②ナフタリン臭の強いうわっぱりで試す
強い防虫剤臭がするうわっぱりです。(蛍光灯下で撮影したので色が少しおかしいですが、以下の写真と同一のものです。)
たたんで風呂敷の上に置き
上に炭八を置きました。
うわっぱりで炭八をくるむようにして、風呂敷で包みました。
③一週間後
強烈なナフタリン臭がかなり消えて、着られるレベルになりました。
この炭八(脱臭炭)に関しては、また臭いを消したいきものが出てきたら試そうと思います。
4.まとめ
今日はきものの臭い対策を考えました。
専門家に頼む方法以外で、一番経済的なのは「気長に干すこと」です。
脱臭炭に関してはまだ実用期間が短いので断言はできませんが、効果は認められました。
注意すべきは、消臭スプレーは使えないことです。また、洋服に有効なスチームアイロンも縮む可能性があるため着物には危険だと思います。
なお、臭いの取れた縞結城の着用例は次回ご紹介します。