手入れ

絞りのきもののトラブル

投稿日:

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先日、虫干しとたとう紙の交換をした時に、きものにカビのようなものがついているのを発見しました。

1.絞りの小紋

①着用は二年前

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2年前の2月に着たのが最後でした。

②カビ

カビらしきものは袖、衿、上前と広範囲に出ていました。

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△袖口

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△衿

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△上前

いずれも以前着た時には無かったものです。

 

2.原因を考える

①前回の収納

前回の着用後は、いつものように干してからブラシをかけ、点検しながらたたみました。何も問題はなかったので、そのまま元のたとう紙に収納しました。

②カビの原因は?

このきものに関しては気になっていたことが一つありました。しばらくの間<台紙付きのたとう紙>に入っていたことです。

IMG_0351

台紙とは、このような白い厚紙のことです。以前手入れを頼んだお店からきものが戻ってくる時、たとう紙を補強するために入れられたものでした。

簡単には剥がれないように、丁寧に2箇所のりで貼られていました。私が気が付いて剥がすまでに、2,3年は経過していたと思います。

 

IMG_0350

これは、今回のきもののものではありませんが、たとう紙から外した台紙の裏側です。茶色くシミになっています。

このように厚紙は通気性が悪いため、きものが湿気をおびてしまい、カビの原因になったのだと思われます。

台紙を外した時は、すでに目に見えないカビに侵されていたのかもしれません。

 

3.トラブルはもう一つ

①シミ

実はカビ以外にもシミ(黄変)が一つありました。

 

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絞りの白い部分がわずかに茶色になっています。これは以前着用時には気づかなかったのですが、その時の写真を拡大したところ、すでにありました。

古いシミだと思われます。

②洗い張りは難しい

悉皆屋さんに相談したところ、これを落とすのは難しいということでした。

絞りのきものは水に浸けてシミを取ったり、洗い張り(きものをほどいて反物に戻し、洗剤を用いて水洗いすること)をすることができないから、というのがその理由でした。

幸いにも、このシミは着ているとほとんどわからない小さいものだったので、そのままにすることにしました。

③漂白・色掛けでシミを取る

絞りのシミを取る方法が、全くないわけではありません。

以前、たとう紙についてアドバイスをもらったことがある(2018.2.5の記事)、着物クリーニング専門店「ふじぜん」の着物ケア診断士・吉原ひとしさんに聞いてみました。

絞りの白い部分が黄変した場合は、そこだけ漂白し、その後漂白でにじんでしまった周りの色を染めることで元に近い状態に戻すのだそうです。

ただし、きものによってはひどくにじんでしまって復元ができないこともあり、見えない部分で試すなど、かなり慎重な作業が求められるようです。

 

4.絞り染めの特徴

他のきものとは少し違う、絞り染めの工程について調べて見ました。

本項は、『絞り染め大全』安藤宏子著 誠文堂新光社 2013年より画像を引用しつつご紹介します。

①絞り染めの工程

絞り染めのきものは次のように作られます。

・生地仕入れ

・精錬・漂白

・図案作成

・型紙彫り

・絵刷り

・絞り作業

・染色

・糸解き

・仕上げ(湯のし)

【絞り染め工程の様子】

<型彫り>
18060301
下絵を写した型紙にポンチで穴をあける

<絵刷り>
18060302
型紙を布に置き、青花*をつけた刷毛で刷る

*青花(あおばな)…ツユクサの色素を酸で抽出し、和紙に滲み込ませて乾燥させたもの。水で溶いて使う。
水洗いすると簡単に落ちる。

<絞り作業>
「京疋田鹿の子絞り」の場合
(針や器具を使わずに指先だけで作る絞りです)

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布を四つ折りにして

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布の折り山を指先でひねる

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糸を巻き付けて締める

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下から上へ4-5回巻く

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糸留めをして次の鹿の子へ

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布の左から右へ斜め45度にくくっていく

写真はありませんが、この後

・染色作業
・糸解き

が行われます。

糸解きは、絞りの種類によって方法が異なるようですが、布を傷めないよう慎重に行わなければならない作業です。

<湯のし>
18060305

蒸気を絞りの裏から当てながら、縮んだ布を広げるように引っ張って、必要な幅まで伸ばす。
絞りの凹凸が残るように伸ばす。

②絞り染めは水に漬けることができない

このように、糸で絞って防染をしている絞り染めは、糸をほどいてしまうと、もう水に漬けることができません。絞りが伸びてしまうからです。

ですから、洗い張りはできず、「丸洗い(生洗い)」という水ではなく専用の溶剤を使うドライクリーニングを行います。

ドライクリーニングは洗濯機を使ったり、汚れに合わせて手作業できれいにしていく場合があるようです。

ただし、ネットで検索したところ、「絞りも洗い張りします」というお店がありました。

これはおそらく、「洗い」が水洗いではなく、ドライで洗うことを意味するものだと思いますが、いずれにしても、着物をほどいて反物にしてから行うものなので、まずはきものを見せて、どんな方法があるのか相談し、見積もりを出してもらうのが良いと思います。

 

5.手入れ後のきもの

①クリーニングとカビ取り

丸洗いクリーニングは、ほこりやうす汚れ、衿・袖口の化粧品汚れ・皮脂汚れなどが綺麗になります。

今回は、さらに手作業によってカビがすっかり取れました。

全体がきれいになり、手触りもふっくらしたような気がします。

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△袖口

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△衿

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△上前

②頑固なカビに注意

今回はたとう紙交換がきっかけで、きもののカビを早く見つけることができました。

悉皆屋さんによると、繊維の奥までは達していない軽度のカビだったので、上手く取れたとのことでした。

しかし、長年の保管で生えたカビによって着物の染料が落ちてしまうことがあるそうです。

その場合にはカビを落としてから、色掛けの作業をしなければならないそうです。

 

③着たい!

きれいになったきものを見ると、それがたとえ過去に何度も着たものであっても、またすぐに袖を通したくなるものです。

続きは次回に……

 

 



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