テーマのある名古屋帯

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趣味的な帯の中には、テーマを持って描かれたり、刺繍を施された帯があります。最近着用した帯の中からご紹介します。

3種類ありますので、順に取り上げたいと思いますが、それらの共通点は、「かぶりもの」を描いた帯であるということです。

1.三種類のかぶりもの

ここでの「かぶりもの」とは、能の登場人物が頭に載せるもののことです。

①烏帽子(えぼし)
②冠(かんむり)
③鳥兜(とりかぶと)

の三種があり、いずれも帯のお太鼓部分に描かれています。

①烏帽子

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△「二人静(ふたりしずか)」の烏帽子

塩瀬羽二重に描かれています。

②冠

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△「鶴亀(つるかめ)」の冠

金糸の入った織帯に刺繍されたものです。

③鳥兜

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△「富士太鼓(ふじだいこ)」の鳥兜

塩瀬羽二重に描かれています。

 

2.二人静の烏帽子が描かれた帯

①金色烏帽子

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この烏帽子は金色の前折烏帽子(まえおりえぼし)です。

これは以前にもご紹介しましたが(2015.3.14の記事参照)、静御前の舞装束の一部として使用されます。

金色の前折烏帽子は静御前のみに使われることから、<静(しずか)烏帽子>とも呼びます。(能の「吉野静」、「船弁慶」、「二人静」などで使われます。)

この帯は能「二人静」を題材にしており、前部分の柄は能に登場する若菜籠と春の草花やつくしです。

②能「二人静」

<あらすじ>

旧暦1月7日、吉野勝手明神の神職が神社に供える為に若菜摘みを女に命じます。

菜摘み女が若菜を摘んでいるとそこに静御前の霊が現れ、自分の哀しい罪業のため一日経を書いて弔うよう言い残し消えます……。

静御前の霊が乗り移った菜摘み女が、神職の求めに応じ舞を舞い始めると、同じ装束を着た静御前の亡霊が現れ、影のように寄り添いながら二人して吉野山から義経が落ちて行った様子などを舞い、回向を頼んで姿を消すのでした。

シテ(静御前の霊)とツレ(菜摘女)が寸分違わず動くことが理想とされる相舞(あいまい)が見どころの能です。

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△能「二人静」(『能を彩る文様の世界』野村四郎・北村哲郎 共著 檜書店2013年より)

紫地に金糸で織られた長絹(ちょうけん)という装束(二人同じもの)を着て、菜摘の女と静の霊は同じ型で舞います。

一人だけでも充分美しいのに、同じ姿の二人が並ぶと美しさと神秘性は倍になる気がします。

(そういえば若い女性の間で一時期流行した「双子コーデ」も可愛さの倍増をねらったものですよね。)

 

3.二人静の帯 着用例

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烏帽子だけ描かれているなら着用に季節は関係ないですが、梅や若菜籠があることで、私は正月や早春の装いに限って着用しています。

①紅花紬のきものに

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紬のきものと染帯は相性が良く、軽快な装いになります。

中でも無地のような紬と合わせることで季節感のある柄が強調されて、より楽しい着こなしになります。(友人との会話も弾みます♪)

 

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烏帽子に添えられた梅の色に合わせて…

 

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帯揚と帯締をピンク系にしました。私は帯揚と帯締の色を変えることが多いのですが、色を際立たせたい時には同じにしています。

②扇面柄の小紋に

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綸子に扇面文様の小紋に合わせてみました。

この扇面文様はあまり主張しないので、帯の柄は目立つようです。

 

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よく見るといろいろな扇面が重なり合っています。静御前の舞扇だと思って着ています。

 

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帯揚はクリーム色、帯締は若菜に合わせて緑色にしました。

 

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△GINZA SIX 観世能楽堂前にて

やはり能楽堂が似合う帯かもしれません。知らない方に呼び止められ、帯を褒められました。

この日の能は「二人静」ではありませんでした。もし「二人静」の演能があったら、これを締めるかどうか…

私は多分遠慮します。

能をテーマにしていても、やはり合いすぎるのは考えもので勇気が要ります。雰囲気と季節感を楽しむだけで良いと思っています。

 

つづく

 

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