最近、雨コートの下からきものの裾が出ている人を何度か見かけました。
又、道行コート(長めでも着物の裾が15~20cm位出ている)で大雨の中を歩いている人も見かけました。
ポリエステルのきものやガード加工したものなのかもしれませんが、見ていて心配になりました。
今日は雨コートの着方を考えます。
1.二部式かワンピースタイプか
①ずっと雨ならワンピースタイプ
これは好みの差もあるとは思いますが、家を出るときから帰宅まで雨の予報なら私はワンピースタイプのものをおすすめします。
理由は以下の通り。
<着姿がスッキリしている>
重なりがないのでシルエットがきれいです。
<着脱が楽>
出先での脱ぎ着は一枚の方が簡単で、また脱いだあともかさばりません。
左は二部式コートを畳んだ状態。右のワンピースタイプの方がコンパクトになります。
②一部雨の予報なら二部式
「午後からは晴れ!」などという時は裾部分を途中で外したり、出先で降られそうな時は裾だけ携帯したりと、二部式にも良い点があります。
雨コートとして着ていても、雨があがり泥ハネの心配がなければ……
裾を外すと軽快な装いになります。
2.きものの裾をはしょる(端折る)
雨コートを着る前の処理をご紹介します。
雨だからと着丈を短くせずにいつも通りに着ます。
①きものの裾を裏が見えるように持ち上げる
後ろの帯をすっぽり包むように、きものにシワを作らないようにまっすぐはしょります。
②上前の裾を帯に挟む
上前の裾を帯の右上まで持っていき
裾をこのくらい
帯と帯揚の間に挟みます。(クシャッとならないように真っ直ぐ下に差し込む感じです)
③下前の裾も帯に差し込み、きものクリップで留める
下前も同様にはしょり、
きものクリップで留めます。
クリップは帯の左右二箇所で留めれば安心ですが、私は面倒なのでいつも一箇所です。落ちてくることはないようです。
④雨コートを着る
これできものの裾が雨に濡れる心配はありません。
外出先でコートを着る場合
- まず雨コートを羽織り、袖を通してから
- きものの裾を端折ります
この状態ではしょります。
人に背を向けるようにして目立たないところで行えば、わざわざトイレや更衣室にいく必要はありません。長襦袢の裾は本来見えても良いもので、昔は急な雨に降られると、裾をはしょって歩いていました。ですからコートの下で裾をはしょるのは、ごく当たり前の作業なのです。
だからといって堂々とやるのではなく、あくまでも控えめに、動作も小さく美しく!を心がけて下さいね。
3.衿と肩も注意
衿元や肩も濡れる場合があるので、スカーフやショールでカバーすると安心です。
これは撥水加工の風呂敷*です。
コートの衿の中に入れます。
*撥水加工風呂敷…朝倉染布の「ながれ」という超撥水風呂敷です。
2017.6.4の記事でご紹介したものです。
コーティング加工ではないので生地は柔らかく、通気性もあります。
4.大雨の場合
①雨用巻きスカートも活用
これは愛用の雨用巻きスカートです。
晴れの予報でも、突然の雨用にいつも携帯しています。
大雨と強い風で長襦袢も濡れてしまいそうな場合は、裾をはしょってからこの雨用巻きスカートを着用します。
その上から雨コートを着れば、長襦袢を濡らさずに済みます。また、足元の寒さからも守ります。(ただし、胴回りがふくらむので、たっぷりした雨コートの場合に限られるかもしれません)
②袖口スナップ
雨コートの袖の振りから雨が入りきものを濡らしてしまうことがあります。
もとは付いていませんでしたが、二箇所にスナップを付けました。
プラスチック製のスナップです。
半透明で軽いです。コートの生地を傷めないと思います。
③パーテックスのコート
以前にもご紹介しましたが(2015.6.13の記事参照)、私が大雨の時に愛用しているのは、パーテックスの雨コートです。
パーテックスは登山やスポーツ用品として開発された防風性、通気性、撥水性に優れたナイロン素材です。
絹のコートとは風合いが異なりますが、大雨の場合、他のものでは得られない安心感があります。
5.注意点
①裾を踏まないで!
雨コートの着方について考えましたが、最後に、雨コートは丈がたっぷりしているので、階段を上がる時など、裾を踏まないように気をつけて下さい。
常に片手は空けておき、裾を少し持ち上げるようにすると安心です。
②ガード加工について
「きものにパールトーン加工などの撥水加工をすれば泥ハネも大丈夫!」という宣伝を聞いたことがありますが、私が若い頃に着ていた加工済みのきものには泥ハネが付いてしまいました。それ以降私はガード加工はしていません。(今は技術が進歩して大丈夫なのかもしれませんが)
何よりも、ガード加工したきものは洗い張りがしにくいのと、染め直しが難しい(ムラができる)ということをプロの方に聞きました。
短い年月で楽しむきものにはガード加工は有効ですが、長く着用して、染め直したり次の人に譲ったりしたいなら控えた方が良さそうです。
雨でもきものを楽しむには、やはり雨コートが必需品といえそうです。
参考記事
野外/外出先で裾を汚さずにコートを着る方法については、以下の記事で紹介していますので参考にして下さい。