年明け早々山種美術館に行きました。新春にふさわしくHAPPYな気持ちになれる展示会ということで、着物は「初夢」をテーマにしたコーディネートにしました。
1.特別展「HAPPYな日本美術」
①山種美術館とは
東京都渋谷区広尾にある日本画専門の美術館です。
山崎種二(1893-1983・山種証券[現SMBC日興証券]創業者)が個人で集めたコレクションをもとに、1966(昭和41)年、東京・日本橋兜町に日本初の日本画専門美術館として開館しました。
その後、1998(平成10)年に、設備の老朽化に伴い、千代田区三番町に仮移転。そして、2009年10月1日、現在の渋谷区広尾に新美術館を開館しました。(参考:美術館のウェブサイト)
アクセス
山種美術館ウェブサイトによると、「JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分」となっています。
恵比寿駅前からバスに乗ると2つ目の停留所。降りて横断歩道を渡ればすぐ美術館です。
2人以上で行く場合は駅前からタクシーを使うのも良いかもしれません。(私も友人と利用しました)
きもの特典
きもので来館したので、一般入館料(1,400円)から200円引きになりました。
△特別展「HAPPYな日本美術」のチラシ
②明るくおめでたい気分になる展示
今回の特別展は「HAPPYな日本美術 伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ」というタイトルです。
新春にふさわしいおめでたい作品や、見る人の心がHAPPYになる作品ばかりでした。
誰もが幸せな気分になるメインの作品をご紹介すると……
△百子図(ひゃくしず) 川端龍子(りゅうし) 1949年 大田区立龍子記念館所蔵(展示会図録より)
チラシの中央に紹介され、今回の展示の第2章のテーマ「幸せをもたらす」を代表する絵画です。
百子図は中国の伝統的な画題で子孫繁栄を象徴するものですが、第二次大戦後の日本にインドから象が贈られたときの子供たちの喜びを描いており、「平和」がテーマの作品でもあります。(参考:展示会図録作品解説)
△七福神図(部分) 狩野常信 17-18世紀 山種美術館所蔵(展示会図録より)
弁財天(左)と布袋(ほてい)
△七福神図(部分) 狩野常信 17-18世紀 山種美術館所蔵(展示会図録より)
福禄寿(ふくろくじゅ)
ここでは巻物の一部の紹介ですが、ほかに恵比寿や大黒天も愉快に描かれています。
七福神と唐子(からこ)たちの表情を見るだけで思わず微笑んでしまうこの絵巻物は、「新年に出会えて良かった!」と思わせる作品でした。
2.印象に残った作品と感想
「新春を寿ぐ」の作家は全員高齢!
第1章 「福をよぶー吉祥のかたち」<新春を寿ぐ>のコーナーには8人の作家の作品が展示されていましたが、驚いたのは制作した年齢です。
制作年は明治から昭和まで様々ですが、いずれも作家が75歳~88歳という高齢になってから描いたものでした。
①柴田是真(75歳)
△子日図(ねのひず)柴田是真(ぜしん) 明治15年 山種美術館所蔵(展示会図録より)
「新年最初の子(ね)の日に野辺に出て小松を引き抜いて遊ぶ「小松引き」を描いたもの」(作品解説より)
高貴な美しさと若々しさを感じる作品で、大好きになりました。「小松引き」は現代の正月行事には残っていませんが、門松の元になったものとか。
ここでは若松が可愛らしく描かれています。
②森寛斎(75歳)
△高砂 森寛斎 明治22年 山種美術館所蔵(展示会図録より)
お正月といえば「高砂」。高砂は世阿弥の能の一つで、長寿と夫婦円満を寿ぐ祝言能としても有名です。
昭和頃までの日本人はこの絵を見ただけでおめでたい気分になりましたが、最近はこれを見て「吉祥」を感じる日本人は少ないかもしれません。
③川合玉堂(83歳)
△松竹朝陽 川合玉堂 昭和31年頃 山種美術館所蔵(展示会図録より)
神々しい朝日を受けて輝く松には躍動感と力強さを感じます。
しなやかな風竹と松の枝にとまる鷹の姿にも目を奪われ、しばらくの間見入ってしまいました。
玉堂が83歳頃の作品だそうです。
④田崎草雲(77歳)
△瑞夢 田崎草雲 明治25年 山種美術館所蔵(展示会図録より)
瑞夢(ずいむ)とは縁起の良い夢のことで、富士、鷹、茄子が描かれています。
一般的な初夢の絵は色鮮やかで派手なものが多いですが、これは現実に見る夢のごとく、薄く抑えた色彩です。
遠くの白い富士が孤高の存在であることを感じます。
展示の企画者が意図したのかはわかりませんが、私は<高齢作家>が描いた新春の吉祥画からエネルギーを得て、年齢を重ねることに明るい希望を感じることができました。
3.初夢の着物
当日は「初夢」というタイトルの江戸小紋を着用しました。
江戸小紋は遠目では無地に見えるような細かい模様ですが、ふじ、たか、なすの三種類が模様になっています。
帯は富士山の意匠です。
詳しくは次回ご紹介します。