訪問着はなかなか着る機会がないですね。先日、桜柄の訪問着を小紋のようなおしゃれ着として着用してみました。
1.訪問着
①訪問着とは
訪問着は第一礼装といわれる黒留袖・色留袖に次ぐ正装で、略礼装、準礼装といわれます。
模様はひとつなぎの絵羽模様で、肩や胸、袖、裾に華やかな模様があります。
訪問着より格上の色留袖は生地や裾模様が豪華ですが、上半身が無地なので訪問着のほうが華やかな印象になることもあります。
△色留袖
△訪問着(いずれも横山宗生・赤木南洋・中野香織(2019)『フォーマルウェアの教科書(洋装・和装)』ネコ・パブリッシングより)
②訪問着の用途
訪問着は結婚式、披露宴のおよばれ*や、パーティー、おめでたい行事などにふさわしいきものです。
*親族の場合、結婚式と披露宴は黒留袖や色留袖を着ることが一般的ですが、親族でも訪問着を着る場合もあります。
また、訪問着に紋を付けると格が上がります。
③おしゃれ着の訪問着
紬の白生地を絵羽模様で染めた着物は柄付けから言えば訪問着ですが、実際は〈よそ行きっぽいカジュアルな着物〉という立ち位置かと思われます。
中途半端な立場の着物ですが、中年以降、やわらかものの訪問着では大げさで気後れがするときに役立つ一枚と言えます。
これらは紬の着心地で動きやすいですが、見た目は少し改まった感じになります。
2.桜の訪問着
今回着用したのは、桜模様の訪問着ですが、桜の着物の季節はいつなのでしょうか…
①桜柄の着物はいつ着る?
<桜柄の着物はいつ着ればよいのか、または着てはいけない時期があるのか……>
私も迷ったことがありますが、今はこんな風に考えています。
- 3-4月に着ると気分がアップし、周りも喜ぶ
- 1-2月でも春を待つ気分になるので良い
- パーティーや披露宴、お祝い行事の場合はおめでたい柄として季節に関係なくいつでも着られる
- 〈花や枝が写実的に描かれていると期間が限られる〉などと言う人がいるが、昔からの決まりではないので、どんな桜柄でも自分が着たいときに着ればよい
②控えめな桜文様
刺繍のない控えめな桜の絵羽模様です。
裏は共八掛になっています
この着物に金糸銀糸入りの織帯を合わせれば正装として華やかな場面に着用できます。
③ドレスダウンするには
この桜の訪問着をドレスダウンするために、帯の格を下げてみることにしました。
訪問着にはふつう、織の袋帯を合わせることが多いですが、織の名古屋帯にすると少し格が下がります。(お太鼓が一重か二重かの違いなので、帯によってはほとんどわからない場合もあります)
次に格を下げるとすれば染めの名古屋帯でしょうか。
私は試したことはありませんが、塩瀬羽二重に刺繍を施した帯などで軽い雰囲気になると思います。
さて、今回はさらにカジュアルな縮緬の名古屋帯を合わせてみました。
3.訪問着に縮緬の帯
①縮緬地に刺し子の帯
花模様の着物には幾何学的な文様の帯が合います。
白地の帯なので着物との馴染みが良かったようです。
刺繍がなく平坦な印象の着物なので、厚みのある縮緬の帯で温かみが出たように思いました。
②着物・帯・小物
ベージュがかった鶯色の着物+ブルー系の糸で刺繍された帯……
本来なら合わない色の組み合わせかもしれませんが、帯揚げと帯締めの色でつなげています。
着物の取り合わせは洋服とは違い、必ずしも色の系統を合わせたり、色を拾ったりしなくても、着れば何となく合ってしまうことが多いです。
また、着物を畳んだ状態で合わせた時は違和感があっても、着てみるとしっくり合った、という経験を何度もしています。
③もうすぐ閉店の「大志満(おおしま)」新宿店
3月半ばに加賀料理「大志満」新宿店(小田急ハルク内)に行きました。
1980年に開店したこの店は3月末で閉店するそうです。看板は作家の今東光氏が揮毫したものだそうです。
訪問着でもきらびやかな文様でなければ、帯を軽くして友人とのランチやお出かけに着用できると思いました。
大志満は着物で訪れるのにはぴったりのお店。これからは銀座店、丸の内店、汐留店などを利用するつもりです。