芸術の秋、短い歌舞伎鑑賞のあとに東京国立博物館に行きました。
先週に引き続きご紹介します。
1.表慶館
①表慶館とは
明治33年(1900)、皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念して計画され、明治42年(1909)に開館した、日本ではじめての本格的な美術館です。
明治末期の洋風建築を代表する建物として昭和53年(1978)、重要文化財に指定されました。(東京国立博物館公式サイトより抜粋)
△先週もご紹介したエントランスの天井(2階から撮影したもの)
天井には絵の道具や楽器、工具などが描かれているようです。
漆喰の浮き彫りのようですが、公式サイトによると「陰影を巧みに用いて描かれた文様」だということです。
拡大してみると窓の中心に星型の模様があることがわかりました。
床の16稜*の 星型と対応しているようです。
*稜…多面体の面と面の交わる所
☆表慶館は展覧会やイベントの開催時以外は閉館しています。
②特別展「工藝2020-自然と美のかたち-」
会場は表慶館の1階と2階で、展示構成は第1~第4章に分けられて展示されています。
第1章 金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く
第2章 黒はすべての色を内に吸収し、白はすべての光を撥する
第3章 生命の赤、自然の気
第4章 水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く
それぞれのテーマを頭に入れてから各部屋にはいると、作品に対する興味が湧きます。
☆特別展「工藝2020-自然と美のかたち-」 の全作品とその解説はこちらで見ることができます。
東京国立博物館の公式ブログでも会場の様子が紹介されています。
会期:2020年9月21日(月) ~ 2020年11月15日(日)
私が印象に残った展示をあげてみます。
(第1章・1室の展示作品は、幸運にも撮影が許可されていました)
第1章
室瀬和美「柏葉蒔絵螺鈿六角合子(はくようまきえらでんろっかくごうす)」(漆工)
第2章
三輪休雪「雪嶺(せつれい)/花器」(陶磁)
松枝哲哉「久留米絣着物 光韻」(染織)
☆久留米絣作家の松枝哲哉さんは、今年7月に64歳で亡くなりました。
第3章
森口邦彦「友禅着物 緋格子文」(染織)
第4章
小宮康正「江戸小紋羽尺駒絽両面染 両子持ち立涌(りょうこもちたてわく)」(染織)(絵葉書より)
③室瀬和美氏
今回、第1章に螺鈿(らでん)の合子(ごうし・ごうす・香合)を出品していた漆芸家の室瀬和美氏は、蒔絵の重要無形文化財保持者です。
何度か個展を見たことがありますが、工藝2020の会場では様々な工芸品と共に展示され、ひときわ輝きを放っていました。
いわゆる香合のサイズではなく、直径26cm。食籠(じきろう・菓子器)の大きさで、秋の展示会にふさわしい逸品でした。
以下は2015年「人間国宝 室瀬和美 蒔絵の四季」展の会場での写真です。
2.本館と東洋館
表慶館の特別展「工藝2020-自然と美のかたち-」のチケット(予約制・一般1500円)で、本館と東洋館、その他の総合文化展を見学することができます。
今回は本館と東洋館の一部を見ることにしました。
①本館
本館(日本ギャラリー)2階は、縄文時代から江戸時代まで、時代を追って展示する「日本美術の流れ」。
1階は彫刻、陶磁、刀剣などの分野別展示と企画展示で構成されています。(東京国立博物館公式サイトより抜粋)
☆館内は手持ちのカメラであれば個人利用にかぎって撮影できます。
4~8週間ごとに展示替えが行われているので、訪れるたびに季節のきものを見ることができます。
②東洋館
東洋館は2013年1月2日にリニューアルオープン。「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトに、中国、朝鮮半島、東南アジア、西域、インド、エジプトなどの美術と工芸、考古遺物を展示しています。(東京国立博物館公式サイトより)
たくさんの部屋がありますが、今回は2室のみ見学しました。
3階5室 中国の染織 名物裂Ⅱ 「金襴・銀襴」
日本が「名物裂(めいぶつぎれ)」として愛好した中国の絹織物のうち、「金襴・銀襴」がテーマです。
紫地向鳳凰丸文様金襴(むらさきじむかいほうおうまるもんようきんらん)
(明時代・14~15世紀)
紺地二重蔓中牡丹唐草文様金襴(こんじふたえづるちゅうぼたんからくさもんようきんらん)
(明時代・15~16世紀)
萌黄地花兎文様金襴(もえぎじはなうさぎもんようきんらん)
(明時代・15~16世紀)
縞地月兎丸文様金襴(しまじつきうさぎまるもんようきんらん)
(明時代・16~17世紀)
きもの好きには馴染みの文様の名物裂ですが、改めて14~17世紀の中国文化の素晴らしさを実感しました。
地下13室 アジアの染織 インドネシアの染織
地下にはアジアの染織のうち、 インドネシアの地域色豊かな染織が展示されていました。
イカット(経絣)で動物文様がユーモラスです。
舞踊や結婚式に用いられた特別な衣装だそうです。
昔の日本人も憧れた色鮮やかなインドネシアの文様…やや暗い展示室で魅力的な輝きをみせていました。
3.当日のきもの
①色大島
当日は雨の心配があったので、色大島を選びました。
(予想が外れて良いお天気でしたが)
ピンクの色大島を目引き染めで地味にしたものです。
着物についてはこちらで紹介しています。
②姉様人形の帯
帯は塩瀬羽二重の染帯で、姉様人形文様です。
中村七之助が演じるスレンダーな「京人形」をイメージしてこの帯を選びました。
東洋館を鑑賞した後は、東洋館別棟のレストランでティータイム。
友人とケーキを半分に分けて、一息いれてから帰宅しました。
☆東洋館別棟1階「ホテルオークラレストラン ゆりの木」は現在限定メニューで営業しています。
歌舞伎鑑賞と、美術鑑賞、たくさん歩いて遠足のようでしたが、大満足の秋の1日でした。