紅花紬と鳥文様の帯

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昨年12月、友人と一緒に紅花紬を着ました。帯は鳥の柄です。
ご紹介します。

 

1.紅花紬(べにばなつむぎ)とは

山形県米沢市で生産される絹織物で、紅花からとれる染料を使って染めた先染めの織物です。 紅花染めは草木染の中でも花を使用する点が珍しい染めです。

紅花の花には黄色と赤の二種類の色素があるそうです。

紅花染めは色の定着が難しく、退色も激しいので、染めるのには熟練の技術が必要だそうです。

2.紅花染めの歴史

①紅花の渡来

紅花の原産地はエジプトや地中海沿岸。そこからシルクロードを経て、6世紀頃までには日本に渡来していたようです。そして中国~関東地方の広い範囲で栽培されていました。

②山形の紅花

江戸時代の中期頃、最上川流域(出羽最上)で急速に栽培が拡大し、山形の紅花は「最上紅花」として、女性の口紅や頬紅の原料として名声を高めていきました。

紅花から作られる染料のもととなる紅餅(べにもち・はなもち)*は京都へ送られ、京紅として、また、京友禅の染料としても大変な人気だったそうです。

*紅餅…摘み取った紅花の花びらから黄色の色素を洗い流し、潰したあと干しながら発酵させます。その後直径5cmぐらいの煎餅のような丸い形にして乾燥させます。 形が餅に似ていることから紅餅と呼ばれています。3キロの花が約200gの紅餅になるそうです。

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△紅餅
木村孝監修(2002)『染め織りめぐり』JTBキャンブックスより

究極の紅として全国に知られた最上紅花ですが、明治初期には化学染料におされて、ほとんど作られなくなってしまいました。

③新田秀次・富子夫妻による再興

しかし昭和38年、米沢で袴地などを織っていた機屋 新田機業の三代目、新田秀次(しゅうじ)・富子夫妻が紅花染めの再興を目指し、苦労の末に再現に成功しました。

その後も夫妻は努力を重ね、伝統工芸展などで美しい紅色の着物を発表するなど紅花染めを広めることに尽力しました。今では紅花染めは米沢を代表する伝統工芸品となっています。

現在は四代目の新田英行氏が株式会社新田の社長として研究と製作を受け継いでいます。

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△新田英行さん 新田さんは自宅の一部を公開。紅花染めの工程を見学できます。(要予約)
木村孝監修(2002)『染め織りめぐり』JTBキャンブックスより

 

3.紅花親子紬

①三代目と四代目の紬

この日は新劇の劇団の後援会パーティがあり、友人と打ち合わせして、紅花紬を着ました。

劇団稽古場でのアットホームな立食パーティーですが、クリスマス直前なので少しは華やかにしたいところ。紬の中でも明るさを演出できる紅花紬はそんな時にぴったりです。

 

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左のピンク系は友人の紅花紬で四代目・新田英行さんの作品。右の黄色は私が母から譲られた三代目・新田秀次さんの作品。約40年前のものです。

 

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左はたて縞で右は横段、という違いはありますが、どちらも真綿独特の柔らかな風合いと微妙な色の重なりが共通しているようです。

②新田秀次さんの紬

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「光彩」というタイトルが付けられていました。

 

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ぱっと見た感じは黄色のきものですが、

 

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緑やピンクも入っていて春の光を感じさせます。

③新田英行さんの紬

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縞はきつい印象になりがちですが、この紬は穏やかです。

 

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グレーや茶の縞とピンクの濃淡が優しい間道文様を作り出しており、古典と現代の融合を感じます。

このように、新田さん親子二代による紅花紬が並びました。帯のテーマも一緒にして二人楽しいひとときを過ごしました。

 

4.鳥文様の帯

帯は翌年の干支を意識したこともあり、鳥文様にしました。

①更紗の鳥

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紬の更紗です。生命樹のようにも見える唐花とたくさんの鳥たち。楽園のイメージでしょうか。

 

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鳥たちの目がそれぞれ違うので見ていて面白いです。遊び心たっぷりに理想郷を描いているようです。

②孔雀

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友人の帯は孔雀文様の染帯です。複数の美しい孔雀がお太鼓いっぱいに描かれています。

 

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気品に満ちた目と鮮やかな羽が印象的です。

 

5.縮緬・孔雀の帯

私にも若い頃からお気に入りの孔雀の帯があります。

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縮緬の染帯です。

 

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こちらの孔雀は目に表情はなく、若向きの帯らしく色の鮮やかさが特徴です。

 

6.友人の鳥の帯

もう一つ、友人の素敵な帯を紹介します。

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唐花に雉子でしょうか。スッキリしていてお洒落な帯です。

友人も鳥の柄が大好きとのこと。

鳥は人に夢を抱かせてくれる魅力的な存在だからこそ、着物や帯の柄として、昔から愛されてきたのでしょう。

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