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唱歌「人形」で歌われる着物 その1

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懐かしい歌の中に、着物にまつわる歌詞があります。

その歌は幼い頃に母が歌ってくれた「人形」です。

1.「人形」2つの歌

①明治44年の「人形」

「人形」というと、昭和世代の誰もが知るこの童謡が有名です。

歌詞
1. わたしの人形は よい人形
目はぱっちりと いろじろで
小さい口もと 愛らしい
わたしの人形は よい人形

2. わたしの人形は よい人形
歌をうたえば ねんねして
ひとりでおいても 泣きません
わたしの人形は よい人形

Wikipedia.orgより

これは1911年(明治44年)に当時の音楽教科書「尋常小学唱歌」第一学年用で発表された童謡・唱歌で、作詞作曲者ともに不詳です。

中高年世代なら皆歌えるポピュラーな童謡ですが、この歌詞ではイメージを膨らませることは難しいです。

②明治35年の「人形」

私が今回検索して見つけた思い出の唱歌は、さらに古い明治時代の歌でした。手がかりは「着物は緑、帯は赤」でした。

「なつかしい童謡・唱歌・わらべ歌・寮歌・民謡・歌謡」というサイトで、すぐに題名や歌詞がわかりました。

「人形」
(作詞者不詳・村岡祥太郎作曲)

1.粗末にすなと母上の 仰せ給いしこの人形
着物を着せて帯しめて 箱の御殿に座らせん

2. 着物は緑帯は赤 模様は松にこぼれ梅
泣くなよ泣くな お休みの日には花見に連れゆかん

3. あばれる鼠 じゃれる猫 人形の家を 破るなよ
学校すみて帰るまで 待てや我が身を おとなしく

(明治35年唱歌教科書)
なつかしい童謡・唱歌・わらべ歌・寮歌・民謡・歌謡 より

上の太字の箇所が、きもの好きだった私のお気に入りの歌詞でした。

そして、続く部分は少し違って「泣くなよ泣くな おやすみよ 明日は花見に連れゆかん」と、歌っていたのでいかにも子守唄っぽく、「明日はお花見♪」と思わせるワクワク感もありました。

母が替えて歌ったのか、覚え間違い(祖母から聞いて?)だったのかもしれません。

↓こちらの動画で安田祥子さんが歌っています。

③気になる子守唄

子守唄として聞かされたこの歌(2番まで)ですが、幼心に気になる部分がありました。

着物は緑、帯は赤

子供時代の私の憧れは綺麗な赤い着物です。着物といえば赤なのに、なぜ緑なのだろう?

それに帯が赤……?

今なら緑の着物のほうがお洒落だと思えるのに、幼い私には納得が行かない部分でした。

模様は松に……?

模様は松に……までは分かりましたが、あとが不明でした。

松の他に何の柄だったのか、ずっと疑問に思っていました。

子供に「こぼれ梅」は難しい表現です。

これらの気になる部分のおかげで、「人形」の歌は思い出の中にずっと残っていたのだと思います。

 

2.「着物は緑・帯は赤」

①補色関係

緑と赤は補色*関係にあり、子供の着物や若い女性の振り袖には好ましい取り合わせだと思います。

*補色……反対色ともいい、似た様な色でないのに、コーディネートとして合う色です。補色同士の色の組み合わせは、互いの色を引き立て合う相乗効果があるようです。

 

色相環。円の正反対に位置する色が補色。 (左)マンセル (中)RYB (右)RGB
△補色の色相環(Wikipedia.org より)

歌舞伎のお姫様は「赤姫」と呼ばれ、ほとんどが赤い振り袖を着ています。

女の子には当たり前の赤い着物ですが、作者は歌詞の七・五・七・五に合わせるために「きものはみどり」にしたのでしょう。

②横浜人形の家に

1991年に訪ねた「横浜人形の家」*には、赤い振袖の市松人形のほか、緑の振袖の人形も飾られていました。

*横浜人形の家…神奈川県横浜市中区山下町にある人形の専門博物館で、1986年に開館しました。
世界100か国以上、1万点以上の人形を収蔵する国内唯一の施設だそうです。

 

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これらは昭和2年、国際平和を目指した人形交流事業によってアメリカから日本の子供達に送られた「青い目の人形」のお礼として、実業家・渋沢栄一が中心となってアメリカに送った「答礼人形」といわれる市松人形です。

 

昔の市松人形は着せかえ人形として子供達に愛されていました。(今は高級品となり鑑賞用がほとんどのようです)

唱歌「人形」の歌を聞いていると、幼い子が母親と一緒に人形にきものを着せて楽しむ光景が浮かんできます。

③娘にも

「人形」の歌にこだわったわけではありませんが、娘は赤よりも緑のきものが似合っていた気がします。

 

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△ お正月に娘(3歳)と

 

3.緑の着物で飛鳥山へお花見に

①江戸の名所・飛鳥山

桜の盛りに今年も飛鳥山に行きました。飛鳥山公園(あすかやまこうえん)は、東京都北区にある公園で、江戸時代からの桜の名所です。

それは徳川吉宗が1270本もの桜を植え、庶民に開放したことに始まるそうです。1873年(明治6年)に上野公園などと共に日本最初の公園に指定されました。

飛鳥山には「北区飛鳥山博物館」「紙の博物館」「渋沢史料館」という3つの博物館があります。

 

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△飛鳥山の桜(2017/4/5撮影)

②緑の着物と赤い帯で

「人形」の歌を思い出したこともあり、緑のきものでお花見に行きました。

 

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△満開の桜の下で(2021/3/27撮影)

③大河ドラマ館

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飛鳥山博物館内では現在「渋沢×北区 青天を衝け 大河ドラマ館」を開館しています。(~令和3年12月26日まで)

私も興味があったので、見学してきました。

大河ドラマ館と当日着用したきものについては次回ご紹介します。

 

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