今日はきものの保管に欠かせない「畳紙(たとうし)」についてとりあげます。
実際にたとう紙をいくつか購入しつつ、どんなたとう紙が良いのか、さらにたとう紙の交換頻度などについても考えます。
1.たとう紙とは
着物や帯を包む紙のことで、和紙や和紙風の紙で出来ています。
そういえば、子供の頃我が家では、ただ「たとう」と言っていました。そしてきものを着る時や畳む時に敷く厚手の和紙(衣装敷)を「たとう紙」と呼んでいました。
紛らわしくて不思議に思っていましたが、京都では衣装敷を「たとう紙」、着物を包む紙は「文庫紙」と言って区別しているようです。
きもの関係の言葉は時代や地方、家庭によっていろいろな言い方があり、難しいですね。
2.たとう紙に包む理由
きものをしまう際、なぜたとう紙に包むのでしょうか? 理由を考えてみます。
①きものを湿気から守る
和紙素材のたとう紙は通気性があり湿気がこもりにくく、吸湿性もあるのできものの湿気を吸収し、カビの予防にもなります。
しかし、古いたとう紙にはカビが生えやすく、カビが生えるときものに移ってしまうので注意が必要です。
②きものをホコリから守る
箪笥の中も意外とホコリは入りやすく、きものの出し入れによってもホコリは発生するので、包んでおくと安心です。
③シワになるのを防ぐ
きもの同士を直に重ねるとヨレてしわになりやすいですが、たとう紙に包めば滑りが良くなり、重ねて収納することができます。
④出し入れしやすい
箪笥からきものを出す時も一つだけすっと取り出せるし、しまう時も別のきものに影響を与えません。
このように、たとう紙はかなり重要な役割を果たしているので、きものを着ていく上で無関心ではいられないというわけです。
今回は3種類のたとう紙を購入してみました。
3.たとう紙のレビュー
①金銀菊柄のたとう紙(雲竜紙使用)小窓付き・薄紙付き
Amazonで10枚1940円でした。
製品リンク:http://amzn.to/2BVWlu8
<良い点>
- よく目にするポピュラーなたとう紙で、柄の感じが良いです。呉服屋さんでも多く使われているようです。
- 紙に厚みがないので、箪笥に収納する時にかさばらないです。
- サイズ 83.5cm×36cmで、他のたとう紙より短いのが特徴。(他は87cmが多い)昔使用していた物と同じサイズなので、小さめの箪笥でも収まりがよいです。
- 下が帯用。47cmとコンパクトサイズです。他に64cm、55cmのものがあるようで、用途によって選べます。
- 10枚セットで2000円以内。購入しやすい価格です。
<気になる点>
- 和紙が入っているようですが、表の手触りはツルッとしていて、和紙らしさはあまりないです。
- 紙に厚みがないので、たとう紙自体にシワが付きやすいように思います。したがって重い着物や帯を包むのには向かないかもしれません。
- 紐は薄いガーゼのようなメッシュ。ほつれやすい気がします。
②「御誂」 (淡黄雲竜紙使用)小窓付き・薄紙付き
10枚まとめて購入しました。外包みを取るとこのように包装されていました。
10枚重なっています。
小窓を内側から見たところ
三角のつなぎの部分
薄紙
Amazonで10枚2600円でした。
製品リンク:http://amzn.to/2nI6F3O
<良い点>
- 「御誂(おあつらえ)」の金箔加工の文字が上品で見た目も和紙風。高級感があります。
- しっかりした紙質で、きものを入れる時に安心感があります。
- 紐は綾テープを使用しており、しっかり結べます。
<気になる点>
- ①よりも和紙の風合いが感じられますが、和紙100%ではないので表の手触りは、やはりツルッとしています。
- 着物用は87cm。これが現代のたとう紙の標準のようですが、私のきものには少し長いような気がします。
- 帯用は65cm。箪笥によっては長すぎて収納しにくい場合があります。
- たとう紙が長過ぎる場合は、以下の様に片方を深く折って使用します。
帯を片方の隅に合わせて
長い部分を折ります。
内側の紐を結んで
出来上がり。外の紐も結べますが、小窓が見えなくなります。
(私はたとう紙の両側に中身の名称を書いているので窓の必要はありません)
③「京の薫り」(琴紙使用)小窓付き・薄紙付き
長さ64cmの帯用を購入しました。
②の帯用と同じ大きさです。
<良い点>
- しっかりした紙質で、厚さは②とほぼ同じです。薄紙付きで高級感もあります。
- 小窓は内側についています。着物のヤケを防ぐためと思われます。
- Amazonで10枚入りが、帯用(64cm)が2550円、着物用が2800円でした。
<気になる点>
- 紙の色が薄茶で、古めかしい感じがします。
- タイトル「京の薫り」はちょっとわざとらしい。「きものはすべてが京都なの?」と関東の人間はツッコミたくなります。
- 小窓が外にないので、中のきものがすぐには分かりません。
- 紐は①と同じガーゼのような柔らかいものでした。
④厚手の美濃和紙 薄紙付き 無地
5枚入りで2480円。送料は無料でした。
製品リンク:和物屋 美濃和紙たとう紙
扇型の小窓付き。
外側の紐。綾織でしっかりしています。
内側の紐は白です。
<良い点>
- 和紙ならではの丈夫さと柔らかさがあり、きものを包む時に安心感があります。
- 触ってみると、吸湿性も優れているように感じます。
- 紐が上質でしっかりしています。
<気になる点>
- 特にありませんが、今までご紹介したものより、価格が高いことです。
①から④までいろいろなたとう紙を見てきました。けれども、どれが良いのかはっきり分かりません。
価格が上がるにつれて紙が丈夫になり和紙の割合が多くなるような気はしますが、きものを守るという目的と経済性の両方を考えると迷ってしまいますね。
そこで、専門家に聞いてみることにしました。
3.たとう紙に関してプロに質問してみました
三重県津市の着物クリーニング専門店「ふじぜん」の吉原ひとしさんに伺いました。吉原さんは着物ケア相談士で、きものに関する悩み相談を電話で受け付けてくださいます。
質問したことは
①たとう紙の使用可能期間は?
②たとう紙の価格の違いと使用可能年数の関係は?
③たとう紙の中の薄紙について
④小窓のフィルムについて
⑤どんなたとう紙が良いのか?
の5つです。
吉原さんはすべての質問に親切に答えて下さいました。
①たとう紙の使用可能期間は?
2年だそうです。
安いもので良いので、1~2年で交換するのが良いとのことでした。
②たとう紙の価格の違いと使用可能年数の関係は?
和紙の方が吸湿性や通気性に優れていますが、今の住宅環境では、高い和紙でも半年ほどの差しか無いそうです。
つまり、200円のたとう紙と2000円の和紙100%のたとう紙の寿命の差は半年というわけです。
これには少し驚きました。
昔の日本家屋のような通気性の良い環境にあり、虫干しもきちんと行えば、もう少し寿命は伸びるそうです。
③たとう紙の中の薄紙について
薄紙のあるなしは、保存の条件としては関係ないそうです。
また、薄紙を付ける際の糊を気にする方もいるようですが、2年で交換するのであれば、きものに影響することはないそうです。
薄紙がないと少し頼りない気がしますが、元々昔のたとう紙には薄紙は付いていなかったと思います。見た目の安心感と高級感の演出だけなのかもしれません。
和紙素材のシンプルなたとう紙で、薄紙は付いていないタイプです。
紙がしっかりしていれば薄紙は必要ないようです。
④小窓のフィルムについて
小窓のフィルムは長期間の使用できものがヤケてしまったり、フィルムが防虫剤などと化学変化を起こしてきものにシミが出来てしまう心配が考えられますが、③の薄紙と同じで、定期的に交換すれば問題は無いそうです。
小窓を便利に感じている方は、そのまま使い続けても大丈夫ですね。
⑤どんなたとう紙が良いのか?
どんなたとう紙でも良いそうです。
(ただし、クリーニングから戻ってきた時に入っているような、ツルツルにコーティングされた洋紙のたとう紙は保管には適さないので注意してほしいとのこと。)
価格は関係なく、薄紙や小窓も関係なく、たとう紙に必要なのは、とにかく定期的にチェックをして新しいものと交換することなのです。
虫干しもぜひやっていただきたいと吉原さんはおっしゃっていました。
ちなみに、私がお世話になっている悉皆屋さんも、「たとう紙は高級なものを買うことより、こまめに取り替えることが大切です!」といつも言っています。
4.たとう紙の購入方法
たとう紙を呉服屋さんで分けてもらっている方もいると思いますが、吉原さんによると、呉服屋のロゴ入りのたとう紙の場合、販売したがらない店も多いそうです。
やはり、Amazonや楽天などのインターネット販売が便利なのかもしれません。
ただし、たとう紙を折らずに発送することで、かなりの送料がかかる場合もあります。まとめると送料無料のサービスをしているお店もあるので、その点はよく検討して下さい。
ちなみに、吉原さんのお店「ふじぜん」でも販売しています。30枚まとめて購入すると送料サービスで6000円だそうです。
今日は「たとう紙は高級感よりも交換を!」というお話でした。
製品リンク
今回紹介したたとう紙のリンクです。
金銀菊柄のたとう紙(雲竜紙使用)小窓付き・薄紙付き
製品リンク:http://amzn.to/2BVWlu8
「御誂」 (淡黄雲竜紙使用)小窓付き・薄紙付き
製品リンク:http://amzn.to/2nI6F3O
「京の薫り」(琴紙使用)小窓付き・薄紙付き
厚手の美濃和紙 薄紙付き 無地
製品リンク:和物屋 美濃和紙たとう紙