今から8年前、
観劇に行く時の着物を決めかねていた私に、
母がすすめてくれたものがあります。
「これはさつま。木綿でとても着やすいのよ」
と言って出してくれたのは袷の白っぽいきものでした。
当時はそれがどういうものかよくわからず、
「木綿の袷?普段着にしては白っぽいし八掛けもお洒落なグレー……。
何だか不思議なきものだわ」と思いました。
着てみたところ、木綿なのにしっとりしたヌメリや艶があり、
柔らかいので絹のきものを着ている感じでした。
この不思議な「さつま」、母が亡くなってから調べてみると
「綿薩摩」といわれる木綿の織物のことでした。
大島紬とほぼ同じ技法で織られているそうです。(大島紬と同じ織機を使っている)
そしてすごく細い綿の糸を織るのには高度な技が必要とされ、
一反織り上げるのに半年もかかることがわかりました。
きもの好きな人にとっては、着心地の点で大変魅力的な物だということです。
母も年齢と共に着心地を追求していたようです。
今日はまず、藍の綿薩摩をご紹介しましょう。
1.藍・袷の綿薩摩
洋服の柄のようなモダンな幾何学模様が蚊絣※によって織り出されています。
※蚊絣――かがすり。十字形で蚊のように細かい模様の絣。
八掛(はっかけ・裏地のこと・裾回しともいう)は同色の藍色。
「八掛は同色にすると品が良く無難」といわれますが、
このきものの場合は柄に合わせてシャープな雰囲気を出しているように感じます。
2.藍・単衣の綿薩摩
亀甲絣※と蚊絣が交互に織り出され、竹を表現しています。
※亀甲絣――きっこうがすり。亀の甲羅のような小さな六角形の連続柄。
中に十字形の蚊絣が入っている。
9月下旬、友人とのショッピング&ランチに出かけた時に着用しました。
藍の木綿で単衣、というと浴衣をイメージしますが、
着心地はしっとり柔らかで身に添う感じです。
そしてカジュアルな雰囲気の藍色のきものは、
どんな街のどんなお店でも違和感なく馴染むので気楽です。
茜染の帯を合わせました。
帯留めは象篏(ぞうがん)です。
次回は白の綿薩摩をご紹介しますね。