5月は袷の着物と単衣の着物が混在する時期で悩むこともありますが、その日の気分でいろいろに楽しめる季節でもあります。
茶会を含むフォーマルな場では袷を着用しても、近年は5月のカジュアル着物はほとんど単衣を着る人が多いのではないでしょうか。
1.5月の袷ー着物選び
5月に袷の着物を着用した過去の写真を見ると、共通点が見つかりました。それは色と仕立てです。
5月の袷の写真を少しあげてみます。
①5月の袷は明るい色を
GW頃は新緑がまぶしい季節です。
この紬は孫を囲んでの両家の会食に着用しました。(この日の東京の最高気温は22.8℃でしたので、袷の着物でも大丈夫でした。)
5月下旬、空調の効いた能楽堂への装い。淡い同系色の取り合わせで帯締めは細めの物を選んでいます。
5月下旬、孫のお宮参りの装いで着物の地紋は桐です。桐の花は初夏に咲きます。
大島の生地は薄くひんやりとした肌触りなので、5月の袷としては最適です。
5月上旬、涼しげな水色の江戸小紋に博多帯を合わせています。
②5月は「胴抜き仕立て」
胴抜き仕立てとは、胴になるところに胴裏地を付けず、袖、裾回しなど見える部分だけ裏地を付ける仕立てのことです。
これらは随分前に仕立てたもので、その当時はまだ「5月には袷を着なきゃ!」という意識が強く、少しでも涼しく着られるものを求めていたのだと思います。
また、生地の厚い紬などは冬でも胴抜き仕立てのほうが着やすい場合があります。
2.5月の単衣ー6月と違う点
①帯
6月との違いは、絽や紗といった明らかに透けている夏帯は使わないという点です。私が考える、5月にふさわしい帯は以下の通りです。(フォーマル以外で)
- 袷用でも軽く、明るい色の帯
- 八寸帯(芯を入れず端をかがって仕立てられる帯ー博多帯、紬の帯など)
- 麻の九寸名古屋帯(芯を入れて仕立ててあるので透けていない)
- 「すくい織り」や「櫛(くし)織り」の技法を使った涼感のある帯
- 自然布(芭蕉布、葛布、藤布、科布など)の帯
(私は5月の単衣に着用したことはないのですが、自然布の帯は夏の着物以外にも使えると言われています)
②半衿と帯揚げ
5月の半衿と帯揚げは袷用のものを使っています。
- 半衿は塩瀬(白塩瀬羽二重)か楊柳(ようりゅうー縦しぼがある生地)
- 帯揚げは縮緬以外でなるべく涼感のあるもの
6月1日からは半衿と帯揚げは絽などの夏物にします。
③地厚の木綿
木綿のきものは5月に最適です。
薄手では浴衣のようになるので、久留米絣のような厚手の木綿がおすすめです。普段着の装いなので着ていく場所は限られますが、街着として気楽に着用できます。
ところが6月になると風を通さない地厚木綿の着物は蒸し暑く感じるようになります。
(梅雨寒の場合は大丈夫。木綿の着物の多くは雨に濡れても洗濯ができるので心強いです。)
3.5月のカジュアルな単衣
5月の単衣を過去の写真からご紹介します。
①木綿
②紬
③紙布(しふ)
紙布(しふ)は細く切った和紙によりをかけて作った紙糸を織って布にしたものです。
通気性に優れた着物です。
こちらで紹介しています。
今日は過去の5月の着物を振り返ってみました。
桜の季節も終わりましたね。今年の5月はどんな陽気になるでしょうか。
穏やかな日差しと爽やかな風を期待しつつ、お出かけのプランを立てたいと思います。