イベント訪問

縞御召のきもの・その2~「すみだ北斎美術館」から「江戸東京博物館」へ~

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平日の午前、静かな「すみだ北斎美術館」(前回から続く)を見学したあとは、賑やかな「江戸東京博物館」へ足をのばしました。

5.「すみだ北斎美術館」常設展示室の錦絵(レプリカ) つづき

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△『冨嶽三十六景・凱風快晴』天保2年(1831)頃
北斎70代の頃の錦絵です。

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△『冨嶽三十六景・武州玉川』天保2年(1831)頃
北斎70代の頃の錦絵です。(ピーター・モースコレクション)

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△『牡丹に胡蝶』天保初年(1833~34)頃
北斎70代の頃の錦絵です。(ピーター・モースコレクション)

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△『百人一首乳母かゑとき* 猿丸太夫』天保6年(1835)頃
北斎75歳頃の錦絵です。(ピーター・モースコレクション)

*『百人一首 うは乳母かゑとき』」…「乳母(うば)が絵解き」つまり「百人一首の和歌の内容を乳母(うば)が子供に絵で説明をする」という意味です。

 

6.北斎アトリエの再現模型など

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北斎の部屋を覗いているような気持ちになりました。

 

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北斎は84歳の頃、区内の榛馬場(はんのきばば)に娘の阿栄(おえい)とともに住んでいました。その様子を門人の露木為一(つゆき いいつ)が絵に残しており、それを元に等身大の模型で再現したそうです。

北斎は炬燵に半分入りながら絵を描いています。そばで見守るのは娘のおえいです。

北斎の手元が動く仕掛けになっており、まるで生きている北斎がそこにいるかのようです。

がっしりした体格に大きな手、太い指。北斎は80歳を過ぎても目が悪くなったり手が震えたりしなかったのでしょうか。晩年の作品には体力の衰えが感じられません。

撮影はできませんでしたが、最晩年の89歳、亡くなる3ヶ月前の作品が展示されていました。嘉永2年(1849)の作品で、落款は「九十老人卍筆」。『富士越龍図』という墨絵のような肉筆画です。

富士山と、黒雲と共に昇天する龍。ダイナミックで神々しさを感じるような素晴らしい作品でした。
龍は北斎自身のように思われました。

常設展示室には、他に『北斎漫画』などの絵手本をタッチパネルモニターで紹介する『北斎絵手本大図鑑』、錦絵の制作工程を映像も交えて紹介するコーナーなどもありました。

 

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△錦絵の摺りの工程ー神奈川沖浪裏ができるまでー
映像も見ることができました。

この日は平日の午前で入館者は少なめだったこともあり、1時間ほどですべての展示を見ることができました。

時間も体力もまだ余裕があったので、昼食のあとは歩いてすぐの「江戸東京博物館」へ向かいました。

 

7.江戸東京博物館へ

①「江戸東京博物館」とは

JR両国駅から徒歩3分、国技館の隣にある博物館です。

江戸、東京の歴史と文化に関わる資料を収集、保存、展示することを目的として、平成5年(1993年)に開館しました。

1階に企画展示室、3階(屋外)に「江戸東京ひろば」、5階と6階に常設展示室があります。

この博物館は前述の「すみだ北斎美術館」とは違いかなり広いので、常設展示を見るだけでも十分に楽しむことができます。

また、江戸東京博物館のチケット提示で、すみだ北斎美術館の常設展が2割引に、すみだ北斎美術館のチケット提示で、江戸東京博物館の常設展が2割引になるので、両国を訪れたら両館を合わせて見学するのも良いと思います。

②熊手

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一階入り口に飾られた高さ4メートルの大きな熊手が目を引きます。東京都台東区にある鷲(おおとり)神社から寄贈されたもの。

熊手は縁起物で、毎年11月に開かれる酉の市で売られます。鷲神社の酉の市は特に有名で毎年多くの参拝客で賑わいます。

江戸時代から現在まで続く風習の一つとして、まず足を止めてこの大熊手を眺めました。

 

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熊手には宝船、おかめ、千両箱、米俵、包金、的矢、しめ縄、えびす大黒、鶴亀などが飾られています。

 

8.常設展を写真で紹介

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6階の常設展示フロアに入るとまず目に入るのがこの日本橋。橋を渡ると江戸の世界が広がります。

 

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長さは半分ですが、実大サイズだそうです。20年ぶりの江戸東京博物館でしたが、橋は変わらず懐かしく感じました。

橋の向こうは芝居小屋の「中村座」。

 

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△日本橋を渡る人々のジオラマ
楽しくて、しばし見入ってしまいます。

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△徳川家康坐像(複製)

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△棟割長屋(むねわりながや)
一つの棟を数戸に区切った長屋(住居)のなかで、棟の前後で部屋を分けたものです。

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△奥に置かれた裁縫道具と反物

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私の後ろに立てかけられているのは「洗い張り」された反物です。この展示を見ていた女性が、「私の母が昔やっていたわ!」と懐かしそうに話していました。

長屋の道具の中にも見慣れたものがたくさんありました。昭和時代には、江戸時代の生活の名残がまだあったのですね。

 

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△母の古い裁縫箱
今も現役で私が愛用しています。

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△寺子屋の様子

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△江戸指物(さしもの)
板材を組み合わせて作る木工のことで、江戸時代に発展したそうです。

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△江戸時代後期の寿司屋の屋台

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ずいぶん1貫が大きいです。赤酢を使用しているのでシャリが赤っぽいのが特徴だそうです。

 

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△三井越後屋復元模型

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15分ごとに暖簾が上がります。外国人観光客が嬉しそうにカメラにおさめていました。

 

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△神田明神行列

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△『角田川 新梅屋敷の図』(歌川豊国)
梅見を楽しむ女性たちの美しい重ね着のきものが印象的です。裾の模様は梅や秋の銀杏や紅葉の柄などさまざまです。

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△『亀戸梅屋敷』(歌川広重)

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お洒落な下着には梅が満開です。

 

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如月のまだ寒いころ。羽織り姿も美しいです。

それにしても花魁も一般庶民も素足だった時代、人々は重ね着で寒さに耐えていたのでしょうか…。
現代に生まれて良かったです。

 

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△『江戸っ子好みの意匠』
「江戸の人々の間では、細やかな<小紋>や直線の<縞>など、明快であっさりとしたデザインが好まれ流行した。」と説明されています。

更紗や江戸小紋、縞など、現代のきもの好きでもたまらない意匠ですね。

 

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△歌舞伎『助六所縁江戸桜』の舞台の前で

故十二代目市川團十郎監修のもと、人形の手首の太さや足の指に至るまで精巧に復元されているそうです。十二代目の舞台の声を聞くこともできます。

 

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△友人と二人で
そばにいた外国の方に撮っていただきました。

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△人力車に乗ったあと……

お土産を買って帰途に就きました。

社会科見学の小学生や外国人観光客に混じって、少しはしゃぎながらの楽しい江戸の旅でした。

 

9.友人のきものと帯

この日の友人の装いは、珍しい羽二重の小紋と織の帯でした。

①羽二重のきもの

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写真ではわかりませんが、ぽってりと厚い羽二重生地に、変わり水玉模様のお洒落な小紋です。
お母様のものではありませんが、大正生まれの方が遺されたきものだそうです。

羽二重のきものというと、今では男性の黒紋付きや女性の喪服といったイメージですが、昔は普通のきものにも使われていました。

 

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珍しいので以前写真を撮らせていただきました。水玉といっても完全な丸ではありません。雪のようにも花のようにもみえます。

 

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裾回しもシックな黒です。

②形見の帯

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菊を意匠化した織の帯はお母様から譲り受けたもの。
袋帯を名古屋帯に仕立て直してあったそうですが……

 

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丈が短いので、私が二部式の作り帯にしました。
友人は「とても締めやすくなったわ!」と喜んでくれました。

 

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どんなきものにも合う格調高い帯ですが、経年によって金糸や銀糸、地の色が渋くなっているため、街着にも合うようです。

 

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二部式ならば前の部分に好きな色が出せます。

水玉柄というと可愛らしいイメージですが、黒地に白の変わり水玉の小紋は粋でシャープな雰囲気の大人っぽいきものでした。

華やかな席をたくさん経験してきたであろう帯も、今は控えめな存在感があり素敵でした。

二人が着用したきものや帯を遺してくれた人たち…この日は我々と一緒に江戸見物ができたでしょうか。

 

10.お土産

少しお土産を買いました。

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「印傳」に見えるミニバッグ。

 

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レプリカ?ですが(1260円)、良くできています♪

 

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皆にあげたくなる榮太樓の飴。

 

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絵葉書も欠かせません。

なお、「江戸東京博物館」は改修工事に伴い、2017年10月1日から2018年3月31日まで全館休館となる予定ですので、これから見学なさる方はご注意ください。

 

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