先日、孫(娘の長男)のお宮参りをしました。
孫は生後1ヶ月。娘は母乳だけで育てていますが、きものでお宮参りをしたいと言いました……。
1.きもので授乳する方法
きもので授乳するには二通りの方法があります。
a 身八つ口を開く
身八つ口(着物の脇で開いている部分)を上に引き上げてから中央に向かって開き、そこから胸を出す方法です。
衿元を崩さずに胸を出すことはできますが、新生児に吸わせるのは難しいと思います。
身八つ口はここです。
この部分をもっと引き上げ、中心に向けてずらしてから開きます。
b 衿元を開く
襦袢と着物の衿を上に引き上げて胸を開いた状態にする方法です。
元の通りに戻すのは難しいので、写真撮影が終わってからならできるかもしれません。
a,bいずれも、きものに慣れていて自分で加減しながら開くことができないと難しそうです。
2.試してみる
娘は予行演習のつもりで実際にきものを着て試すことにしました。
a 身八つ口を開く方法
赤ちゃんに吸わせるのではなく、搾乳機で搾乳できるか挑戦してみました。
そのために肌襦袢と二部式襦袢(長襦袢の代わり)の身八つ口を広げました。
上が広げた肌襦袢の身八つ口。下は直す前の開き口です。
二部式襦袢も同じように身八つ口を広げました。
結果
襦袢の状態では身八つ口を開くことができましたが、着物を着て袋帯(おろし立てで硬い)を締めてしまうと、着物の脇を上手く持ち上げることができず、十分に開けませんでした。
おそらく着慣れていないからだと思います。
ふだんの着物で練習すればできるかもしれませんが、今回は不可能と判断しました。
b 衿元を開く方法
きものの衿、長襦袢の衿、肌襦袢…の順で、かなり大胆に引き上げながら開きました。
結果
胸を出してしまうので授乳は可能でした。
ただ、衿をきれいに戻すのが難しいです。
裾をめくって襦袢などを引き下げなければならないので、授乳室でも大変そうです。
写真撮影などすべて終わって、あとは帰るだけ…なら可能だと思いました。
また、はじめから衣紋(うしろの衿)をかなり抜いて、胸元もゆったり合わせるような着方をすれば胸を開くのは楽ですが、色留袖には向かない着付けなので、その点でも難しかったです。
3.今回は、着物で授乳はしないことに
実際に当日着る予定の着物と帯で試してみましたが、どちらの方法も難しそうなので、今回は着物での授乳はしないことにしました。
授乳はまだまだ続けるので、次回衿が崩れにくい紬などのハリのあるきもので、ゆったり着て衿元を開く方法を試すことにしました。
そして、今回はお宮参りを短時間で済ませよう! ということになりました。
支度をして出掛ける直前に搾乳しておいた母乳を飲ませ、もし出先で必要になったらミルクを飲ませることにしました。
4.着付けの工夫と当日の流れ
①着付けの工夫
少しゆったり着る
脇をキッチリ着付けてしまうと赤ちゃんの世話がしにくくなるので、腕が動かせるようにゆったりめに着ます。
授乳パットをつける
授乳ブラジャーはやや締めつけ感があるのと、胸が強調されて太って見えるので付けるのをやめました。
代わりに……
カップ付きキャミソールから取り外したカップに授乳パットを付けました。(右についているのが授乳パット)
授乳パットが付いたカップを胸に当てて汗取り肌襦袢(あしべ織り)を着ました。
その上からきものスリップを着用し、前を付け紐で止めてパットを固定しました。
あしべ織りについては、以下の記事をご覧下さい。
きものスリップは下前、上前をしっかり打ち合わせて紐で止めるので、パットはずれにくいです。
タオルで胸の隙間を埋める
授乳中の胸はかなり大きくなっています。
ハンドタオルを胸の中央に当ててなだらかになるように補正しました。
腰紐はゴムタイプの腰ベルトを使用
締めつけ感がなく緩まないので楽です。
帯は高すぎない位置で
現代は胸を押さえて帯を高めに着付けることが多いですが、胸は押さえず帯も楽な位置にします。
②当日、出発までの流れ
お宮参りはとにかく赤ちゃん優先。赤ちゃんに負担を掛けずにお詣りを済ませることが重要です。
持ち物(前日までに準備)
お宮参り用の祝い着・初穂料・おむつ・ミルク・予備の着替え・タオル・ガーゼハンカチ・おくるみ・ビニール袋など
当日朝
●朝の授乳
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●ママの食事など
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●ヘアメイク(短時間でシンプルに)
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●着付け
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●直前の授乳
搾乳しておいた母乳を温めて授乳(昨夜から少しずつ搾乳し冷蔵保存しておいたもの)
きものを着てからの赤ちゃんの世話は、割烹着を着て行いました。
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●出発
神社は車で10分以内のところにあります。
③神社にて
●事前に祈祷申込み
神社は予約制ではありませんが、事前にネットで祈祷を申込み、名前や住所などを登録しておきました。
当日書類を書く手間が省けます。
●受付
初穂料を納め、祈祷まで15分ほど控室で待ちました。
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●待ち時間に準備
昔の風習に習い、父方の祖母(パパのお母様)が赤ちゃんを抱き、祝い着を掛けて待ちました。
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●祈祷とお祓いを受ける
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●神社の庭で写真撮影
生後一ヶ月では小さ過ぎて写真が上手く撮れないので、写真館は利用せずに家族で撮影しました。
早く帰宅するためでもあります。
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●帰宅
家を出てから帰宅まで、1時間40分でした。
帰宅後も家で少し写真を撮りました。(孫はずっと眠っていました)
④会食は着替えてから
●家から歩いてすぐのレストランを予約しておきました。
●帰宅後楽な洋服に着替えて授乳
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●レストランで会食
お宮参りと会食を家から近い所で行ったので、娘と孫には負担にならず、家族もリラックスして過ごすことができました。
孫がずっと眠ったままで目を閉じた写真しか撮れませんでしたが、それも良い思い出だと思います。
3.お宮参りのママの髪型ときもの
①髪型
シンプルなおだんごヘアに髪飾りをつけただけです。
当日は美容院でセットをする余裕がないので、簡単に済ませました。主役は赤ちゃんなのでそれで十分です。
②一つ紋の色留袖(比翼なし)
裾だけに模様のある一つ紋の色留袖を着用しました。
比翼仕立て*ではないので、上半身だけ見ると一つ紋付きの無地と同じです。
*比翼仕立て……留袖の下に白の着物を重ね着しているように見せるために衿や袖口、裾などに羽二重の白布を縫いつけた仕立て方です。昔は本当に二枚重ねて着ていました。
色留袖に比翼が付いている場合は結婚式や式典などの礼装になるので、昨今のお宮参りには大げさなようです。
この着物と帯はお姑さんが結婚の時にお母様が持たせてくださったものだそうで、一度も着用していなかったものを娘に譲ってくださいました。
裾模様は汕頭(スワトウ)刺繍です。
娘は「絶対この着物を着たい!」ということで、着物でのお宮参りにチャレンジしました。
③主役を引き立てる着物
色留袖と訪問着、2つの大きな違いは、模様の付き方です。
色留袖は上身頃は無地で裾だけに模様があり、訪問着は肩や袖、裾に模様があって華やかな印象になります。
けれども色留袖は一つ紋や三つ紋が付き、比翼仕立てになっていることで訪問着より格上なのです。
△訪問着
△色留袖
写真は横山宗生・赤木南洋・中野香織(2019)『フォーマルウェアの教科書(洋装・和装)』ネコ・パブリッシングより
お宮参りでママが赤ちゃんを抱く場合、祝い着(掛け着)を引き立たせるためには、着物の上身頃の模様は控えめが良いようです。
また、華やかな訪問着を着ても祝い着で隠れてしまうので、裾だけに柄のある比翼なしの色留袖はぴったりの着物だと思いました。
祈祷中はパパのお母様が抱きましたが、あとで娘にも祝い着を掛けて撮影しました。
こちらは27年前の娘のお宮参りです。