今回は、実家で見つかった麻の布から、帯を仕立ててみましたので、皆様にご紹介したいと思います。
1.用途不明?の布
ある日、母の箪笥の奥にしまわれていた麻の布地を取り出しました。頂き物の古い布、母からはどのように使うか話はなく、今まで”何だかわからない布”として長い間放置されていました。
テーブルセンターか手提げ袋などの小物を作ろうか……などと考えながら布地を広げると……。
幅33cm、長さ4m46cmありました。ということは帯にできる長さです。幅は33cm……九寸なので九寸名古屋帯*に仕立てることにしました。
*名古屋帯には「八寸名古屋帯」と「九寸名古屋帯」があります。仕立てる前の生地幅からきた呼び方です。
◇八寸帯:厚手でざっくりした生地のものが多く、裏地はつけずにかがり仕立てにします。博多帯がよく知られています。普段使いに多いですが、綴れ織りの帯はフォーマルに使えます。
◇九寸帯:薄い生地が多く帯幅は約34cmあり、幅の両端を五分ずつ折って芯を入れて仕立てます。つまり両方とも仕立て上がれば八寸(30cm)の帯幅になります。
私は八寸帯のかがりは経験がありますが、九寸の仕立ては初めてです……。ずっと眠っていた生地だから、もし失敗しても仕方がない! と覚悟を決めてやることにしました。幸い生地が厚めの麻なので、帯芯は入れずに済みそうです。
2.帯を仕立てる
①端の房部分をカットする
②お太鼓部分にしるしを付ける
(へらは見にくいので、しるし付けにはシャープペンシルを使いました。)
出来上がりが110cmになるようにたれを中表に折り返して、しるしを付けます。
両端の縫い代は1.5cm、きせ*は2mmです。
*きせ……着るときに縫い目が表から丸見えにならないよう、縫い目に布がかぶるように仕上げる工夫のことです。縫ったあと、縫い代を開かずに縫い目ごと片方に折ります。
「きせ」とは?
分かりやすいように紺地に白の糸で縫ってあります
このように平縫いしたあと……
縫い目の上に2mmの余裕を持たせて縫い代を手前に倒しています。これを「2mmのきせをかける」と言います。
③お太鼓を縫う
本来はお太鼓と胴、両方のしるし付けを先にやるべきですが、長い帯を広げる場所が必要になるので、先にお太鼓を縫ってしまいます。
しるし通りにお太鼓部分を縫っていきます。手縫いなので時々返し縫いをしながら縫いました。
*たれの角になる部分は少しだけ外側に広がるように縫うと、表に返す時にきれいに仕上がります。
縫い終わったらアイロンできせをかけます。
④胴部分のしるし付ける
(写真は胴を縦にしたもの)
中表に半分に折り、二枚がずれないように注意しながら、帯幅+きせ2mmの寸法でしるしを付けます。手先部分のきせは4mmです。
胴は長いのでしるし付けはちょっと面倒でした。
お太鼓と胴の境目は15cmほどあけておきます。
⑤胴部分を縫う
時々返し縫いをしながら縫っていきます。
縫い終わったら、アイロンできせをかけます。
⑥お太鼓部分を表に返す
⑦胴を表に返す
胴は長いので全部返すまでちょっとドキドキします。
返りました!
⑧三角部分の始末
イ.胴の延長は三つ折りにして、しつけをかける
ロ.お太鼓部分の端も折ってしつけで押さえる
ハ.しつけをかけた部分は「くける」*
*くける……縫い目が表に出ない縫い方。針は折り目の中を通り、表をほんの少しすくいながら進みます。
「くける」とは?
このように三つ折りにした布をくけるのを「三つ折りぐけ」といいます。
表から見るとこのように。ふつうは布の色に合わせた糸を使うのでほとんど見えません。
ニ.お太鼓と胴の境目、三角に開く部分はかんぬき止め*で補強
*かんぬき止め……ほころびやすい所に施すほつれ止め。糸を2、3回渡してから糸をかがって留めます。
⑧出来上がりました。
3.感想
芯を入れず、しるしを付けて縫うだけの作業だったので、意外に楽でした。直線縫いなのでミシンを使ってもできると思います。梅雨時に締める帯として重宝しそうです。
このように、しっかりした生地ならば芯を入れない簡単な仕立てが可能であることがわかりました。
参考文献…『上手に縫える 着物の仕立て方』野村辰雄 有紀書房