上布のきもの ~宮古上布~


_MG_2839b

前回に引き続き上布のきものを取り上げます。今回は宮古上布です。

1.宮古上布

①宮古上布とは

沖縄本島の南西約3キロに位置する宮古島で織られている麻織物です。経緯とも手績みの苧麻糸を使い、植物染料で染められます。薄く、ロウ引きしたような光沢が特徴です。

17081102
△宮古上布
手括り(てくくり)で絣を表し、植物染料によって染められています。(『美しいキモノ』ハースト婦人画報社2016・秋号より)

②歴史

伝説によると宮古上布の歴史は四百年前にさかのぼります。

1583年、宮古の洲鎌与人(ユンチュ)の職にあった下地真栄という男の乗った船が転覆しかかったところ、彼は泳ぎが達者で海に飛びこみ船の故障をなおしました。

この功績で琉球国王・尚永王から間切(まぎり)頭役を授かりました。下地真栄の妻稲石(いないし)はこの恩に報いるために、工夫をこらして綾錆布(あやさびふ)という細やかな麻織物を作り、これを尚永王に献上したのが宮古上布のはじまりと言われています。

やがて1610年に人頭税が強化され、宮古上布は琉球王朝へ納める貢納布として生産され、技術も発達しました。

1903年に宮古島にて地租改正が行われ、租税が上布による物納ではなくなると、日本全国向けの商品として生産されるようになりました。大正時代には大島紬の技術や高機等も導入され、この時代に宮古上布は歴代で最高の技術を誇りました。

現在の生産は少量になりましたが、今も苧麻の栽培から糸績み、染め、砧(きぬた)打ちまでの全行程を宮古島で一貫して行っています。

(参考:Wikipedia木村孝監修『染め織りめぐり』JTBキャンブックス『美しいキモノ』ハースト婦人画報社2016・秋号

 

2.宮古上布ができるまで

①苧績み(おうみ)

原料となる苧麻は宮古島で栽培されています。

爪で繊維を何度も裂き、ごく細い糸につむぎ、撚り合わせて行きます。この糸の細さが宮古上布の最大の特徴で、着尺の幅約38cmに経糸を1120本余も通しています。これはほかの上布をはるかに上回る本数だそうです。

17081102b
△宮古島で栽培される苧麻(『美しいキモノ』ハースト婦人画報社2016・秋号より)

②手でくくり、染める

絣模様を付けるために残したい色の部分の上を糸でくくり、植物染料で染めます。紺上布の場合、何度も琉球藍を染め重ねます。

③織る

宮古上布は高機で織ります。苧麻糸は乾燥を嫌うので加湿器を使うなどして慎重に織り上げます。熟練した人でも一日に織れるのはわずか20cmほどだそうです。

17081102c
△高機で織っているところ(前掲書より)

④木槌で打つ

織り上がった布は糊付けし、木槌で打って光沢となめらかさを出します(砧打ちともいいます)。島では仕上げにあたるこの工程を「洗濯」と呼び習わしていますが、2・3キロもある大きな木槌で2万回以上も布を叩くそうです。

この工程によって、麻織物でありながら、まるでロウを引いたような独特の艶が生まれます。

17081102d
△木槌で布を打っているところ(前掲書より)

 

3.重要無形文化財

宮古上布は昭和53年に重要無形文化財に指定されています。その指定要件は以下の通りです。

  1. すべて苧麻を手紡ぎした糸を使用する
  2. 絣模様を付ける場合は、伝統的な手結いによる技法又はてくくりによる
  3. 染織は、純正植物染である
  4. 手織である
  5. 洗濯(仕上げ加工)の場合は、木槌による手打ちを行い、使用する糊は、  天然の材料を用いて調製する

すべてが手作業の宮古上布は、一反を織り上げるのに一年以上かかることもあるそうです。

17081105
△「波丸文様の宮古上布」(『池田重子コレクション 日本のおしゃれ』図録 日本経済新聞社2001年より)

17081103
△木村孝さんの(?)宮古上布

木村孝著『伝えておきたい嗜みごと 美しい着物、美しい人』(淡交社2008年)に掲載された写真。

「八月 麻衣のおしゃれ」の項で、「宮古上布…光と風を通して文様が映える夏衣」と説明されていました。

 

4.宮古上布の着用例

①羅(粗紗)の帯で

_MG_0065

藍色のきものに臙脂系の帯は昭和時代の定番コーディネートですね。(2015.9.5の記事参照

 

_MG_0063

帯は粗紗(あらしゃ)と思われます。羅(ら)に似ていますが、織り方が違うようです*。

*羅織りは、一本の縦糸が左右の縦糸と絡み合いながら織られているものです。一方紗織りは二本の縦糸が交差しながら織られているもので、羅よりも組織が単純です。最近は、目の粗い紗(「粗紗」)も「羅」と呼ぶようになっているため、この項目でも「羅の帯」と表記していますが、母は「紗の帯」と行っていました。

羅も粗紗も隙間が多く盛夏にぴったりのものですが、組織が違うためか、手触りは違います。羅は隙間だらけでもしっかりとして張りがありますが、粗紗はやわらかいので、そこにカジュアル感があります。

 

_MG_0068

べっ甲のブローチを帯留めにしています。

②麻の帯で

_MG_2773

渋いグリーンの麻の帯なので小物はピンク系にしました。

 

_MG_2778

バッグはこぎん刺しです。

 

_MG_2789

鎌倉芳太郎*の型絵染(紅型・朧型染)の帯です。①の粗紗の帯よりもきちんとした感じが出ます。
*鎌倉芳太郎(1898~1983)…型絵染作家。2015.9.132016.11.19の記事参照

 

_MG_2826

渋いですが、繊細な型染めが気に入っています。

 

_MG_2801

宮古上布の生地。ロウを引いたような手触りです。

 

_MG_2793

細かく散りばめた白絣が紺地を引き立てています。

 

_MG_2794

日差しに当たると生地の透け感がよくわかります。

 

_MG_2830

草履は帯の色に合わせて渋めにしてみました。

 

_MG_2839

宮古上布は暑さが厳しい時にも、気持ちを落ち着かせ、軽やかな気持ちにしてくれるきものです。

 

 


この記事に対するコメント

Be the First to Comment!

avatar
wpDiscuz