イベント訪問

紅型(びんがた)染め体験 その1

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先日、紅型染めを初めて体験しました。3回に分けて色付けしたのですが、今日はその前半をご紹介します。

1.紅型とは

沖縄の豊かな自然をそのまま染め物にしたような紅型。今までにも
2015.9.13
2016.2.14
2016.11.19
2017.1.21
2017.3.19

の記事で取り上げていますが、紅型の美しさには私も若い頃から魅了されてきました。

紅型(びんがた)…沖縄を代表する伝統的な染色技法の一つ。14世紀の紅型の裂が現存しており、技術確立の時間を考慮すると、その起源は13世紀頃と推定されている。

「紅」は色全般を指し、「型」は様々な模様を指していると言われる。この定義をしたのは鎌倉芳太郎*と伊波普猷とする説があるが、鎌倉芳太郎が1924年に初めて使用。

「紅型」の漢字表記が広く普及され始めたのは昭和期に入ってから。沖縄県は「びんがた」と平仮名表記する場合が多い。古文書に現れる文字は「形付」、「形附」で「紅型」表記はない。高年者や下級士族向けの藍色の濃淡で染めるものは藍方(えーがた)と呼ぶ。

Wikipedia.org より

*鎌倉芳太郎(1898年~1983年)は琉球紅型研究家であり型絵染作家でした。
詳細はこちら(2016.11.19)をご覧ください。

 

2.紅型作りの工程

紅型の工程はかなり複雑で時間のかかる手作業です。

ここでは地染めをしない白地の紅型の制作工程をご紹介します。

兒玉絵理子(2012)『琉球紅型』青幻舎より、写真と文を引用しています。

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兒玉絵理子(2012)『琉球紅型』青幻舎

①意匠設計・下絵 (デザイン)

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模様や色のバランスを考えながら図案を作成します。

②図案の転写(型紙)

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トレーシングペーパーと渋紙の間にカーボン紙を挟み、渋紙に模様を転写していきます。

③型彫り

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小刀(シーグ)で刃先を上方から突き刺すように渋紙に貫通させながら彫り上げます。

④紗張り

型紙の模様を繋いでいた「吊り」という渋紙の彫り残しを切り落とし、それぞれの模様や型紙の枠を固定する作業です。

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型に合わせて切った絹製の紗を型紙の上にのせて、カシュー液を刷毛で内側から外側に塗ります。
↓ ↓ ↓

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乾いた後、紗の貼っていない側から「吊り」を小刀で切り落として型紙の完成です。

⑤生地の前処理(精錬・湯通し・水引)

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布幅や長さを調節して型置き前の布の状態を整える工程です。

⑥型置き[かたちき]

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型紙を生地の上に置き、ヘラで型糊を置いて行く作業です。素早く均等に糊を置いていくためには熟練の技術が必要だそうです。

⑦豆引き[ごびき]

型置きして乾燥させた生地に、大豆をすりつぶして作った豆汁(ごじる)を刷毛引きします。
顔料や染料のにじみを防ぐための作業です。

⑧色挿し

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筆に顔料を含ませて、生地に摺り込んでいく作業です。

⑨隈取り

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隈取りは紅型の特徴的技法で、 色挿しよりも濃い顔料を用いて刷毛でこすり、ぼかしをいれていく作業です。

隈取りすることで、柄が浮き立ち、立体感がでます。

⑩色止め(蒸しなど)

顔料をより生地の奥まで浸透させる為に蒸し箱に入れて蒸します。

⑪水元

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糊のついた生地を、水に浸してその糊をふやかし、生地と生地がこすれないように、ゆっくりと時間かけて慎重に糊を落としていきます。

⑫仕上げ(湯のし・幅出し)

⑬完成

これらの工程の他にも細かい手作業がたくさんあり、工房などでは、各々に熟練した専門の職人さん(型彫り・型置き・水元など)がやることが多いようです。

 

3.紅型染め体験

友人の伯母様が40年以上趣味で紅型染めをなさっています。今回は友人と一緒に「色挿し」と「隈取り」を教えていただくことになりました。(前述2の⑧と⑨の工程)

 

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伯母様の作品は素晴らしく、趣味の領域を完全に超えています。

 

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この力作は友人のお母様がお召しになっているものです。

 

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友人が大切に着ているものです。

 

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この道中着は仕立てもご自分でなさったそうです。

①型置きされた生地

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紬の白生地に型置き(型紙を用いて生地に糊を置くこと・糊置き)されたものです。先生(伯母様)が用意してくださいました。

先生は「『糊置き八割』といわれるのよ。」とおっしゃいました。それほどこの工程が重要なのだそうです。

つまり私は残りの二割のさらに一部分を体験させていただくわけです。

 

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お手本はこちら。松と藤が印象的なデザインでとても気に入りました。経年により落ち着いた色になっているとのことでした。

 

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△ 友人が挑戦するもの

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お手本です。優しい柄は友人の雰囲気にぴったり。

色挿しも好みの柄だと楽しくできそうです♪
でも…

友人は2度目ですがわたしは初体験。こんな紅型染めが本当にできるのでしょうか?

②顔料を溶く

色付けに使用される顔料はすべて先生が作ってくださいました。

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△顔料

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△洋紅

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豆汁(ごじる・大豆の汁からできた液)で溶きます。

 

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△黄茶(きいちゃ)

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藍は固形です。

 

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溶くとこのようになります。

 

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藍と洋紅を混ぜて紫に

 

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配合によって次々と美しい色が出来上がります。

 

4.色を挿す

糊の置かれていないところに、色を挿していきます。

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△使用する筆

いろいろな太さの手作りの筆です。

①1回目の色挿し

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友人はまず紫から挿しています。

 

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私も同じ紫で藤の花から始めました。糊が置かれているのはベージュの部分。多少はみ出しても大丈夫とのことです。

 

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紫の次は黄茶を挿しました。

 

色付け作業をしている間に、先生は次の色を作って下さっています。

ぬり絵とは違い、生地に対して筆を直角に当ててしっかりと色を挿していかなければなりません。
慣れるまでは色を刷り込むのに力が入ってしまい、結構難しく感じました。

 

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一度に多くの顔料を付けるとムラになってしまうので、小皿のふちで筆をなで、少しずつ色を挿していきます。

小さな部分に色を挿すときは特に注意が必要です。小皿のふちで落とした顔料をさらにタオルに吸わせてから生地にのせます。

 

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面積が広い部分も少しずつしか作業は出来ないので、予想以上に時間がかかりました。

午後4時を過ぎると自然光が取り入れられず色の見極めが難しくなるそうなの
で、作業は次回へ……。

続く――

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