縞御召の羽織で六本木歌舞伎へ


_MG_9285

昔はきものの代表格のように扱われた「御召」のきもの。今日は羽織にリメイクされた「縞御召」をご紹介します。

1.御召とは

御召(おめし)は御召縮緬(おめしちりめん)ともいいます。

先染めの糸を用いた平織りの織物で縮緬の一種です。徳川十一代将軍の徳川家斉が好んだところから「御召」の名があるそうです。

①特徴

織り方から特徴がわかります。

「通常縮緬は縦糸に撚りをかけず、横糸に右撚りと左撚りを交互に用いることで独特のしぼを出すが、御召は縦糸につよい撚りをかけた八丁撚りという糸を用い、横糸にも一般の縮緬よりも撚りのつよい御召緯という糸を使うことによって、縮緬独自のしぼがより大きく、はっきりとあらわれるところに特色がある。また一般の縮緬のように織りあげ後ではなく、糸の状態で精練するために絹のセリシンが除かれ、織りあがりが硬く、コシのある地風となる。」

(Wikipedia.orgより)

つまり御召の特徴は

  • ふつうの縮緬よりもコシがつよい
  • 紬よりしっとりと馴染む
  • しゃり感と独特の風合いがある
  • 皺になりにくい
  • 着崩れしにくい
  • 裾さばきがよい

などが挙げられます。

長所が多い御召は、江戸時代には礼装として用いられることも多かったようです。そして今日でも略礼装として使われています。

②無地御召

_DSC5253

昭和50年代のもの。紋は付いていません。どんな帯や羽織でも合わせやすく着心地がよかったので、若い頃には頻繁に着用しました。

無地御召は紋を付けるとあらたまった席にも着られるようです。

③御召の付下げ

_MG_5138

絵羽模様に見える付下げで華やかです。昭和30年代の母のもの。

④縞御召

_DSC5154

戦前のきものだと思います。昭和30年頃までは、細い縞の縞御召は黒の紋付き羽織と合わせて略礼装になっていました。

 

2.羽織にリメイクされたもの?

今回初めて着た羽織は、義母が生前自分で仕立てておいたものです。

①よく見てみる

_DSC5135

縞御召の羽織です。

 

_DSC5137

しつけが付いたままで、着ていなかったことがわかります。

 

_DSC5141

丸み*の大きな袖。普段着として家で着るつもりだったのでしょう。

*袖の丸み…若い人のきものや浴衣は丸みが大きく、年配になると丸みは小さくします。けれども今ははじめから小さめで、丸みに関してはあまり気にしなくなったようです。

丸みを大きくすると可愛らしくなりますが、角がない方が袖が物に当たらず、動きやすいというメリットもあります。

 

_DSC5139

内袖に接ぎ(はぎ)が入っています。袖にするための十分な布がなかったために施されたものです。

 

_DSC5140
△接ぎ部分の拡大

_DSC5142

裾にも接ぎが入っています。

 

_DSC5143
△接ぎ部分の拡大

見た目は生地もしっかりしていて汚れもない羽織なのですが、実は傷みがあったのか何かの事情で布が足りなかったのか、かなり苦労して繰り回しすることで仕立てられたものであることがわかりました。

②思い出のきもの?

手間のかかる接ぎをしてまで羽織として残したのには、何か理由があったのでしょうか。

若い頃の大切なきものだったのか、母親が着ていた懐かしいものだったのか、今となっては知るよしもありませんが、羽織に込められた深い思いが感じられ、私はぜひ着てみよう!と思いました。

 

3.着てみる

①コーディネイト

「縞の羽織」を着ている人を身近に見たことがないので、はじめはどのようなきものに合わせたらよいのかわかりませんでした。

そこで、次のような基準で取り合わせを考えました。

  • 思いを込めてリメイクしたのに未使用だった御召の羽織。そのデビューとなるので、下に着るのは紬ではなく少しよそゆきの染めのきものに
  • 縞の羽織は濃い色の印象を与えるので、きものは明るい色に
  • 帯は羽織にしっくり馴染むものを

そして着てみました。

②染めの小紋に着用

_MG_9272

_MG_9275

羽織丈は短めです。

 

_MG_9287

羽織紐は薄いピンク色。白っぽい方がよそゆき風になるかと思いました。

 

_MG_9307

羽織の下のきものは、紅がかった紫色の飛び柄小紋です。

 

_MG_9312

羽織でほとんど隠れてしまいますが、帯は明治中期生まれの人から受け継いだ羽二重に刺繍の帯です。元は「引き抜き帯」だったのを作り帯に直して着用しています。(詳細は2015年4月19日・5月2日の記事を御覧ください)

 

_MG_9315

長い時代を経てきたこの帯と縞御召は、馴染みやすいように思いました。

 

_MG_9322

草履の鼻緒も縞が合うようです。

 

4.「六本木歌舞伎『座頭市』」へ

染めのきものに縞御召の羽織を着て、「六本木歌舞伎『座頭市』」を見に行きました。江戸時代(天保年間)が舞台の座頭市に縞のお召が合うような気がしたのです。

 

_DSC5202

場所は東京・EX THEATER ROPPONGIです。

 

_DSC5204

ライブ会場として使用されることが多いEXシアターですが、旗を立てて芝居小屋のような雰囲気を演出しています。

 

_DSC5207
△ 会場内で

女優・寺島しのぶが歌舞伎役者顔負けの早変わりを見せたり、花魁道中を披露したりと大活躍。海老蔵との息もぴったりで、大変楽しい芝居でした。

歌舞伎の要素満載の芝居を寺島しのぶがとても自然に、そして楽しみながら演じている様子に感心しました。

 

_DSC5221

この日は高校時代の恩師と二人で鑑賞しました。

 

_DSC5212

偶然ですが、先生も御召のきものに黒の羽二重の帯でした。

 

_DSC5217

グレーに見えるきものですが、実は細い縞です。先生も芝居をイメージして、きものと帯を選んだとおっしゃっていました。

 

5.紬のきものに着てみる

_MG_9442

_MG_9446

友人とのランチに出かけるので、紬のきものに合わせてみました。

 

_MG_9444

羽織紐も変えました。先が薄紫になっています。紐と羽織が同系色だと、茶羽織*のような普段着に見えてしまうと思い、白っぽい物をえらんでいます。

*茶羽織…普通の羽織と違い、脇の襠(マチ)が無いもの。丈は腰くらいの短めで、袖も短く羽織紐は使わず、衿に縫い付けられた共布の紐を結んで着用します。丈が短くて正座しても皺にならないことなどから、家庭で羽織るもので外出には不向きとされています。

縞御召の羽織は取り合わせが難しいかと思いましたが、柔らかいものでも紬でも、柄が多くなければ合わせやすいようです。

昔にタイムスリップした気分で、縞の羽織の装いを楽しむことができました。


この記事に対するコメント

Be the First to Comment!

avatar
wpDiscuz