刺し子の帯

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今日は木綿の刺し子の帯を紹介します。

1.刺し子とは

綿布を重ね合わせ、一面に細かく刺し縫いにすること。またはそのようにして縫われたものをいいます。
保温と補強のために刺したのが始まりとされています。

 

2.残された帯地

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これは今から30年ほど前、趣味で刺し子をしている方から頂いた帯地です。以前ご紹介したことがある「絽刺し」刺繍もしていた方の作品です。(2014年11月29日の記事)

 

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▲ 絽刺しのセカンドバッグ

しかし、この刺し子の帯地は帯になれないまま時が経ち、作った人も、もらった母も遠く旅立ってしまいました。

今年になって初めて反物をひろげて見てみると、端から端まで隙間なく刺し子が施されていました。つまり全通(ぜんつう)*の帯地です。

*全通…帯の柄付けの種類。最初から最後まで帯全体に柄があるものをさします。

刺し子の柄をよく見てみましょう……。

 

3.さまざまな刺し子

刺し子には伝統的な模様だけでも40種類ほどあり、それぞれ名前が付けられています。調べてみると、この帯地にも約10種類の模様がありました。

①七宝つなぎ

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裏側
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②麻の葉

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裏側
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③紗綾形(さやがた)

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裏側
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④毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)

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裏側
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⑤柿の花

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裏側
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⑥籠目(かごめ)

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裏側
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⑦枡刺し(ますざし)

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裏側
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⑧紗綾形

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裏側
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⑨枡刺し(?)

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裏側
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⑩紗綾形

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裏側
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⑪花刺し

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裏側
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⑫紗綾形

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裏側
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⑬段つなぎ

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裏側
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裏側を見ると刺し子の大変さがさらに伝わってきますね。このように4m近くの帯地に一針一針刺した人の気持ちを考えると、もうこのまま放置しておくことなどできません。

帯を仕立てることにしました。

 

4.刺し子の作り帯

名古屋帯にすると隠れる部分が多くなり、せっかくの刺し子がもったいないので、二部式の作り帯にしました。二部式の帯にすると胴の巻き方を変えたりお太鼓の位置をずらせるので、さまざまな模様を表に出せるようになります。

以前名古屋帯を何本か「作り帯」にリメイクしたり、名古屋帯を仕立てたので、その時と同じように作りました。

過去の記事:
2015年5月16日
2015年6月28日

ただし、今回は薄い木綿地なので芯を入れて作りました。また、黒に染められた生地なので、湯通し*もしました。

*湯通し…生地を水に通すことで糊と余分な染料等を落とす作業のこと。生地の風合いがよくなり、生地の歪みやカビの防止にもなります。

出来上がりはこれです。

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5.柄を楽しむ

お太鼓部分

この帯は柄に上下がないので、二部式になると次のように柄を出すことができます。

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[胴・前の部分]

前の柄は次のように柄を出すことができます。

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6.きものに合わせてみる

木綿のきものに合わせてみました。

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茜絞りのきものに

 

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紫根絞りのきものに

 

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鰹縞(かつおじま)*の久留米絣に
*鰹縞……カツオの体の色が背から腹にかけてだんだん薄くなるように濃い色から薄い色に変化する縞織りのこと

 

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長い年月眠らせてしまった刺し子の帯ですが、これからはいろいろなきものと合わせていこうと思います。

 

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