明治女性の形見の「引き抜き帯」


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今日は引き抜き帯のお話です。

 

1.明治女性形見の帯

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前回ご紹介した塩瀬の帯です。昭和57年頃、母が稽古事の先生亡き後に形見として頂いた帯でした。この帯についてわかっていることを挙げてみます。

①所有者は明治26年生まれ 昭和56年88歳で死去
東京に住んでいましたが、出身地は不明です。

②黒地の塩瀬羽二重の袋帯
大正~昭和初期の物と思われます。

③両面使用(リバーシブル)の*腹合わせ帯
羽二重の生地なので「ふくさ帯」ともいうようです。

*腹合わせ帯…表裏の帯地を二枚あわせにして仕立てられたもの。
明るい色と暗い色の組み合わせは「昼夜帯」といわれます。

春の柄と秋の柄を季節で使い分けるようになっています。

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▲ 春の柄

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▲秋の柄

お太鼓の完成形はこうなります。

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④お太鼓の柄とたれの柄が上下逆になっており、更に季節が違う

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つまり……

⑤引き抜き帯である

ということです。引き抜き帯については、次に説明します。

 

2.引き抜き帯とは

江戸~大正時代に一般的に使用された丸帯の結び方からつけられた俗称。帯を結ぶ時、たれの端まで抜いてひと結びするのではなく、たれ部分が残るように「太鼓になる部分だけを引き抜く」という意味から名付けられたようです。

続いて、引き抜き帯の結び方をご紹介します。

 

3.引き抜き帯の結び方(写真と絵による説明)

もう一度この帯の柄のつき方を見てみましょう。

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これを図にすると
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こうなります(絵1)。

[結び方]

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■ 絵2-A
ピンク地春の柄が表で左下に下がっているのが手です。春柄のたれが見えるよう、太鼓がちょうどよい長さになるまで引いていきます。(結び目は緩まぬように締めておく)

■ 絵2-B
太鼓になる部分を下ろして長さを決めたら内側に折ります。このあとは普通の太鼓結びと同じように帯揚げをかけた帯枕を入れ、たれを太鼓の中に通して帯締めを結びます。

ただし……普通の太鼓結びのようにすべてを後ろで行うのは難しいと思われます。 たれの長さを決めて太鼓部分を下ろすまでは体の前で結び、その後うしろに回して帯枕と帯揚げをかけた方が良いと思います。

 

 

4.どのように使用すればよいか?

ご紹介した塩瀬の袋帯は柔らかいながらずっしりと重く、刺繍も傷んでいる部分があるので、これ以上引いたり結んだりして帯に負担をかけるのはやめた方が良いと判断しました。そこで二部式の作り帯(付け帯)にすることにしました。

次回にご紹介します。

 

5.おまけ

「引き抜き帯の結び方」が絵と説明では分かりにくかったと思います。

Suicaペンギンをモデルに帯結びをやってみました♪♪

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左から
*Suicaペンギンペットボトルケース
*帯のかわり…羽二重伊達衿
*帯揚げ…髪用リボン*帯締め…紐

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帯を胴に二巻きして

 

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太鼓になる部分を引き出していきます。

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ちょうどよいたれの長さになったらもう一度結び目をキュッと締めます。たれは帯の裏側、白地になります。

 

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今回は後ろで結ぶので、先に帯揚げを掛けます。

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太鼓部分を下ろして内側に折ります。

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帯揚げと帯締めをして

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完成です。


この記事に対するコメント

4 Comments on "明治女性の形見の「引き抜き帯」"

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みやこどり

引き抜き帯、面白い作りなのですね。今の普通のお太鼓を結ぶ感覚からは思い付かない構造ですが、わずかに数十年まえの女性たちは普通に結べていたのだろうと思うと、伝統的といわれる和服に関わることも、革新が続いているのだなと感じます。
それにしても、細かい柄の凝った刺繍。素敵な帯ですね。コーディネートの写真を沢山拝見したいです。

梓弓

形見の帯をSuicaペンギンが締める図は、何ともユーモラスで分かりやすいと、
感心しました。
motochiyoriさんの工夫に拍手を送ります。

それにしても、まさに芸術品とも言うべき帯ですね!

勿論、私は普通の帯をどのように結ぶのかも良く知りませんでしたが、
この帯は見せる部分(お太鼓というのかな)を作るのに、
その部分を引き抜いて見せるということなんでしょうね。
ふと、ネクタイを結ぶときに剣先の位置や結び目の部分を調整するときの感覚に、
少し似ているのかなと感じました。

そして、motochiyoriさんが、引き抜き帯の持ち主の方のことを思い出されたというのが、印象深かったです。
何かの拍子に遠い昔のことを思い出す、
人間の記憶と言うのは不思議なものですね。