絞りのきもの 扱い方と魅力を考える


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たとう紙交換で見つかったカビは落とすことができました。(前回の記事

今日はコーデイネートや扱い方、魅力について考えます。

1.手入れ後のきものをコーディネート

①着たいという気持ち

前回ご紹介した絞りの小紋が、丸洗いから戻ってきたのは5月下旬でした。

 

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カビも取れてさっぱりきれいになり、以前よりふんわりしています。

古いきものでも手入れによってきれいになると、また着たい!という気持ちが湧いてきます。

でもすでに単衣の季節になってしまいました。このまま箪笥に収めてしまうと、着たい気持ちが薄れてしまいそうです。

そこで、今のうちにコーデイネートを考えておくことにしました。

②以前の取り合わせ

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黒地の印象が強すぎる気がして、羽織を着ました。帯は龍村「鴛鴦唐草文錦(おしどりからくさもんにしき)」の袋帯です。(着用は12月)

 

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貝の刺繍の縮緬帯を締めています。(着用は2月)(この帯については2016.2.273.13の記事で取り上げています)

この小紋は白い絞りが全体に施されてはいますが、上から下まで黒なので、着ていると落ち着いてしまい、晴れやかな気分にはなりません。

そこで今回は少し華やかな装いにしてみたいと思いました。

③トルソーで試す

きもののコーデイネートをする時、大抵は畳んだ状態のきものに帯、帯揚、帯締をのせて見ています。けれども、着用するとどんな風に見えるかはわからないので、着てから慌てて直すこともあります。

その点、トルソーに着せてみると客観的に見ることができて安心します。

 

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頻繁に使用しないので普段はスカーフやジャケット掛けになっているトルソーですが、たまに取り出してきものを着付けるのは楽しいものです。

 

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もう何年も締めていない若い頃の織の名古屋帯を合わせてみました。

 

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黄色地の帯だけが浮かないように、帯締は紫で抑えました。

 

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しばらく日の目を見なかった帯が役に立ちそうです。この取り合わせは、帯にとっても良い虫干しの機会だと思いました。

秋になったら着るつもりです。

 

2.絞りのきものについてよく聞く話

絞りのきものは豪華で美しい、と一般的に言われていますが、扱い方などにおいてマイナスイメージもあるようです。

いろいろな人から聞いた意見をまとめてみました。

①長持ちしない?

水につけて行う洗い張りができないので汚したら終わりでは? 長く着られないし、そもそも長持ちもしないのでは?

②絞りが伸びる?

長年着用すると絞りが伸びてきてしまう

③収納が大変?

箪笥にしまう時は一番上にしないと絞りが潰れるらしいが、実際そこまで気を使えない

④総絞りでも格が低い?

高価なのに格は低いと聞いた。正式な場に着られないのはコスパが悪過ぎでは?

⑤太って見える?

親からもらったが、絞りは厚みが出てしまい、太って見えるので着たくない

このような考えは、「絞りのきものは贅沢品というだけで、あまり価値を見いだせない」ということになります。

本当なのでしょうか。

 

3.専門家に聞いてみる

きものお手入れサロン友禅工房」と、着物クリーニング専門店「ふじぜん」、そしていつも頼んでいる悉皆屋さんに聞いてみました。

①「長持ちしない」について

水を使わずにきれいにする方法はあります。仕立直しも可能です。

長持ちしないことはなく、古いものでも着続けられます。そもそも絞りを施すために、上質のしっかりした生地が選ばれています。また、染料もそれに見合ったものを使用するので、その点では、絞りはかえって長持ちします。

②「絞りが伸びる」について

裏打ち*がされていれば、絞りが伸びてしまうことはほとんどありません。裏打ちなしの仕立てだと、伸びる可能性はあります。

*裏打ち…絞りの生地の裏側に薄い絹地を糸で留める加工のことで、生地が丈夫になり、絞りが縮んだり伸びたりするのを防ぎます。

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△裏打ちされた絞り

若い頃から着ていた小紋の袖丈を詰めた時に出た余り布です。裏にごく薄い布が付けられています。

③「収納が大変」について

「たとう紙に入れておけば箪笥の一番上でなくても大丈夫。ただしあまりたくさん重ねないことが大切です。」

……これは「きものお手入れサロン友禅工房」と、着物クリーニング専門店「ふじぜん」からのアドバイスです。

悉皆屋さんは、「そのきものが自分にとって大切であるなら、絞りにかかわらず、一番上に置いてほしい」と言っていました。そうすれば手に取りやすく、チェックもしやすいからだそうです。

絞りだからといって、殊更収納に気を使うことはないようです。

 

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大切なきものは丁寧にしまって定期的にチェックしましょう!

④総絞りでも格が低いについて

訪問着の絵羽文様になっていて、金銀の刺繍がほどこされたものなどは略礼装になりますが、それ以外は正式な場には向かないと考えられています。

ただし、上質の疋田総絞りの無地は、紋付きの色無地と同格とみなされることもあるようです。

いずれにしても、絞りのきものは華やかさと品格を兼ね備えているので、ちょっとしたパーティーや集まりなどにはかえって着る機会は多いはずです。

絞りの振り袖は礼装です。

⑤「太って見える」について

確かに、裏打ちをしている分生地に厚みがあるので全体的にふっくらします。

しかし、絞りの圧倒的な印象が体型をカバーする、という見方もできます。

着こなし方次第で体型はそれほど気にしなくて良いと思われます。

 

4.絞りのきものの魅力

私が思う絞りの魅力は次の三つです。

①長持ちする

昭和時代、私が若い頃は絞りのきものが流行していて市場にもたくさん出回っていたように思います。

絞りのきものは手入れがしにくいなどということは十代の頃は知らなかったので、他のきものと同じ感覚で着ていました。

その頃の小紋のきものは、今でも問題なく(ちょっと派手ということ以外は)着ることができています。(2016.4.24の記事参照)

かなりしっかりした生地だからか、くたびれた感じもなく、いつまでも新品に近い状態です。

 

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厳密に言えば出来上がりの時よりは絞りが潰れたり色があせたりしているのかもしれませんが、ほとんどわかりません。(絞りは退色が目立たないようです)

 

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これは娘に絞りの振り袖を着せている時の写真です。40年近く前のもので、私は少なくとも10回は着用しています。

長時間の正座をしたこともずいぶんありましたが、裏打ちされているので、絞りが伸びているようには見えません。

絞りのきものは、シーズン的に長く着るものでないことや、華やかなおしゃれ着なので、紬のように頻繁には着用しません。ですから、結果として長い年月着ることができるものだと思います。

②着心地が良い

きもの好きならよく分かると思いますが、きものにはそれぞれの着心地があります。おもに手触りや体への馴染み方、軽さ、暖かさ、涼しさ、たれ方、張りなどの違いで、それがきものの個性にもなっています。

絞りのきものの特徴はなんといってもふんわりとした柔らかさです。裏打ちの薄い羽二重と表生地の間に空気を含んで体を包むので、暖かく、しっとりと落ち着いた気分になります。

ポツポツした絞りの手触りを着ている間中楽しむことができるのも魅力です。

また、絞りは滑り止め効果があるのか、着崩れが少ないように思います。

③優しい印象を与える

絞りのふんわりした風合いは、着ている人を優しい雰囲気に見せてくれます。

最近では、卓球の福原愛さんの結婚会見での振り袖姿が素敵でしたね。


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